がちゃのメモ帳

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J1リーグ第32節 FC東京vs湘南ベルマーレ レビュー

 

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プレビューはこちら。

 

brgacha.hatenablog.com

 

 アウェイ8連戦を終え、味スタへ約3カ月ぶりの帰還。

 成績を見れば、9戦負けなし、かつ6連敗中ではあるが、明らかに目の奥に魂が宿ってきた湘南を迎えた一戦となる。

 

 

スタメン

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FC東京

前節から3カ所変更。

 

渡辺→岡崎

オ・ジェソク→小川

三田→大森

 

渡辺は前節・磐田戦で負傷し、メンバー入りはしたものの、スタメンを外れた。

小川はケガ明けのJ1復帰戦。

 

湘南

前節から2カ所変更。

大野→山根

指宿→山﨑

 

浮島監督就任からメンバーを固定しておらず、まだ見極めの途中、またはコンディションを重視した人選だろうか。

 

 

前半

 

血の気の多い湘南とフワッとした東京の保持

 前半開始からやはり目の色が違う湘南。前線の選手を中心にハードワークと人を捕まえる守備で、東京のビルドアップを壊しに来る。

特に湘南左サイドの山田と鈴木冬一は球際が非常に激しかった。単純にその2人がそのようなタイプだったとも考えられるが、東京右サイドのビルドアップがやや不安定なところを狙った上での激しさだったのかもしれない。

 
 

 序盤こそ2トップを狙って蹴っ飛ばすシーンが多かったものの、この日の東京はプレスを掛けられても比較的つなごうとする意識があった。

プレスを交わして裏抜け一本で勝負!をやりたかったのか、湘南のプレスvs東京ビルドアップという構図を作り上げた。

 

しかし、相手は湘南。

前節はビルドアップのうまいセレッソに対して、ボールを刈り取りまくるくらい強烈なプレスを持っているチームだ。

率直に言って、湘南対策のビルドアップが仕込まれていたとは思えず、どのように掻い潜りたいのか不透明なまま、後方で回すシーンがほとんどだったように見えた。

 

その結果として、ボールをつなぐ自体はできていたが、前を向いてパスを出せない。良い流れから裏へのボールは出てこず、湘南が困る展開にはならない。

 

プレスを回避してSBのところに時間ができても球離れが悪く、その間にWBに寄せきられてしまうシーンも目立った。

 

いつもであれば橋本や髙萩のところでなんとかしてしまうケースもあったが、橋本のコンディションがイマイチなこともあり、個人ではなんともならず。そうなるとチームとしてどうやりたいか、という意思共有の足りなさがうまくいかない原因に。

湘南を相手にボールをつなぐ選択自体は決して悪くないが、それを行うにあたって、ビルドアップや崩しにおける整理が甘いように感じた。

 

そのツケを払わされたのが失点シーンだろう。 

 

16分頃には永井が室屋に対して「もっと右奥のスペース(おそらくWBの裏)に出してくれ」と声かけをしていたとのリポートが入る。

 

前回対戦時(第2節)ではそのスペースを積極的に突いていた記憶だが、この試合ではなかなか出せなかった。それだけいまの東京にいまの湘南のプレスを外すのは難しかった。

 

 

なんとかこの問題を解決すべく、ディエゴが下りて中盤で起点を作ろう!作戦を試みるも、そこは湘南も織り込み済み。

主に山根を下りるFWの潰し役として専念させる。事前に役割をはっきりさせていたのか、かなり出足が良く、ディエゴに背負う状況を作らせずに前でカットする。

プレスを掻い潜れない、スペースにも出せない、引くFWにも預けられない、と八方塞がり状態に近かった。

 

 

生まれる隙間、奪えないボール

 

湘南の保持に対して、東京はそこまで激しいプレスをかけず、引いて守る展開が多かった。ここで起きた問題点としては2トップと中盤の距離が開きがちで、湘南のCH(齊藤と金子)へパスが通ったときに捕まえることができなかったこと。そこから大外で待つWBへの展開を許し、ラインを下げざるを得ない状況に。

 

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※イメージ

 

これは単純に東京CHの出足の悪さもあるだろうし、山崎にロングボールがかなり収まっていたので、そこを挟み込みたい→CHのポジションが後ろぎみになって前との距離が開く、という流れだった可能性もある。収まりが良い湘南1トップの山﨑に対して、空中戦の強い渡辺が不在だったことも響いたはず。

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※イメージ

 

また、WBに入る古林のポジショニングがイヤらしかった。

プレビューでも薄く触れたが、東京のSHとSBのどちらがマークにいくか微妙な位置で受ける。

これに対して序盤はSHの東がプレスバックのような形で対応していたが、寄せが間に合わずクロスをあげられてしまう。

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※イメージ

 

これをよしとしなかったのか、18分頃から東京が守り方を少し変えた。

 

DAZNの映像だと見切れ気味でややわかりづらいが、小川を古林にはっきりマークさせる代わりに高萩が小川がいた場所を埋めるような配置に。

 

これで古林からのクロス問題はひとまず解決したが、逆に異なる問題が生まれた。

高萩が元々いた場所をどう埋める?

