2023 J1リーグ第30節 横浜FCvsFC東京 メモ
仲川が出場停止。
流れ
横浜FCは立ち上がりから縦に速く攻める姿勢が見える。非保持ではほとんどプレスに出ず、自陣で構えて相手を引き込んで、カウンターのスペースを作る意図か。
ボールを持たれることを許容する横浜FCと、持ちたい東京。早い時間から保持と非保持の構図がはっきりする。
東京は2トップでプレスを掛ける。それに対して横浜FCは最終ラインからはっきりとロングボールを送る。
8分、東京のゴールキックに対しては前からプレスを掛けていく横浜FC。ただ、ヒアンの緩いチェックを切り返しではがして前進する森重。
9分、横浜FCのプレスを野澤→原川で回避。原川がプレスを受けない位置へ下りてピックアップ。
横浜FCはWBが相手の大外の選手に縦スライドで強く当たりに行く。
10分、横浜FCが迎撃から右サイドで奪い、そのままカウンター。ヒアンがつぶれてカプリーニが抜け出すと、小泉が止めてファウルに。小泉には警告が提示。横浜FCとしては前向きに奪ってゴールへ直線的に迎えた狙いどおりの攻撃。ドグソすれすれのファウルだったように見えた。
14分、横浜FCのプレス。ヒアンが中央を固めつつ、両シャドーがCBにプレスを掛け、後ろが人を捕まえる。東京は縦パスをつけて前進を図るが、横浜FCのマークのほうが上回っている状況。
15分、横浜FCが高い位置で奪ってからスローインの流れで山根がシュートまで。
15分、右サイドの配球から渡邊が背後へ抜け出すもオフサイド。横浜FCは全体が前向きになってきているところの裏を突かれた形に。
16分、原川が中盤でさばいて左へ展開。アダイウトンが個人でぶっちぎってクロス。中には合わず。
全体が整っていないときにはプレスに出ず、割り切って撤退する横浜FC。
横浜FCが引いてきたときには、相手1トップの周りにCBとボランチで正方形を作るような形になる東京。ボックスビルド。横浜FCのボランチは1トップがカバーしきれない範囲において、迎撃でボランチを捕まえに出る。
東京はトランジション時にポジションかまわずボールへ突っ込むため、球際を作り出せないと、後ろにスペースを作り出してしまうリスキーな戦法。
21分、渡邊がプレススイッチを入れるも後ろが押し上げ切れず、井上がフリーに。その後迎撃で奪取するも、守備が連動しなかったシーン。
22分、ディエゴが左に流れて深さ作り。バングーナガンデがクロスを送り、最後はこぼれ球を回収した小泉がミドル。原川のさばきが前進の肝になっている。
24分、岩武のロングフィードに反応したヒアンと森重のマッチアップ。ヒアンのファウルとなったが、紙一重のシーン。
横浜FCはサイドの縦スライドが早く、東京はワンタッチで内へ送るしかなくなる。当然横浜FCもそこは蓋をしており、そこが回収のポイントになりやすい状況。
27分、エンリケが運んでから縦パスを入れるも、カットされてカウンターに。1トップ脇からの運びは崩しのポイントになり得る一方、奪われると背後のスペースを突かれるリスクもある。
28分、自陣での奪取からカプリーニ→ヒアンで一気にゴールを狙うも野澤が飛び出してカバー。
29分、渡邊が左大外へ動いて野澤からピックアップして押し上げ。SBとトップ下を流動的に入れ替えることで、フリーマンを作り出した。
31分、横浜FC先制、1-0。ビルドアップですれすれの回避から疑似カウンターに持ち込むと、井上がカットインからシュート。ディフレクションでコースが変わり、ネットを揺らした。東京はアダイウトンのプレスで奪いかけたが、ギリギリで外される結果となり、後方のスペースをうまく突かれた。アグレッシブな戦法のリスクが出てしまった場面。
34分、小泉と原川のコンビネーションで中盤の攻略を狙う。
35分、横浜FCが敵陣左サイドでFK獲得。小川が混戦から抜け出しかけて止められた。
38分、FKの崩れからユーリが折り返し、中で合わせてネットを揺らすもオフサイド。30分過ぎあたりからは横浜FCのペースが続く。東京は縦パスを入れて打開しようとしているのは分かるが、安易なロストからの被カウンターが目立つ。
40分、ディエゴへの配球のこぼれをバングーナガンデが回収し、最後は渡邊がシュート。
41分、中盤からの配球で俵積田が抜け出すも永井がカバー。結果的にオフサイド。
俵積田が右から斜めに飛び出す形が増えた東京。何か変化をつけようとしているが、横浜FCがそこまで困っている様子はない。
45分、左サイドの連係からユーリがシュートまで。野澤の正面。横浜FCは「奪ったら前」が撤退されているため、ボールロストのエリアが高い位置になっている。
ボールを持って相手陣内へ入り込み、深い位置での攻撃を増やしたい東京。ボールを持たれることを許容し、全体をコンパクトに保ちながら、敵陣に生まれたスペースを素早く突きたい横浜FC。そのような狙いがある両者の戦いで、より多く狙いを出せたのは横浜FC。主にサイドで強く当たって奪取のポイントを作り、相手の手薄になったサイドとバイタルをうまく使ってゴールへ向かう試行回数を増やした。ゴールはビルドアップからの疑似カウンターだったが、作りたかった局面としては同じようなものと言える。
