2022 J1リーグ第33節 湘南ベルマーレvsサガン鳥栖 メモ
スタメン
湘南
大岩が負傷明けで7月2日以来のメンバー入り。
前節欠場の石原と町野が先発復帰。
岡本が3試合ぶりのメンバー入り。
古林、大橋、大野、畑がメンバー外に。
池田が2試合連続の欠場。
小泉が負傷明けで3試合ぶりの先発復帰。
ジエゴ、原田、菊地、福井がメンバー外に。
小野が7月16日以来の先発。
流れ
どちらもアグレッシブな立ち上がり。つなぎながらも直線的にゴールを目指し、落ち着かせるよりも攻め切ることを優先したようなプレー選択。
徐々に鳥栖が持って湘南が構える構図に。湘南はサイドに入ったタイミングでスイッチを入れて全体をかなり押し上げてプレスに出ていく。
鳥栖は宮代と両WGが最前線に張り、小野とボランチ2枚がかなり自由に動いてパスコースを作るような作り。
6分、湘南先制、1-0。トランジションから石原が右に抜け出し、クロスを町野が合わせてゲット。鳥栖は、トランジションから守備陣が整っていない間に攻め切られて失点するよくあるパターン。
鳥栖は深い位置まで入れるようにはなってきたが、湘南の人数をかけた守備組織を崩すシーンはまだない。
湘南は3-1ビルド。鳥栖は宮代でサイドを限定しながら、WGが左右のCBとWBの中間に立ってパスコースを消す守り方。
鳥栖は保持時、長沼を前に押し出してWG化させ、後ろは3バック気味に。そこにボランチがサポートして流動的に形を変えていく。中野が相手IHのプレスを受けにくい高さを意識しているように見える。
鳥栖のボランチの役割分担は、福田が下りて、小泉が中盤に残ることが多い。
19分、島川の左足の内側に刺す縦パスからスピードアップ。宮代が前で収めて最後は西川のシュートまで。枠外へ飛んだが、可能性を感じさせた良い攻撃。
20分、湘南追加点、2-0。前プレスからタリクのしつこいチェイスで奪い取り、こぼれ球を拾った町野が質の高いフィニッシュでネットを揺らした。鳥栖は良い攻撃を見せた直後のビルドアップミスでの失点。湘南は先に1点取れたことで守る時間が長くなってもメンタル的に優位に立てている印象があり、その雰囲気のまま2点目も奪取。
24分、岩崎のカットインで外をあけ、スペースに走った小野からのクロス。谷がキャッチ。岩崎が前に張って石原をピン止めし、湘南3センターの脇に小野が潜ってくる作りが良くみられる。
鳥栖がボールを持つ展開は続くが、湘南がボールサイドに密集を作って前進を許さない。下りる選手にも後ろからタイトにマークして前を向かせない。
27分、PA内に抜け出した瀬川がファンソッコに倒されるもノーファウルの判定。
29分、湘南のハイプレスをかいくぐる鳥栖。落としとターンの判断が的確で、テンポも速いので、湘南も強度を上げていったが捕まえ切れず。タリクのファウルで一度ぶつ切りに。
ファウルも多いが、タリクの強度を上げたしつこいチェイシングがかなり目立つ。
湘南は保持時、左右のCBが時間をもらいやすいので、杉岡からの展開や縦パスが何度か見られる。
34分、小泉が2トップ裏でターンして前進。タリクが後追いで食い下がるも、キープして前へ。一度運べてもタリクがついてくるのはかなりストレスを受けていそう。
34-35分、ショートコーナーから小野がきわどいボールを入れるも谷がなんとか処理。結果的にオフサイド。
38分、中盤で宮代がポイントを作ってから西川のシュートまで。中盤での球際の攻防を制してスピードアップできれば確実にチャンスになる雰囲気がある。湘南は2点リードもあって、一度前進を許したら5-3-2で全員で守るので、アンストラクチャーな局面をどう作り出すかがポイント。
44分、福田のロングフィードを長沼が競り合ってセカンドを回収して前進。その後ドリブルから展開しようとした西川がタリクに倒されてFK獲得。
→46分、小野の直接FKは谷がセーブ。
湘南がゲームが落ち着く前に先制できたことで、ボールを相手にわたしながら主導権を握ることに成功。鳥栖も得意のビルドアップで湘南のプレスをかいくぐり、前進するところまでいけたことはポジティブだったが、リードして色気をほとんど出してこない湘南のブロックを崩すことはできず。さらに湘南が前プレをハメて2点目を取ったことで、メンタル面では大きな差ができたのではないか。湘南はおそらく交代が前提の上で2トップと両IHが運動量を上げて後ろの負担を少なくし、鳥栖が巧みに外してきても2度追いで対応できるようにしている。特にタリクと瀬川のチェイシングが印象に残った。鳥栖も福田と小泉がうまく動きながらさばいて相手に的を絞らせない動きはできているが、決定打は出せなかった。
