2021 J1リーグ第29節 名古屋グランパスvs横浜F・マリノス メモ
スタメン
流れ
強い圧力は掛けていないが、高い位置で人を捕まえる名古屋。長澤は場所を捨ててアンカー位置の選手にマーク。喜田が大外レーンに流れてポイントを作るいつものやつでプレス回避を狙う横浜FM。
横浜FMはいつもどおり、前線の運動量・強度を上げて前からハイプレス。ボランチもポジションを捨ててもつぶしに出てくる。
プレスもパス回しも横浜FMがペースを握り、試合を支配する立ち上がり。名古屋はマテウスや森下の推進力を生かしたロングカウンターでチャンスをうかがう。
7分、吉田豊からの背後へ送るパスを森下受けて深さを取る。名古屋がプレス回避の形を1つ見つけたような流れだった。
徐々に名古屋が両サイド奥のスペースに起点を見いだし始める。
12分、名古屋先制。前田がサイドで抜け出してFKを獲得したところから、連続セットプレー。最後は混戦から中谷が押し込んだ。
横浜FMが良い入りで主導権を握っていたが、名古屋が小さな突破口を発見したところからワンチャンスを決め切るしたたかさを見せた。
スコアが動いたあとも展開は大きく変わらず、横浜FMがボールを持って敵陣へ入り、名古屋はロングカウンターを狙う。名古屋はシュヴィルツォクを最前線に残し、2列目の3人のスピードを生かして縦に速く攻める。
横浜FMはボランチ2枚が右に寄ったとき、ティーラトンがアンカー位置までスライドして受けに来るシーンが多くなった。名古屋2トップが中央を締めれば、實藤のところから運ぶ。
22分、横浜FMのボランチが少し横に広がり、ティーラトンがアンカー位置に入る形。
24分、カウンターからマテウスがサイドで2枚を剥がし、シュヴィルツォクへ送る合わせられず。
連続でシュヴィルツォクにチャンス。彼を最前線に残していることに加え、マテウスの突破力を生かして少ない人数でも完結し切れる強みが出ている。
飲水タイムは取らない模様。名古屋にとっては流れを切るという意味でもブレイクを入れたそうな気もするが、どのような意図があったか。
マテウスがSBについていってWBのような位置へ下がったときに、中盤のサポートでSHに近い位置へ入る前田。
41分、手を使って森下を後ろから倒したセアラに警告。広島戦の土肥へのチャージもそうだったが、守備意識が高い一方で強引なディフェンスが多いのは気になる。
比較的接触に寛容な家本さんの基準に、上位直接対決の緊張感も重なってか、ジャッジや接触に敏感になる両軍。
横浜FMがボールを握って、名古屋がカウンターを狙う構図が続いた前半。横浜FMも何度もエリア近辺まで進入し、チャンスも作ったが、名古屋が最後のところは粘って良い体勢でシュートを打たせない対応はできていた。名古屋も防戦一方だったわけではなく、2列目の推進力とシュヴィルツォクの前残りで一気にゴールを脅かす。セットプレーで先制できたことにより、得意としている“守りながら隙を狙う”戦い方が続けられる。
ビハインドとなっている横浜FMだが、大きく変えなければいけないことは特にないように感じる。同様に攻めながら最後のところの質が高まればゴールは決まるはず。強いて言えば後方のリスク管理の調整はしてもいいかもしれないが、チームカラーとしてそこには手を付けないだろう。
後半
45分、名古屋追加点。開始早々に名古屋が前からの圧力を強めると、前田が岩田から奪取に成功し、最後はシュヴィルツォクがGKを交わして無人のゴールへ流し込む。角度が厳しくなっていたが、落ち着いて枠内へ入れた精度と冷静さはさすが。
前半と比べて、名古屋のプレスラインの高さと強度が上がったような気がする。
横浜FMが攻める構図は変わらないが、名古屋のPA付近での守備がより安定し、カウンターへ移れる怖さも少し増した印象を受ける。
54分、前田→宮市
名古屋サポーターからの拍手も?