一方で東京はCBに運ばせて縦パスを狙ったり、サイドから背後への抜け出しで打開を図ったものの、横浜FCの守備網に引っかかるシーンが散見。スポットで良いシーンもあったが、シュート数自体も2本と少なく、多くの時間でストレスを抱える試合展開になっている。
後半
46分、右サイドで奪って俵積田が縦に運び出し、CK獲得。
横浜FCは全部が全部前に行くのではなく、スペースが少ない場合にはボールを落ち着かせてゲームスピードが上がり過ぎないようにコントロールする判断もいくらか出てきたように感じる。
50分、ディエゴが下りて起点を作り、左へ展開。コンビネーションからの打開を狙ったが、ロストしてヒアンがスペースへ出ていく。東京はSBが高い位置へ張り出しており、ロストすると2CBしか残っていない状況に。
横浜FCは前半よりもラインが深くなった印象。そのぶん東京の最終ラインが高い位置でボールを持てるが、ヒアンがカウンターで使えるスペースも大きくなる。
56分、白井→アダイウトンで一発で背後を取ってシュートまで持ち込んだが、永井が飛び出してブロック。シンプルな裏狙いでチャンスを作った。前半の俵積田同様、WGがインサイドに入ってから背後を狙う形。
59分、右からの対角フィードを受けた林が白井を振り切ってシュートも、東京DFがギリギリでブロック。
60分、トランジションからヒアンが仕掛けてシュートまで。野澤が処理。
横浜FCが連続攻撃。オープンアタックで回収して攻撃を続ける。
61分、自陣トランジションでディエゴが起点を作り、押し返し成功。ディエゴをつぶしたユーリに警告。
63分、東京交代
俵積田、白井→松木、東
東がボランチ、松木がトップ下に入り、小泉が右SBへ、渡邊が右WGへそれぞれ移動。
東京はプレッシャーを受けていない局面でもCBから左サイドへロングボールを送るシーンが増えた。アダイウトンの強さを生かしてセカンドを回収する狙い?
65分、横浜FCがトランジションからスピードアップ。カプリーニの運びでPA手前まで進み、FK獲得。
68分、横浜FC交代
小川、カプリーニ→伊藤、坂本
東京がハーフライン近辺でボールを持ち、横浜FCが構える展開が続く。足元でつなぐことにこだわらず、より深いエリアでのプレータイムを増やすためのプレーを選んでいる印象。
アダイウトンは左から内へ入る動きでWBを引き連れるとともに、中央のターゲット役にもなる。
78分、東京交代
アダイウトン→塚川
そのまま左WGの位置に入る。
80分、トランジションからヒアンの収めで坂本が出ていくもパスはつながらず。ただ、横浜FCはやることははっきりしている。
81分、横浜FC交代
ヒアン→三田
81分、ディエゴとのワンツーで小泉がうまく抜け出してクロス。ファーで2人飛び込むも、ミートし切れず。ただ、左サイドは塚川が入ったことでファーのターゲットが強化されている。
83分、横浜FCが久しぶりの敵陣保持。サイドで時間を使いつつ、ゴールに向かうタイミングをうかがう。
86分、右サイドの連係から東が抜け出してCK獲得。
86分、東京交代
バングーナガンデ、渡邉→徳元、熊田
熊田はそのまま右WGに入る。
88分、横浜FC交代
井上、吉野→近藤、モラエス
89分、中盤で奪った横浜FCがカウンター。伊藤のきわどいクロスには中で合わせきれず。ロスト後には、ファウルになってでも先に進ませないという意志を感じる守備。
横浜FCはフレッシュな前3枚が二度追い三度追いでボールホルダーへ寄せていき、後ろを極力動かさなくていいように働く。
1点を守り切る体勢に入っていた横浜FCが大きなピンチを迎えることなく逃げ切り成功。
1点リードで後半を迎えた横浜FCは、前半よりもブロックを深い位置に設定し、まずはゴール付近のスペースを小さくすることを優先。そのぶん相手にボールを持たれる位置は上がってしまうが、逆にカウンターで使えるスペースは広がる。序盤は奪ってからヒアンにスペース突撃を任せるシンプルな戦法で守備を安定させつつも、押し返しを図る。時間の経過とともになかなか相手陣内へ入れる回数は減ったが、守備で崩れるシーンもなかった。
東京は無理につながずロングボールからのセカンド回収で押し込みを狙うといった手札も見せたが、いずれにしても効果的に機能するシーンは少なく、得点のにおいを感じたのは白井→アダイウトンで背後へ抜け出した一度くらいだったように感じる。
全体的に不用意なボールロストが多かったり、守備でのチャレンジが裏目に出たりと、印象が悪いシーンが目立ったようにも感じるが、まずはリスクを取った選択肢を選ぶという点では支持できる面もある。負けという結果は良くないが、「これだとパスが通らない」「これだとボールを奪い切れない」というラインを各選手がつかむきっかけになるのだとしたら、意味のある敗戦になったということができる。そうなるかどうかは今後の展開次第だろう。