後半
46分、鳥栖が右サイドで細かく繋いで、福田がスペースへ抜け出してクロス。山本が好カバーでカットするも、こぼれを拾った西川を杉岡が倒してPKに。
→48分、西川のPKを谷が止める。コースもタイミングも完璧に合った。鳥栖は勢いが出るチャンスを逸した。
鳥栖が保持して湘南が構える流れは継続。ただ、ハーフタイムを挟んだこともあってか、湘南が高い位置から強度を上げて追うシーンは増えた印象。
56分、後方からうまく前進して西川のカットインからクロスを送るも中に合わず。
58分、ロングボールのセカンド回収から鳥栖の攻撃。西川→宮代でポケットを攻略し、折り返すも中が間に合わず。惜しいチャンス。
鳥栖はロングボールのセカンド回収から前進するパターンが増えてきた。湘南はIHが上がってけん制をかけるため、中盤に下がってセカンド回収にいくまで時間がかかってしまう。
60分、鳥栖交代
中野、岩崎、小野→垣田、堀米、本田
福田が右SBベースになり、長沼が左SBへ移る。小泉が1アンカー気味で、西川と宮代が2シャドーのような攻撃的な布陣。
63分、タリク→町野→瀬川とうまく連係で打開し、こぼれ球をタリクが詰めに行くも、朴がギリギリで触ってCKに。ビッグセーブ。湘南は決定機。
63分、茨田のインスイングCKを舘が頭で合わせるも枠外。
66分、町野が右サイドで抜け出し、逆に振って落としを中野が狙うも枠外。
鳥栖が高い位置での保持を増やしてきた。湘南も5-3-2ブロックで対応。ただ、鳥栖がチャレンジのパスを増やしながらゴールに近づいている雰囲気もあるので、プレーエリアをもう少し押し上げたい。
69分、湘南が敵陣で回し、最後は茨田のミドル。
70分、湘南交代
山田→米本
前半から飛ばし気味で運動量が上がっていた山田を下げて中盤の強度を保つ狙いか。米本はそのままIHに入る。→ダブルボランチ気味?
71分、右サイドを崩した鳥栖が垣田でポケットをとって折り返すもオフサイド。
72分、湘南が敵陣で回して町野のシュートまで。CK獲得。
一時は鳥栖が高い位置で押し込み、攻撃の試行回数を増やす流れになったが、湘南が押し返して攻撃を続ける。
75分、タリクの自陣での奪取からロングカウンター。町野がタリクへのラストパスを狙うも通らず。湘南は米本の投入から守備の安定感が増した印象で、鳥栖の攻めあぐね感が出てきた。
76分、湘南交代
タリク→阿部
山田と同じく、前半から飛ばし気味に走っていたタリクを変えて強度維持を図る。
77分、湘南追加点、3-0。投入されたばかりの阿部のCKを山本が頭で合わせてゲット。朴も反応したが、かき出せず。勝負を決める1点。湘南はやや苦しくなり始めた時間から交代で流れを変えて見せた。
78分、鳥栖交代
西川、福田→森谷、藤田
小泉が右SBに移り、藤田がボランチに入る。
79分、右からのクロスをフリーで阿部が合わせるも小泉がブロック。完全に湘南ペースでイケイケの雰囲気に。
80分、石原が足を攣る。
82分、湘南交代
石原、町野→岡本、ウェリントン
鳥栖はライン間やPA内で受けられるシーンはあるが、少しでも時間がかかると湘南の守備陣に寄せられる。
湘南はウェリントンの1トップで3-4-2-1気味に変えたか。
87分、瀬川が高い位置で奪ってそのままシュートまで。朴がセーブ。湘南はできるだけ前から追うやり方は変えず、鳥栖は後ろを少なくしているため、一度ひっかかると決定的なシーンにつながる。
88分、小泉に警告。阿部への手を使ったファウル。
89分、中野の仕掛けから折り返しを阿部がシュート。湘南のペースが続き、鳥栖は攻撃の時間すら与えてもらえないような展開に。全体を攻撃的な選手にシフトしたことが裏目に出ているように感じる。
93分、ブロックの外から本田が狙ったミドルは谷が触ってポストにはじかれる。
