スタメン
札幌は欠場していた宮澤が先発復帰。同じく欠場していた近藤がメンバー復帰。
名古屋は前節で負傷した山岸と、脳震盪の疑いがあったハチャンレが欠場。連戦もあって半数近くを入れ替え。
流れ
立ち上がりから札幌が保持する流れ。ボランチを最終ラインに下ろしながらプレスがハマらないように調整し、SB位置の選手につけて相手シャドーを下げさせて保持ラインの押し上げを図る。
名古屋は5-4-1セット。最前線がパトリックということもあり、あまり前から強くプレスを掛けることはない。シャドーがSB位置の選手を監視し、ついていく。
名古屋のビルドアップは三國の右上げ。ボールを持つことにこだわらない上、前から奪いにいくような強度でプレスを掛けるわけでもないので、プレーエリアは必然的に下がる。ただ、ゴール前の人数は多いので、簡単には崩れない。
シャドーが下がってサイドの枚数を確保するため、札幌はサイドに送っても崩しが難しい。宮澤がブロックの外から狭い背後のスペースを狙って中央突破を図る。
椎橋が最終ラインに下りて、稲垣がライン間に残る役割分担。後ろの枚数を増やしながら前進しようとしているが、1stラインを突破することにかなり苦戦している。
トランジションで背後のスペースを狙う鈴木。
札幌は5-4-1セットでシステムがかみ合うので、そのまま当てはめてプレスを掛けに行く。
森島が下りてマーカーを引きつけ、倍井が逆サイドまで出張してスペースを突きにいく。
名古屋は右でもって、3バックの脇のスペースを突くような攻撃が多いか。
23分、岡村の縦パスから小林、鈴木、浅野の3人の関係性で抜け出し、浅野が山中を外してシュートも枠外。最初のチャンス。
25分、荒野に警告。
大きなサイドチェンジを連続させてじわじわとエリアを押し上げる札幌。
29分、札幌先制、1-0。サイドチェンジからシンプルにクロスを入れ、はね返しを回収して二次攻撃に持ち込むと、右サイドのコンビネーションで崩して最後は馬場がゲット。名古屋は人数はいたが、目線をずらされて3人目の動きに対応できず。
30分、名古屋交代
パトリック→永井
パトリックは特に異常が見られず、戦術的な交代か。保持も非保持も押し上げられず、自陣で過ごす時間が長くなっていたことで、前向きのエネルギーを入れられる永井を投入か。ラインが低くても失点しなければOKくらいの割り切ったプランなのかと思ったが、まったく狙いがハマっていなかった模様。
永井が入ったことでボールホルダーへ強くいくようになり、シャドーも連動してしっかりプレスを掛けていく。
降りる宮澤にシャドーが出ていくため、外で馬場が空き、そこへ届けようとする札幌。
36分、吉田に警告。鈴木が吉田を背負いながらトランジションで起点になる。
森島と和泉のところを軸に、名古屋も徐々にパス回しのリズムが出てきた。
逆まで出ていくボランチやシャドーにまではついていかない札幌。名古屋は横移動と押し引きのポジション調整をしていく。
ミドルゾーンだと下りるボランチ、降りるシャドーへのマークはそんなにこない札幌。名古屋はハーフウェイラインくらいまでは困らずに運べる。
立ち上がりから札幌の保持と名古屋の非保持という構図が続く。名古屋はパトリックが最前線にいることもあり、前からの圧力はそこまで掛けず、撤退してスペースを埋めるほうが優先。保持でも1stラインを越えることに苦戦し、必然的にプレーエリアは下がる。ただ、エリア内の人数は多いため、簡単に崩されない。札幌はボールを持ちながらもクリティカルな位置にはなかなか入れず、宮澤や小林のパスで中央突破を図る。ボールを持っているうちにサイドチェンジを積極的に使って目線を振っていくように。その流れからPA内右を崩して札幌が先制。名古屋はさすがにエリアが低すぎるということでパトリック→永井の交代を前半のうちに決断。永井が入ったことで前からのチェイシングや、スペースランでの深さ取りなど、陣地を押し上げられるようになった。札幌も相手が前からプレスを掛けてくるのであれば、ピン止めを使いながら、浮きどころを狙っていった。
後半
中村でWBを引きつけ、全体を横にスライドする名古屋はCBが菅につき、その背後へ駒井が出ていく3人の連動。深さを取りにいくが、そこには稲垣がしっかりついていく。
52分、インサイドで受けた永井のスルーパスに外から内に抜けた和泉が反応してPA内へ進入。追いかけてきた菅が意図せず倒してしまい、名古屋がPK獲得。全体的にポジション移動しながら札幌のマークを外しにかかっていた名古屋の攻撃が実を結ぶ。
55分、名古屋同点、1-1。森島のPKはコースが甘く、菅野が止めたものの、こぼれ球を森島が頭でプッシュしてゲット。
57分、札幌交代
中村、菅→髙尾、近藤
髙尾が右CBに入り、馬場が左へ移る。