という部分だ。

湘南は主にシャドウが東京CHを外に引っ張り出してから、空けたスペースに齊藤や金子を突っ込んでくるような攻撃を見せる。

 

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※イメージ

 

東京もエリア内ではファウルを気をつけながら、ゴールから遠ざける守備が(ある程度)できていたので、致命傷にはならなかったが、湘南の保持に対しても少し困っているようには見えた。

 

 

前半まとめ

 やや強引とも思える形でつなぐ選択をしたこともそうだが、それ以前に出足や球際で東京は湘南に負けていたと思う。

後方にスペースができていても、ボールホルダーにプレッシャーがかかっていれば問題ない、という守備の根本でもある部分を教えてくれるような湘南のプレスであった。

 

勢いを持って入ってきた湘南は先制すると前からのチェイシングを少し抑えて省エネモードになった。90分も続けられるはずもないプレスだったため、0-0で推移すればスタミナ切れを待てばいい展開にもなったかもしれないが、湘南がここで休める状況になったのも少し痛かったように思う。

 

 

追いかける展開でベンチにジャエルやナ・サンホがいない状況でどのように点を取りに行くか、という難しい課題を突きつけられて後半を迎える。

 

 

後半

 

後半が始まると東京が徐々に落ち着いてボールを持てるようになる。

東京ビルドアップも橋本と高萩のサポートの仕方を変えたような気もするが、これは湘南が省エネモードに切り替えていることや、時間がたつにつれて単純に走れなくなってきたことが大きく影響していると思う。

 

ボールホルダーにプレッシャーが掛かりにくくなったことで、2トップが3バック脇に流れる形などで敵陣へ入れる回数は明らかに増えた。

 

ただし、敵陣に入ってからの攻撃はアイディアに乏しく、なにか偶発的な要素に任せている雰囲気が強かった。

それはこの試合に限ったことではなく、そもそも極力このような状況にならないように戦ってきたのが今年の東京だ。

 

長谷川監督もなにかを変えなければいけない、ということで大森を下げて三田を投入、疲労の色が見える永井に替えて田川を投入、フォーメーションも(おそらく)[4-3-1-2]の中盤ダイヤモンド型に変更。

明確な意図があるというよりも「なにかを変える」ための変更だったように思う。

 

湘南も選手交代を行う。おそらく60分が交代のメドになっている齊藤(前節も60分頃に交代)に替えて梅崎を入れる。加えて山﨑→指宿の交代を準備していたが、山根がプレーできなくなったことで急きょ大野を投入。

 

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※70分頃までの交代後

 

 

点を取るためにバランスを崩していたため仕方ない部分ではあるが、この変更によって中盤のスペースが生まれてカウンターを受けやすくなっていた。

点をとるべく、後ろは「なんとかしてくれ」状態で守る。

 

湘南は奪ったあとの出足で勝ってカウンターを成功させる方針で追加点を狙う。

それなりの数のカウンターを食らっていたが、文字通り最終局面で「なんとか」していた。相手の決定力に助けられた部分もある。

 

 

最終盤は空中戦のターゲットがいない中でのパワープレー。理屈とか知らん!という攻撃でなかなか厳しい状況だったが、アディショナルタイムに森重のスーパーなミドルがゴールに突き刺さる。

最後の最後で「なにか」を起こして勝点1を拾った。

 

 

FC東京1-1湘南

 

まとめ・感想

東京の出来だけを考えたら個人的今季ワーストゲーム。

それは単純に湘南が良かった側面もあるが、方針が決まらないまま相手の土俵に立ってしまい、食われて失点。

選手やピッチのコンディション不良も重なってしまった影響は大きかったが、このチーム状態で湘南に挑むのは難しかった。

 

前半は特に

ボールが持てない→じゃあ相手に持たせよう!→相手に持たせたら苦しい→やっぱがんばってボールを持たないと!→ショートカウンターを食らって失点

というサイクルに陥った。うまくいかないなりに0-0で進めて相手のガス欠を待つ展開に持ち込めればよかったが、前半はそれにも失敗。ベンチには大きな変化をつけられる選手もいない。この非常に困難な状況からなんとか同点まで持ち込んだ。

 

順位の優位性を考えたら手痛い引き分けだが、チームのメンタルを立て直す、次の一戦に向けて、という点において森重の同点弾はあまりにも大きなものだった。

 

この1ポイントを生かすも殺すも次の2戦次第。次の浦和戦は引き分けではいけない。途中出場で“本気の気持ち”を見せたユ・インスのような姿勢を多くの選手に見せてほしいところだ。