J1リーグ第32節 FC東京vs湘南ベルマーレ プレビュー
参考試合:29節・横浜FM戦、30節・G大阪戦、31節・C大阪戦
前節のスタメン
湘南
浮島監督が就任してから3試合を戦ったが、スタメンは流動的な状態。
バックライン以外のメンバーが固まっていないことに加え、絶対的な存在として出場を続けていた山根や山﨑、秋元をベンチに座らせたり、大胆な選手起用もしている。
主に出場機会を増やしているのは指宿、山田直輝、鈴木冬一あたりか。
前節で齊藤×金子のボランチコンビが復活。杉岡がベンチ外だった。
2試合連続で同じスタメン。前節・磐田戦でCB渡辺が負傷しており、代わりに岡崎が入ることも考えられる。
また、ケガで離脱していた小川がJ3で実戦復帰を果たしており、メンバー入りの可能性あり。
※便宜上、以下で使用する図にも渡辺がいる形で作成する。
湘南簡易分析
ボール保持
ビルドアップ
基本は後ろの[3-2]で回す。
そこにWBが下りてきたり、シャドウの山田が関わることで前進を試みるパターンが多い。
チームスタイル的に、おそらくあまり保持に力を入れていないこともあって、仕組みを作るというよりも個人での剥がしなどでチャンスを作っていくように見える。
主に技術のある山田が絡んだときにはチャンスにつながりやすい印象だ。
中央を固める東京に対しては、3バックの左右からの前進や、CB坂・CH齊藤からの展開で大外のWBを使う形を狙ってくるかもしれない。
※イメージ
これに対しては、いつもどおりの対策ではあるが、SHが前に出てけん制することと、中央の選手にしっかりプレスを掛け切ることが重要になる。
※イメージ
東京SHが2トップ脇を塞ぐように前に出ると、湘南WBは下がらないと受けられなくなる。それはゴールから遠ざかることを意味し、脅威を薄れさせることができる。
※イメージ
坂と齊藤からは大外への展開、金子は個人の推進力で前進を試みてくる。前進の起点になりやすいこの3人は2トップと2CHでしっかりと消したい。
4人で3人を捕まえると書くと簡単そうに見えるが、実際には2トップは湘南の左右CB、CHは背後のシャドウへのパスコースも意識しなければならないので、全体の意思疎通が必要になる。
チャンスメイク
1トップに入る指宿や山﨑の落としからのシュートや、WB縦突破からのクロスが主な攻撃パターン。
中央の攻撃で言えば、間を通すスルーパスというよりも、深さを取った選手に当ててからシュートするイメージがある。そのため、シャドウの選手のみでなく、CHも押し上げてきてミドルシュートを狙うことが多い。
クロス攻撃は右なら古林、左なら杉岡(鈴木冬一)が強引に仕掛けたり、ワンツーなどで縦に抜け出したところからスピードのある低弾道気味のクロスを入れる。
中に強烈なターゲットがいるわけではないため、誰が入ってきても合わせられるようなボールを入れている印象。
ボール非保持
湘南と言えばメインはこちら。
相手にボールを持たせたところから、猛烈にプレッシャーをかけていく。
対4バックであれば、1トップ2シャドウで相手の4バックを監視しながら、ボールに向かって圧力を掛ける。
それに連動して、WBとCHも前に出てきて人を捕まえるというのが主な仕組みだ。
※イメージ
2CHの齊藤と金子がかなりハードに当たれて広範囲をカバーできる選手であるため、ここが奪いどころになりやすい。
このときにポイントになりそうなのがWBの立ち位置の取り方。
3バックのチームはボール非保持時になるとどうしても両WBを下げた5バックになりがちだ。低い位置からのアプローチだと相手SBまでの距離が遠く、余裕を与えてしまう可能性がある。
ということで、湘南はプレスのスイッチが入ると比較的早めにWBが前に出てくるのだが、東京からするとここは狙い目。WBが前に出てくるということは、その背後にはスペースが生まれるということ。サイドに流れて起点を作るのがうまい永井やディエゴの活動エリアが広がることを意味する。加えて間にポジションを取るSHに対しては誰がマークするの?という問いを突きつけることもできそうだ。
※イメージ
後ろで無理にボールをつなごうとすると、湘南のパワーを持ったプレスに押し潰される可能性が高いため、このようにサイドに起点を作りながら敵陣でプレーすることが東京にとっては最善策な気がする。
もし、WBがあまり出てこないのであればSBのところから前進できる可能性が高まる。それか湘南のシャドウかCHが過負荷となり、段々と攻撃に力を残せなくなるだろう。
どの手を打ってきても、適切な選択ができれば優位に進めていくことはできると考えられる。
サイドで起点を作るに当たって、重要になりそうな選手の1人が三田だ。
最近では右サイドで相手を背負いながらキープするシーンを何度か見ている。彼がサイドで起点になることができれば、2トップをゴール前の仕事に専念させることが可能になり、余計なポジション移動も最低限に減らせそう。
また、ペナルティーエリア付近での連係も少しずつ良くなってきている印象で、ボールと逆サイドのWBの戻りが遅れがちな湘南を相手に、左で作って右(三田)で仕留めるような崩しができたら最高である。
展望
現在6連敗中、9戦勝ちなしとクラブのゴタゴタを引きずって絶不調に陥っている湘南だが、今節に関してはそれを考えないほうがいいかもしれない。
元の状態に戻ったとまでは言えないかもしれないが、浮島監督が就任してから29節・横浜FM戦、31節・C大阪戦と明らかに選手の目に魂が入り込んだ雰囲気がある。
しかし、まだ生き返りきってはいないなと感じさせたのが30節・G大阪戦。このゲームではセットプレーの流れから早々に失点を許すと、そこからはどこかフワッとした空気が流れたまま進み、結果は0-3の敗北。
早い時間帯でプランから外れた事態を招くと張りつめた糸は切れてしまう印象だ。
神戸戦や大分戦のように前半で固め取りができれば東京の土俵で勝負できることに加え、相手のメンタルをへし折ることもできる。
内容どうこうよりもどれだけ早く先制点を奪えるか、そして相手の心を折れるか、ということが重要なポイントになるだろう。
今年はスタメンが固定されがちな東京だが、このゲームでは負傷の渡辺に代わって岡崎、負傷明けの小川がスタメンに名を連ねる可能性もある。
タイミングよく、対戦相手は彼らの特徴が生かせそうな湘南。ここにきてまた戦術的な上積みが加えられれば優勝に向けて一歩近づくことは間違いなしだ。