名古屋は河面のところで詰まって無理なパスを出すか前に捨てるかのどちらかになっていることが多い。
62分、名古屋交代
山中、倍井→久保、酒井
久保が右WBに入り、和泉が左WBに移る。
右からの斜めのクサビを鈴木が受けて落とし、前向きを作ってスピードアップを図る札幌。
縦向きで寄せてくる名古屋に対し、近藤が内に運んでからの矢印折りで前に運び出していく。
68分、札幌交代
小林→長谷川
名古屋はそこまでカウンターの色気を残さず、前線3枚も比較的低い位置で守備に参加させる。
73分、札幌交代
宮澤、田中克
名古屋は永井と酒井が少し前残り気味の5-3-2セットっぽくした?流れの中で残っているだけだった模様。1トップのみ、5-4ブロックの外にいる感じだが、オーガナイズ自体は変わらず。
名古屋はなかなかボールを奪いにいけず、札幌ボールが続く。また、トランジションでボールを持ててもカウンタープレスを受けて自陣から抜け出せない。
札幌はサイドでの仕掛けや、ブロック外からの浮き球の配球でゴール前に送って行く。
80分、名古屋交代
和泉、椎橋→内田、米本
札幌はマンツーマンのタイトさを上げて一気にペースをつかみにいく。名古屋に自分たちの時間を与えない。
89分、名古屋逆転、1-2。パスカットしたボールをダイレクトで背後へ送り、永井がスペースへ抜け出すとループで菅野の頭を越してゲット。札幌がイケイケになっていたが、逆にそのぶん背後のスペース管理が甘くなり、岡村が永井とのスピード勝負に持ち込まれて間に合わず。逆に名古屋は苦しい時間が続いていた中、一撃で仕留めた。
名古屋がポジションチェンジでの連係で打開を図る中、永井と和泉のコンビネーションでPKを取って同点に。その後はこう着状態が続くも徐々に札幌がペースを握って敵陣へ押し込み、攻撃を続ける展開に。70分を過ぎると札幌がサイド攻撃と中央からの浮き球でゴール前へ送り込み、ロスト後もカウンタープレスで名古屋に時間を与えない。ずっと攻め込み続ける札幌だが、名古屋も3バックをゴール前から外さずしっかりとはね返す。押し返せない名古屋だったが、札幌が前がかりになったところを一撃で裏返し、永井が落ち着いて決めて逆転。最後も札幌が攻勢を強めてゴールを目指したがネットは揺らせず。名古屋は前半の入りで重心がかなり低くなり、先制を許したところ、そして後半途中から押し込まれ続け、防戦一方になるなど、決して内容としては良くなかったと思うが、その中で少ないチャンスを生かして勝ちに持っていけたことは非常に大きいはず。札幌はチームとしても個人としてもリスク管理が甘かったのは否めないが、それにしてもこの内容で勝点を1も取れなかったのはダメージが大きい。
個人的MOM
★永井 謙佑
途中出場でチームのバランスを整えた。PK奪取につながるスルーパスと決勝点を挙げ、数字も数字以外も文句なし。
トピックス
試合後の監督コメントによると、PKキッカーは森島の予定ではなかったが、ピッチの中で選手が決めたんじゃないか、とのこと。
監督コメント
(※Jリーグ公式サイトから引用)
[ ペトロヴィッチ監督 ]
私の32年の監督キャリアの中で一番残念でガッカリした敗戦だと言っていいと思います。選手たちは立ち上がりから素晴らしいプレーを見せてくれていたと思います。球際なども含めて相手を圧倒してくれましたし、先にリードも得ました。後半も良いプレーをしていましたが、PKから失点。その後もゲームを支配して攻撃を重ねてくれましたが、原因を突き止めることが難しい失点をしてしまいました。再び勝点ゼロで終わってしまったのは残念。ただし、強度の高い試合を90分戦うのは、われわれのチームにとっては難しいものがあるのですが、その中で選手は本来の自分たちのゲームをしてくれた。次に向かっていける戦いをしてくれたと思っています。
[ 長谷川 健太監督 ]
勝てて良かったです。前半は非常に苦しい立ち上がりで、札幌が非常に攻勢をかけてきてそれを押し返せなかった。それで永井(謙佑)を早い段階で入れて、失点はしましたが、彼を入れてから攻撃のリズムが非常に良くなったと思います。それが同点につながり、終盤は永井の個の力を生かすしかないのかな、ということで張り気味の位置を取らせ、そこでタイミングよく決めてくれたと思います。--永井選手の投入のタイミングについて。
永井を使わないと札幌の波状攻撃を収めることはできないかなと思い、使いました。--永井選手への具体的な指示は?
相手も勝つために前に出てくるでしょうから、それを利用しながらという形で。もうそれしか手がなかったので、本当によく仕事をしてくれたと思います。--PKを得た場面も良い攻撃の形だった。
前半の途中からは何度か良い形が出せていました。ハーフタイムにもポイントとなる部分を映像で見せて、選手も理解をして(後半に)入っていたと思います。