がちゃのメモ帳

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【FC東京】J1第3節 vs京都サンガF.C. 振り返りと考察

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試合展開

京都は3トップでCBとGKに激しくプレスをかけながら、東京のSBへボールが渡るとIHやSBが寄せてくるとともにWGが切り返してプレスバックに戻り、複数人でホルダーを囲む。これが90分持つとは思えないが、まずはエンジン全開で入ってくるのが京都のスタイルだ。これに対して東京は最終ラインでパスを回すも、浮いた場所は見つけられずにバックパスから前へ蹴るシーンが増える。特に立ち上がりはリスクマネジメントの面で言えば、前へ送って自陣でのロストを防ぐ意味合いもあっただろう。ただ、中盤につなげそうな場面でもバックパスや横パスを選択して、結果的にロングボールを蹴らざるを得なくなっている場面も多くあった。徹底したリスクマネジメントと捉えることもできなくはないが、アルベル監督が試合後コメントで「最初はドタバタする時間があるにせよ、そのあとは落ち着いてゲームをコントロールする。それがゲームプランでした」と話していることを踏まえれば、つなげるだけの力がなかったと言える。

また、東京は京都のビルドアップに対して、WGの外切りプレスを仕掛ける。ただ、京都はCB(GK)からの縦パスを中盤につけてSBへはたく、いわゆる「レイオフ」と呼ばれる方法で空いたスペースを活用。東京は保持でも非保持でも後手に回っていた。ただ、その中でもスコアレスで折り返せたことは1つ評価できる。

後半は、前半から飛ばしていた京都のプレス強度が少し落ち、WGが走り回れなくなったこともあって東京の保持が少し落ち着くように。CBが余裕をもらえるときは対角フィードや縦パスからの前進がいくらか見られるようになった。ただ、京都が60分頃の交代で谷内田と金子を投入すると、ギアを上げ直す。谷内田のところで再び二度追いができるようになると、東京は保持がバタつき、京都ペースに。素早い切り替えで押し込む展開に持ち込むと、セットプレーでこじ開け、終了間際にPKをゲットして勝負を決定付けた。東京は途中出場でWGに入った俵積田や荒井のプレーでゴールへ迫ったものの、完封負け。もし勝てる展開に持ち込めるとしたら、ある程度ペースを握れた45~60分頃までの間で先制点を取って逃げ切るしかなかった。

 

バイタル守備問題

柏戦では最終ラインの前の広大なスペースを使われて失点。そして京都戦でも、バイタルを使われて危険なシーンを何度か作られた。

まず京都戦の守備構造を整理すると、自陣では主に4-3で守っており、4バックは比較的横に動いていた。SBが大外に出て行けば、ボールサイドのIHがハーフスペースをカバーするか、CBが持ち場を捨てて出る。

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また、木本と森重のいずれかはスペースよりもパトリックを見る意識が強く、ゴール前中央にはスペースが生まれやすくなっていた。そのため、中盤が最終ラインを埋めに入らなければならず、バイタルが空きやすくなっていたと言える。

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これは小泉がカバーした場合でも結局はバイタルへのパスコースが空く、または東が外へ出て行ってバイタルを空けることを意味するため、彼がカバーを頑張っても構造自体が解決するわけではないだろう。

対パトリックは特殊な対応だったかもしれないが、それとは別にSBが大外を気にしすぎている印象もあった。システムもやり方もが違うため、比較するのはナンセンスかもしれないが、長谷川監督体制では4バックのうち3枚は絶対にゴール前のスペースを埋める守り方をしていた。それによりファーサイドは空きやすくなるが、バイタルとゴール前中央はがっちり固まる。ケースバイケースでもあるが、ボールと逆のサイドはそれぞれを内に絞らせて、もう少し幅を狭めた守り方でもいいのではないか、というのが個人的な考えだ。

もちろん、バイタルを空けたとて使わせないように出所を塞げれば問題ない。ただ、いまは塞げていないのだから、なにかしらの修正は必要だと感じた。

 

 

課題が見えたビルドアップ

昨季から東京のビルドアップの特徴としてあるのが、CBが時間をもらえれば良い攻撃ができる一方、CBが圧力を受けると途端に前進できなくなるというもの。この試合でも木本と森重が時間をもらえた場面では、縦パスやフィードから効果的な前進ができていた。一方で、90分を通じて言えば、果敢にプレスをかけてくる京都の前にクリーンな前進はほとんどできなかった。そうとなると、相手をプレスにこさせないためにどうするか、を洗練させなければならない。

個人的に足りないと感じた部分は、CBが多少のリスクを負ってでも中央へパスをつけていくこと。中盤で待つ東へパスをつけられそうなシーンでもSBやGKへのバックパスを選ぶシーンが目立ち、それによって京都のプレスを加速させてしまった。また、東以外のサポートがないのでは?という仮説も立てて見返してみたが、左右で塚川が縦パスのコースを作っているシーンはかなり多く、やはり出し手の問題が大きいように感じる。塚川に関しては、マークにつかれていても背負いながらキープできる強さがあり、1stタッチでマーカーを外せるスキルもあるため、多少厳しめな状況であっても、もっと預けてもいいのではないかと思った。

中央を見せられないことが課題だと挙げたが、バングーナガンデと東のラインだけはうまく中央を使いながら前進できる絵を共有できているようなプレーが目立った。また、塚川も縦パスのコースを作っており、彼を使う、もしくは彼をおとりにして別の場所を活用する攻撃を繰り出すことも選択肢に加えたい。

 

もちろん、この現象自体も問題の1つだが、それ以上に気になったのは、昨季終盤では中央を使ったビルドアップができていた試合もあったという点。特にアウェイ柏戦、アウェイ広島戦、アウェイ鹿島戦などはプレス回避に安定感があった印象だ。ただ、昨季もそれが単発的に終わっているかつ、キャンプで積み上げる期間を経て迎えた今季でまったく見せられていないのは気掛かり。昨季終盤との状況の違いとしては、(当たり前だが)勝点が再び0からスタートしていること。今季も序盤は現実的に勝点を積み上げようと考えているのか、それとも進歩のスピードが遅いのか。どちらにせよ、アルベルが考えていた成長曲線は思いどおりに描けていなさそうだ。

 

アルベルは「アグレッシブな守備をしてくる京都さんには中央でのプレーが難しいと予想していたので、幅を取るウイングの起用が狙いでした」と試合後にコメントしている。その狙い自体は悪くないが、後ろでクリーンに前進できなければWGを生かすことは難しい。実際にWGがサイドでスペースを持って仕掛けられたのは片手で数えられるほどしかなかったのではないだろうか。

先発のアダイウトンや仲川はもちろん、途中出場の俵積田と荒井も十分評価に値するプレーは見せている。WGの個で打開できる計算は立っているだけに、得点力向上のカギはビルドアップの安定と質の向上にあるだろう。

 

※コメント参照元

【公式】京都vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2023年3月4日):Jリーグ.jp