3-0のスコアどおり、湘南の完勝と言っていい内容で終了。鳥栖もらしい保持の形からポケットを取って折り返す惜しいシーンは作れたものの、PKを除いて得点につながりそうなシーンはほとんどなかった印象。50分~65分あたりは鳥栖が高い位置での保持を続けてゴールに近づいていた雰囲気があったが、米本の投入あたりからは完全に湘南がペースを引き戻した。鳥栖も攻撃的な選手をガンガン入れて前がかりになっていた中、湘南は前からのプレスを強めることで、鳥栖の後方の選手から自由を奪って攻撃を許さず。立ち上がりでリードを奪えたことが守備の割り切りにつながり、バランスを崩してきた相手に追い打ちをかけるプレスで完全に支配した。一度明け渡しかけた流れをしっかりと引き戻した山口監督の采配と選手のハードワークに拍手。
鳥栖は要所要所で良い組み立てもあった一方、湘南の前線のプレス、プレスバックが非常に激しく、それを上回れなかったことが敗因の1つになった。
個人的MOM
★タリク
前向きのプレスに加え、絶対にサボらないプレスバックがかなり印象的。一度プレスを外されようとも、タリクが懸命に戻ってきたことで遅らせ、相手のスピードアップを防いだシーンは何度もあった。そのしつこい守備が貴重な2点目につながったことも大きい。
見事なシュートスキルで2得点を奪った町野もMOM級。タリクと同様に運動量のところでプランを遂行した瀬川と山田も高評価。後半頭でPKを止め、悪い流れを作らなかった谷のプレーも大きかった。
トピックス
鳥栖は今季初の3連敗で5試合勝ちなし。皮肉なことに川井監督の契約更新後の3試合で3連敗という結果になった。
監督コメント
(※Jリーグ公式サイトから引用)
[ 山口 智監督 ]
(前節より)間が空いた試合で、直近の神戸戦では結果が出なかった中で、良い準備をしたというよりかは、いまの過程で振り返ったら「そう言われるだろうな」という準備をしてきました。何をもって良い準備かと言うと、自分の考え方としては、やってきたものを積み上げるということ。もちろん相手があることなので、難しさはありますけど、自分たちに向き合ってやってきた2週間でした。今日の試合に関しては、それを出せるかどうか。相手のやり方や相手のスタイル、選手の特徴もありますけど、それを網羅できるくらいの準備をしてきました。今日に関しては、守備の時間が長かったですけど、今季やってきたことを表現できたんじゃないかと。なおかつ、点を取ることに関しては前半の早い時間に取れて、トドメがセットプレーという理想的な点の取り方ができて、ゼロに抑えることができたので、非常に評価できるゲームになりました。
--町野 修斗選手の決定力もすごかったですが、シュートに至るまでの過程も良かったと思います。前半の2ゴールをどう評価しますか?
もちろん点を取った本人が評価されるべきですが、僕はそれがすべてだとは思わないです。ボールを奪うところから始まって、つなぐ選手がいて、最後に仕上げる選手がいると思っているので、(ゴールに絡んだ選手全員を)同じように評価したいですし、そういう選手が増えることが良いと思っています。1点目は(石原)広教のクロスから、2点目はタリクの素晴らしいディフェンスで、取り組んできたことがつながったゴールだった。決めた町野は素晴らしかったですし、クオリティーを持った選手だという評価をしていますけど、全員を評価したいと思っています。
[ 川井 健太監督 ]
今季最後のアウェイということで、たくさんのサポーターに来ていただきましたが、気持ちよく帰ってもらうことができず、申し訳ないなと思います。ただ、最後1試合ありますので、自分たちのホームに戻って、良い思いでシーズンを終えてもらえるよう、1週間、準備したいです。--前半のうちに失点してしまいましたが、試合の入りはいかがでしたか?
入り自体は悪くなかったと思います。相手のスペースができるところを狙いながらやれていました。1失点目に関して言えば、湘南さんが得意とする形で、それをケアできなかった。2失点目は少しミスが出てしまって、気持ちを引きずられるような2失点でした。--残留はすでに決まっていて、上位争いにも関われないということで、選手のモチベーションの維持は難しくありませんでしたか?
結果だけを見れば、こういう形が続いているので、そう見られてもおかしくはないですけど、中身でいうと、そういうことはまったくないと思っています。彼らが準備をしっかりしないでこの試合に臨んでいるかと言われれば、そうではない。ただそういう意味では、何かが足りないと思って、もう1試合できると思っています。モチベーションがあるのは当たり前のことなので、気持ちではなく、プレーで何かが足りないと思っていて、その中で最後は良い試合をしたいです。