J1リーグ第30節 大分トリニータvsFC東京 プレビュー
3試合勝ちなしから解き放たれた前節の神戸戦。
ひさびさにスカッとする白星(後半は少し苦しかったけど)だっただけに気持ちも高まったが、これで振り出しに戻っただけ。
久しぶりの連勝がかかる今節・大分戦の予習を行う。
参考試合:27節・磐田戦、28節・名古屋戦、29節・浦和戦
前節のスタメン
大分
前節・浦和戦は契約上の理由により出場不可のため、オナイウと伊藤がメンバー外。
それ以前の試合でも1トップ2シャドウの人選はやや流動的だ。
逆にそれ以外のポジションは固まっている印象で、右CBに岩田が復帰したことでやりたいサッカーができるメンバーは組めていると思う。
※小林成豪は天皇杯での負傷により、欠場の見込み。
https://www.oita-trinita.co.jp/news/20191055165/
※ティティパンは天皇杯・準々決勝で復帰している。
https://www.jleague.jp/match/emperor/2019/102301/live/#live
前節はアルトゥール・シルバを今季初スタメンで起用し、永井は日本代表の遠征帰りで疲労も考慮してか、サブスタートとなった。
いつもの[4-4-2]ではなく、[4-2-3-1]を試したり、試合途中では岡崎を入れて5バックに変更したり、内田をSHで入れたりと、システムも起用選手の幅も広がってきた印象だ。
(※以降で使用する図は便宜上、東京は[4-4-2]だと仮定して作成する。また、小林成は欠場濃厚だが、図ではそのまま使用する。)
大分簡易分析
ボール保持
ビルドアップ
今季は開幕からスタイルを貫いていて、前回対戦時からもやり方はそれほど変わっていないように見えた。
基本フォーメーションは[3-4-2-1]だが、状況に応じて2CHの1枚が下りて4バックのように振る舞うのがパターン化されている。
主にビルドアップに参加するのは3CBと2CHにGKを加えた6人。
GKを除いた5人にかなり偏った数値が出る。パス本数ランキングも大体この5人が上位を独占する。
※イメージ
最近では島川・小林裕紀が2CHでコンビを組むことが多い(前節は小林裕×長谷川)が、そのときの配置としては小林裕が下りて、島川が中盤に残る分担の仕方になっている。
また、前述したようにGK高木も積極的にビルドアップに参加する。
以前よりも高木から一発でDFラインの裏をとる"タッチダウンパス"は減った印象を受けたが、それでもミドルレンジの浮き玉パスの精度やプレスを掛けられたときの落ち着きはさすがである。
大分のビルドアップは前に急がない。
相手を前におびき寄せて、背後にスペースを作り出すことがおそらく一番の狙い。
それゆえに、相手が前に出てこないと最終ラインで永遠と回しているような場面も度々見る。
この少し特殊なボール保持を行う理由としては、自分たちがボールを持つことで相手が攻撃する時間を減らすこと、相手が焦れて前に出てくればスペースを作り出すことができ、より大きなチャンスを演出できる、という2点を大きなメリットと考えているから、というように感じた。
ハイプレスをかけるなら
あえて、ハイプレスを仕掛けるのであれば、このような追い方になるかなと考える。
※イメージ
こうなったときにまず対応を迷うのが、GK高木と中盤に1人残るCH(図では長谷川)のところ。
2トップがGKまで追うのであれば、元々のマーク対象だった選手はどう見るか、中盤のCHにはどっちがつくのか(髙萩なのか橋本なのか)という部分をはっきりしなければならない。
※イメージ
また、このときに大分の2シャドウをどうするの?という新たな問題が生まれる。
後方からの配球もできる高木へのプレッシャーが甘くなればプレスは一気にひっくり返される。
※イメージ
特に小塚はこの位置で受けるタイミングが非常にうまいため、ハイプレス時には要注意人物となるだろう。
GKまでプレスに行くなら、落ち着いてつながせないほどの圧力をかけなければならない。行くなら行く、行かないなら行かない、をはっきりしないと簡単にゴール前まで迫られる。
まとめ
◇GKも含めた大分のビルドアップは安定しており、前に急がない。
◇プレスに行くなら、まずGK高木と中盤に残るCHをどう見るか。
→GKまで行ったあとのシャドウのケアはどうするか。
◇フリーの選手につながれないよう、ボールホルダーに強い圧力を掛けよう!
