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【FC東京】J1第5節 vs名古屋グランパス ~ミラーゲームに至った経緯から考える現在地~

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3/18 名古屋戦 MATCH REVIEW & INTERVIEW | F.C.TOKYO FANZONE | FC東京

※監督・選手コメント参照元

 

なぜミラーゲームにしたのか?

この試合のトピックは、なんといっても3バックのシステムを採用し、名古屋に対してミラーゲームの展開に持ち込んだことだろう。

全体の流れとしては、前半は互いにシュートシーンをほとんど作れずに終わり、後半は名古屋が何度かカウンターで惜しいチャンスを作りながらも決め切れず、スコアレスドロー。東京にも少なからずチャンスはあったとはいえ、0-0、もしくはどちらかが1点を取って1-0くらいが妥当と言える内容だったと感じる。

この試合ではわざわざ形を変えてまでミラーゲームにしたことでマッチアップがはっきりし、お互いにマーク対象が明確になるため、プレスは掛けやすくなる。逆にいえば、ベースポジションから形を変えなければビルドアップは難しくなる。森重のところで列を上げるサポートをしてみたり、塚川が下りて組み立てに参加したりと、各所で工夫があったとはいえ、この試合におけるビルドアップの重要性は低く、積み上げの要素は少なかったのではないかと考えられる。

 

そもそもなぜ3バックで臨んだのか、という点については、アルベル監督が以下のようにコメントしている。

我々は複数のケガ人を抱えており、また松木選手も代表に呼ばれていて不在で、特に不在の選手が中盤のポジションに重なったこともあり、難しい状況にいました。

名古屋が狙ってくるプレー、特徴、そして我々が抱えている状況を踏まえ、今いる選手の特長を踏まえて、今日のような形で戦うことを決断しました。彼らのサイドのセンターバックが前に出てきた際の背後のスペースが我々の狙いでした。それに加えて、名古屋の二人のウイングバックも飛び出してくるということも、我々は警戒して戦っていました。そうした様々な要素を踏まえた上で試合をして、拮抗した試合展開でした。

(中略)

起用したシステムに関しては、プレシーズンですでにトレーニングしていました。ミッドフィルダーに不在の選手が多いので、システム変更が必要な試合でした。松木選手、安部選手、渡邊選手だけではなく、寺山選手も違和感を抱えてこの試合でプレーできなかったことは、我々にとって大きな影響がありました。

 (中略)

我々は、守備を堅めてきたチームに対して、ウイングを生かしてサイド攻撃をしたかったのですが、そこに連係してくれるミッドフィルダーが必要なのは確かです。そのミッドフィルダーが複数人不在のなか、守備をより重視することを優先しました。

そして今日の試合展開について、もともとチャンスの少ない試合になると想定しており、少ないチャンスを生かしたチームが勝つと思っていました。その通りの試合になったと思います。7、8人で守備を堅めるチームを崩すのは難しいです。ミッドフィルダーが少なかったがゆえに、我々が持っている危険なウイングの選手をそのポジション起用できなかったのは残念です。サイド攻撃を活かそうと別の形で配置したら、ポゼッション率は高まったかもしれませんが、負けていたかもしれません。中盤で攻撃を構築するミッドフィルダーが不在の中で、自分たちが期待した攻撃を構築できたかというと、それはできていなかったと思います。

まとめると、

①MFに離脱者(安部、渡邊、松木、寺山、青木など)が出ており、頭数が足りなかった

②名古屋のカウンターやWBの攻撃参加に対応するためには後ろのレーンをしっかりと埋めたほうがいい(&相手CBが出て空けたスペースを3トップで突きたい)と判断した

この2点が主な理由とのこと。

そして、「3バックでプレーするのは難しかったですが練習はしてきました。1週間という短い期間でしたが練習をしてきたなかで、実際に試合でやってみたところで難しさもありました」という木本のコメントを見る限り、名古屋戦に向けては早々に3バックで行く準備をしていたようだ。

 

まず①について考えると、実際にベンチには中央でプレーするタイプのMFはおらず、ボランチでプレーした2人はフル出場している。いつもの4-1-2-3のシステムで臨めば、東-小泉-塚川のセットの替えが利かなくなってしまう。開幕から、IHを入れ替えながら中盤の強度を落とさずに切り替えで上回ろうとしていた戦い方を踏まえれば、サブにMFの交代選手を置けないことが痛いのは間違いない。形を継続する方向性で考えるのであれば、ユース所属の佐藤龍之介を呼んでくるくらいしか案はなかったように感じる。

次に②は、名古屋の攻撃を抑える上では理にかなっていると思う。1対1になるリスクは当然あるものの、スピードと推進力がある相手3トップに対して、スペースやギャップを作らないことは有効な手段。前半に一度、後半に二度ほどゴールへ迫られたシーンがあったとはいえ、バランスを保っていた状況ではおおよそ対応できていた。マテウスや森下のシュートが決まっていたら…、というたらればはあれど、このアプローチも一定の機能は果たしていたと言っていい。

 

以上のことを踏まえると、現在の状況におけるベターな手段をとって、最低限の結果を手にしたと言える。ただ、モヤモヤが残るのは、「この戦い方を“しなければならなかった”のか?」という点だ。

上記で示したコメント内でアルベルは「サイド攻撃を活かそうと別の形で配置したら、ポゼッション率は高まったかもしれませんが、負けていたかもしれません」、「守備をより重視することを優先しました」と話している。これを読む限りでは、名古屋戦のメンバーでいつもの戦いをしたら負ける確率が高まると感じていたということだ。たとえサブが薄くても、いつもの戦いをしたほうがいいと思えば、特に3バックにせずとも良かったはず。仮に中盤でアクシデントが出たなら、そのときに3バックに変える判断をすればいい。それくらいアルベルはいまの出来に手ごたえを感じておらず、勝点獲得に重きを置きたくなる状態なのではないか。

 

勝点の上積み>内容の積み上げ?

アルベル体制初年度の昨季は、徐々にグラデーションをつける必要があるという意味でも、序盤に勝点を取ることの重要性は高かった。しかし、アルベル体制2年目、そして一時的な降格枠の減少(2.5→1)と、今季はチャレンジ方向に踏み切れる理由が増えている。

その中で、昨季終盤あたりからいくらかは進歩が見られたビルドアップのチャレンジは経験値がリセットされたかのようになくなり、「ボールを愛する」という言葉だけが先行して、中盤の強度での勝負をメインにする戦いが目立つ。そして選手の頭数が足りなければ現実的に勝点を取るサッカーに移行しなければならなくなっている状況を見ると、「今季もまだ土台作りの年なのか?」と勘繰ってしまう。

 

今季のここまでの戦いを見ると、昨季と似たようなレールの上を走っているような感覚がある。

「チャレンジのステップに入るには時期尚早」と監督が考え、序盤での勝点獲得を優先しているのか、それともチャレンジを始めようとしている監督の要求に選手が応えられていないのか。開幕からの4試合と、名古屋戦の選択を見る限りは前者に感じてしまうが、どのタイミングから一歩目を“踏み出し直す”ことになるだろうか。