61分、長澤、前田→米本、シャビエル
前田→シャビエルの交代によって、トップ下の中盤サポート守備タスクが薄まったように見える。チームの意図なのか選手の個性の違いなのかは分からない。
前残り気味の選手が増えることにもなるが、自陣で奪ってからは大きくクリアするシーンが多いので、前半や後半立ち上がりほどカウンターを打てる数は少なくなった。ゴール前の強固さは増しているように見えるので、時間を作るためにも前の起点を増やしたかったのかもしれない。
68分、マルコス、扇原→天野、杉本
天野がボランチの位置に入り、杉本がトップ下気味。
天野は、ベースポジションこそボランチかもしれないが、保持時には1つ前のライン間や、ハーフスペースを縦に抜ける動きも見せるので、扇原とはタスクの振り方が異なる。
71分、横浜FM得点。天野のインスイングCKからニアで杉本が合わせた。よりターゲット要素強めの杉本が入ったことで、セットプレーの脅威も増すかもしれない。
得点でメンタル的にも余裕が出てきたのか、攻めの勢いが増す横浜FM。ただ、名古屋も最後のところでコースを消していたり、体を預けていたり、万全な状態では打たせない。
75分、マテウス、森下→相馬、木本
システムを[5-3-2]に変更。木本が中央のCB、相馬が左IH。
わりと早い時間帯で逃げ切りを狙うような采配に出た。
ベタ引きするだけでなく、IHが前に出てプレスを掛けに行く場面も見られる。
79分、エウベル、實藤→水沼、松原
松原が右CB、岩田が左へ。
83分、セアラが反転からフリーでシュートを打ったが、ランゲラックがファインセーブ。名古屋にとってはおそらく初めてフリーで打たれたが、守護神がカバーした。
86分、シュヴィルツォク→金崎
会場からは大きな拍手。
95分、天野の抜け出しから杉本がシュートも木本がブロック。ランゲラックの前に必ず壁ができる。
名古屋が逃げ切って勝利。横浜FMは後半立ち上がりに喫した失点が大きく響く形になった。名古屋は受ける時間が圧倒的に長くなったとはいえ、守りが崩れることはなく、シュートシーンではDFがしっかりと対応。(おそらく)唯一フリーでセアラにシュートを打たれた場面もランゲラックが止め、チームとして支え合うディフェンスができた。
横浜FMは前半のチャンスを決め切れていれば、精神的にも余裕をもって進められたかもしれない。内容的には決して悪くなかったが、相手の徹底した守備を破れなかった。J1の中でも、鹿島と並んで相性が悪い相手と言えるかもしれない。
個人的MOM
★前田 直輝
先制点につながるファウルを獲得、そして後半立ち上がりにはプレスから追加点を生み出すなど、記録には残らないが2得点に関与。
ここ数試合は2トップの位置からサイドに流れるプレーで存在感を示しており、シュヴィルツォクの相方1番手として定着してきた。
コメント抜き出し
(※Jリーグ公式サイトから引用)
[ マッシモ フィッカデンティ監督 ]
予想したとおり、ハードですごく難しいゲームになった。その中でしっかりと勝ち切ったことが素晴らしかったと思う。(連戦の)消耗もすごくあり、そういった部分が後半の流れに少し影響したが、マリノスはスタイルとしてバランスを前にして押し込んでくる中で、こちらがボールを持ったときに、しっかりとダメージを与えられるかというところだと思っていた。
後半、スコアが2-0になったあとに、2本3本とボールをしっかりつなげられれば、相手のゴール前まで攻め込めるチャンスになったと思う。それがもう一歩だったのは、先ほど言ったようなACLの疲れもあったのかなと思う。しかし、今日は1つでもミスをしたら得点を取られるという相手。(ACLラウンド16・)大邱戦の勝利のあと、「油断があってはならない」、「1つのミスで終わってしまう可能性もある」と話をしていて、そういう試合で、最後まで集中し1失点はしたが最後まで守り切って、やり切って勝ったというのは良かった。特にマリノス相手に、この勝利はとても大きいと思う。
--ディフェンス面での積極性を感じられたが?
マリノスが押し込んでくるということは、もちろん分かっていた。こちらからどんどん仕掛ける、引いて守ってもここはやらせないとか、ここしか相手は選択肢がないというような守り方ができたと思う。シュート数はかなり打たれたかもしれないが、それが「もし入っていたら」というような話をする必要があるシュートではなかったと思う。そこにプラスして、こちらが相手にダメージを与えるために、守ったあとのところができたら良かったのだが、われわれは四つの大会をにらみながらの試合で、マリノスはいまとても勢いがある中でリーグ戦に集中して取り組んでいる。その状況の違う2つのチームが対戦したということで、そこまで贅沢を言ってはいけないのかなと思う。
[ ケヴィン マスカット監督 ]
試合直後のエモーショナルな状態なので、正直、分析するのが難しいです。自分たちのやりたいことができた試合でした。敵陣でボールを握り、支配しました。ピッチ状態が良くない中、このような内容ができたのは良かったです。負けてしまいましたが、やろうとしたことをやった上での負け。何もできなかった負けではありません。ただ、負けてしまったのは残念です。
--開幕から不動のCBコンビだった畠中 槙之輔とチアゴ マルチンスの不在が響いた負けだと感じていますか。
もちろん畠中とチアゴは私たちの大事な選手です。ただ、前節に続いて先発した實藤(友紀)と岩田(智輝)もよくやってくれました。アウェイの地で完全にゲームを支配できましたし、大きく欠けている部分はありません。もちろん学ばないといけない部分はありますし、成長しなければなりません。今日はメンタルを強く持ち、最後までよく戦ってくれたので、このサッカーを続けていくことが結果につながっていくと信じています。--2トップや松原 健選手のCB起用など、これまでにない采配がありました。狙いを教えてください。
相手がリトリートしている中、プレッシャーを掛けるために、杉本(健勇)を投入して2トップに変えました。次に天野(純)を入れ、攻撃的な選手への中盤の変更がありました。松原はホームでの名古屋戦で素晴らしいパフォーマンスを見せ、多くのチャンスを作ってくれました。交代した選手がパワーを出してくれたと思います。これを続けてやっていきたいです。