チャンスメイク
元々ストロングであった岩田×松本の右サイドと夏に加入した田中達也の突破が主な要注意パターンとなりそう。
前回対戦時にも右サイドの攻撃については触れたが、大分は岩田がいるのといないのとでは右での攻撃が大きく変わる。
岩田が負傷離脱していた時期(磐田戦と名古屋戦)に代役として右CBに入ったのは岡野。守備面では良さを見せていた部分もあったが、攻撃においてはどこか物足りなさが感じられた。
前節に岩田が復帰すると、サイドを縦に貫いてくるような攻撃が追加されていたように見える。
※前回プレビュー時の画像
今夏に藤本が抜けてからは裏抜け一発の攻撃がかなり減った。
藤本の駆け引きや決定力は、ほかの選手で代わりをこなせないからだろう。
これによって、サイドからクロスというチャンスメイクパターンが増えた。
両サイドにストロングがあることと、オナイウが優秀なターゲットとなりえるからだと思われる。
オナイウの空中戦と三平の飛び込みなどの機会を作らせたくないので、まずは岩田×松本の右サイドと、おそらく左に入る田中達也のところを塞いで、クロスの出所を潰したい。
まとめ
◇岩田×松本の右サイドの連係、左サイドにいる田中の単騎突破には注意。
◇サイドからのクロスを上げられないように対応しよう!
ボール非保持
[5-2-3]または[5-4-1]で構えるのがベース。
極力5バックを後ろから動かさないようにする松本山雅とは異なり、シャドウは中央よりのパスコースを遮断し、大外は両WBが積極的に前に出てきて迎え撃つ守り方をする。そのため、[3-4-3]という表記のほうがしっくりくるかもしれない。
東京の[4-4-2]と噛み合わせると下図のような感じ。
※イメージ
シャドウがCBの前進もけん制しながら、SBに出たら極力マークにいけるような位置。
シャドウがSBに行けなさそうであれば、WBが積極的に前に出てくるといった印象だ。
このときに狙いたいのは3バックの脇。WBが前に出てくると、ここは空きやすくなる。
磐田戦では主にルキアンにここのスペースへ走られ、キープを許したことで起点を作られていた。
東京で考えると、この役割に適任なのはディエゴだろう。ゴールがある中央から遠ざかってしまうデメリットはあるものの、大分を自陣に追いやるという部分で必要な動きにはなるはずだ。
※イメージ
また、3バックのカバーエリアが広いという特性上、2CHが最終ラインへカバーに入る意識が高い。
これ自体は悪いことではないが、意識の高さゆえにDFラインの前のエリア、いわゆる"バイタルエリア"が空きやすかったりする。
名古屋戦の失点も、2CHが後ろに吸収気味になったことで場所が空き、赤崎に使われたのが1つの原因となっている。
永井が大分の最終ラインを後ろに引っ張り、バイタルエリアに誰かが飛び込む形を作れると面白そうだ。
個人的に期待したいのは橋本。前回対戦時にもヘディングでのゴールを決めているように、元々持ち合わせる得点への嗅覚を見せつけてほしいところだ。
※イメージ
まとめ
◇3バック脇を取って押し込もう!
◇DFライン前のバイタルエリアを使おう!
展望
大分は点の出入りが少ないチームで、ロースコアになることが予想される。安易な失点で先制を許すと、複数得点を取るには大きなエネルギーがかかる。
東京の必勝パターンである、前半の固め取りでリードできれば大分相手にはかなり戦いやすくなるはずだ。
そのためにはいくらかリスクを取る必要がある。先制のために取るリスクで一番わかりやすいのはハイプレスだろう。
前回対戦時のように、敵陣で奪ってそのままゴールに迫るシーンを多く作りたい。
ただ、ハイプレスをしかけるのであれば、DFラインの裏にできる広大なスペースの管理を怠ってはならない。
そこを狙うのが得意だった藤本が抜けているとはいえ、両翼にスピードのあるアタッカーがいる。
特に田中は独力でゴールまで迫れるため、スタートで出遅れないことが重要だ。
今回も“攻撃的な守備”を仕掛けるのか否か。そこが開始直後の注目ポイントとなるだろう。
また、試合終盤のトランジション(攻守の切り替え)も見どころ。
両チームとも、切り替えやスイッチを入れる部分に強みを持つ。
終盤に体力がなくなった中で、どちらが気合で走り仕切れるか、というメンタリティー部分も重要なポイントになる。
大分は磐田戦では足が止まったところから失点し、浦和戦ではラストプレーで走り切り決勝点を奪った。
彼らのメンタル状況も気になるところだ。
22節・仙台戦以来となる連勝を目指す試合が幕を開ける。
おまけ
大分戦のプレビューラジオを獣さん(https://twitter.com/nemuranaimati)とやったので、こちらもご視聴頂けたら!
FC東京、大分戦プレビュー!PCからキャス配信中 - https://t.co/ske4cjhzHZ
— がちゃ (@sumihiga) October 31, 2019