がちゃのメモ帳

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【FC東京】2023 J1リーグ第1節 vs浦和レッズ 開幕戦で見えたこと

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スタメン

 

 

90分を通じて見えた課題と好材料

ビルドアップ

昨季はCBのところに時間をもらえれば、木本の縦パスや森重のフィードを生かした攻撃が展開できた一方で、強くプレッシャーを掛けられるとなかなか前進手段を見つけられない傾向にあった。そこでまず個人的に注目していたのはビルドアップの成熟度。浦和戦を見る限りでは、この部分はまだまだ改善できていないと感じた。具体的にポイントを挙げると、全体的なパス交換のスピード、3トップのビルドアップ関与などだろうか。

前者に関しては、CBの1stタッチがバチっと決まる精度がまだまだ低く、そこのコンマ何秒が遅れたり、コントロールに意識が向いてしまうことで広い視野が確保できずに判断が遅れたりしているように見える。それによって相手のプレスをもろに受けてしまったり、二度追いやプレスバックが間に合って前進できるスペースを失ったりしていた。

また、これは後者の内容がうまくできていないがゆえに、CBが持つパスコースが少ないからともいえる。CFは最前線、WGは大外に張ることを求められているとはいえ、状況に応じて縦パスのコースを作ってあげることも必要。特にSBに中村とバングーナガンデという主に大外レーンでのプレーを得意とするタイプが入っていたため、その仕事の重要性は高かったと思う。現場の判断で、まだそこまで強調する段階ではないとなっている可能性もあるが、いずれはできるようにならないといけないポイントだろう。例えを挙げると、IHの選手が下りて受けることで相手のボランチを動かしにかかり、その背後のスペースにWGやCFが潜り込むといった駆け引きができるようになると引き出しは増えると思う。

相手の4-4-2プレスを受けた中で、ボールを捨てなければならなくなったシーンは多かった。中でもよく見られたパターンは、CB→SBのパスで相手のプレスにハマってしまう、CB→SB→アンカーとつないでワンタッチで縦につけるが、相手ボランチのところに引っかかる、という2点だろうか。どちらも昨季多く見たものであり、前半の内容を見た限りでは、今季の序盤はまた同じ壁にぶつかる可能性が高い。

 

アダイウトンのフィジカルで強引にキープできた場面もあったが、現体制は人ではなく、仕組みで崩すことを目指しているはず。もちろん属人的な部分は絶対あるにせよ、そこだけに頼らない戦い方を身につけなければならないだろう。

 

プレス

浦和戦では4-1-2-3セットで入り、非保持時は3トップを中央寄りに配置。主に右WGの仲川が内側を切りながらプレススイッチを入れて外へ誘導しようとする形が多くみられた。そのスイッチに中村が素早く連動し、サイドでバチっと縦に当たっていければハメられた場面もあったが、サイドにあててから両ボランチを経由されて抜け出されるシーンも少なくなかった。昨季もそうだったが、前線の圧力の掛け方が弱く、後ろが思い切って出ていけないのではないか?と感じるシーンが多い。後半は安部がトップ下に入る4-2-3-1(4-2-1-3)とし、前線の圧力と相手ボランチへのケアを両立できたことで後ろの選手がの役割がある程度整理された。ただ、安部のトップ下はあくまでもオプションのはずなので、4-1-2-3で入ったときのプレスは、前線の強度向上か、仕組みの微調整が必要になるだろう。

プレスから少し話題がそれるが、後半の布陣では自陣守備がほぼ4-2ブロックに近くなっており、松木、小泉の両ボランチバイタルエリア、SB-CB間、SBの前のスペースのすべてをカバーするような守備タスクの振り方になっていた。それでほとんど穴を作らずに対応できていたが、このセット+安部のサポートがあるからこそ成立するスペシャル技感があるので、選手がそろわない場合には安易にできないバランスのとり方だと思われる。

 

采配

1stプランがそこまでハマらなかった前半だが、アルベルの試合後コメントで「前半最初の30分ほどはひどいプレーをしていたわけでもなく、浦和が素晴らしいプレーでチャンスをたくさん作っていたわけではない。シンプルでイージーなミスを繰り返し、リズムをつかめないまま最初の30分間は戦っていたと思います」とあるように、こちらの出来次第ではもっと良い内容にできたという意見は概ね同意だ。その中で、1つのロストやプレス空転でゴール前まで運ばれてしまった前半を踏まえ、形を変えて修正を施した後半の采配は見事。後半頭から投入された安部は攻守において重要な役割をこなし、試合の流れを引き寄せた。また、時間や状況に応じて守備のバランスを変えたところも良かったポイント。後半途中まではWGを深く戻さずに4-2ブロック気味で守っていたが、リード後には渡邊と塚川の投入からWG(SH?)を大外レーンの深い位置まで戻させることで最終ラインの負荷を減らしていた。また、ロングカウンターから追加点のチャンスを作れており、守備を安定させることで攻撃に転じられることも示した。

(※監督コメントはJリーグ公式サイトから引用)

【公式】FC東京vs浦和の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2023年2月18日):Jリーグ.jp

 

主なポジ要素

右サイドのコンビネーション

左サイドはアダイウトンとバングーナガンデがとにかく馬力で突っ込んでいくのに対し、右は流れてきたディエゴと仲川、中村の3人の崩しが多くみられた。スペースに出ていく動きを得意とする受け手タイプの中村と、その場のノリでうまく息を合わせられるディエゴ&仲川の相性は良好で、何度もポケットへの進入からクロスまで持ち込めていた。対策されることも考えられるが1つの強みになることは間違いないだろう。

 

松木のビルドアップ関与

小泉・松木のIHセットであれば小泉が組み立て、松木が前というイメージを持っていたが、松木はCBからパスを受けに来てサイドにはたくなど、組み立てでの関与もけっこう多かった。CBの逃げ道となるシーンも何度か見られ、ボールスキルの面でも成長が見える。

 

GK前の防波堤になるエンリケ

森重の欠場が試合前の1つのトピックになった中、エンリケのパフォーマンスは素晴らしかった。元々“守備のツボ”を押さえられる選手であり、そのときの最善のプレーを瞬時に判断できる選手。特に前半で迎えたピンチを彼のクリアでしのいだシーンはかなり多く、難しい対応もいくつかあった中で難なくこなした。負傷明けながら、開幕から十分に働けるところを見せられたのは大きい。

 

 

まとめ

後半で完全に主導権を握り、2-0の勝利を収めたことは間違いなくポジティブな材料だ。ただ、考えなければいけないのは「ボールを愛するサッカー」を志しているという点。浦和戦も90分を通じてビルドアップからクリーンに前進できたと言えるシーンは少なく、個人的には「中盤での守備強度」と「バックラインの耐久力」が勝利へ導いた印象が強い。それらはもちろんあったほうがいいに決まっているが、「ボールを持ってゲームを支配できた」よりも印象が上回ってしまうことをどうとらえるか。そこが開幕戦の評価として焦点が当たる部分なのではないかと思う。