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J1リーグ第33節 FC東京vs浦和レッズ レビュー

 

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プレビューはこちら。

 

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首位横浜FMを勝点差1で追いかける2位のFC東京

最終節に直接対決を控えており、自力で優勝できる権利を残している。その大一番を迎える前に、まずは鬼門の浦和戦に挑んだ。

  

スタメン

 

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FC東京

前節からの変更は2か所。

岡崎→渡辺

大森→三田

渡辺はケガ明けでスタメン復帰。右SHは戦術的な理由だと思われる。 

 

 

浦和

ACLのメンバーから大幅に変更した。

橋岡→森脇

関根→山中

ファブリシオマルティノス

長澤→柏木

柏木以外はACLではベンチ外だった選手。

ターンオーバーとはいえ、J1でスタメンを張っていてもおかしくない名前がそろう。

 

前半

 

意図しない東京の土俵勝負

浦和はボールを持ちたそうなメンバーにしてきたこともあり、いつものようにブロックを敷く守備ではなく、それなりに前から追いかけてボールを奪いにきた。

東京はつなぐところと長いボールで逃げるところを判断しながら、空いたスペースを使って2トップを生かしていく。

 

湘南戦と異なり、永井がスペースで受けられる回数が明らかに増えたが、これには理由がいくつかあると考えられる。

①浦和のWBが攻守に高い位置を取ることと②CHが前に上がって中盤を留守にすること、そして③裏をケアするために最終ラインが下がることだ。

なぜこれらによって2トップが生きるかと言うと、中盤が空くことで浦和の3バックが東京の2トップの対応だけに集中できないからである。

空洞と化した中盤には元々中央でのプレーを得意とするSHの三田や東が入っていた。彼らがボールホルダーとなることで2トップはゴール前に入るという本来の仕事に専念できる。加えて浦和の3バックがボールホルダーとスペースに走る2トップの両方へ意識を向けなければならないとなれば、難しい対応になるのは必然だろう。

 

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※イメージ

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※イメージ

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※イメージ

 

 

逃がしどころは整えど、精度が伴わない浦和の組み立て

浦和は3バックでビルドアップを行い、東京はいつもの対3バック用のプレスを掛けていく。SHが左右のCBに出ていき、SBがそれに連動してWBを捕まえに行く形だ。

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※イメージ

 

それに対して浦和はWBのところを軸にして、東京のプレスを回避しようとする。

右の森脇と左の山中ともに、ボールを受けたときに内側へコントロールすることで縦方向から迫る東京SBの圧力を逃がしていた。東京はSBが前に出るとCHがそのカバーに入る傾向がある。浦和のWBが内側に入ってくると、そこに迎撃できる選手が不在になりがちで、捕まえることが難しい。

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※イメージ

 

この回避方法によって東京は、球際で奪ってショートカウンター!という展開にはできなかったが、浦和はここからの精度があまり伴わずにスピードが上がらない、またはロストするシーンが目立つ。そして前述したように、浦和はボールを失ったあとの配置が整っていないことが多かった。それゆえにこちらが意図したタイミングで奪えなくとも、スムーズな流れでカウンターに移行することができていた。

 
 
決定機は幾度となく訪れたが、西川のセーブや鈴木大輔カバーリングによってゴールネットを揺らすことはできない。
チャンスを生かせないでいると、しっぺ返しを食らうのがサッカーのオカルト要素だ。
そのオカルトがこの試合でも適用され、圧倒的に東京ペースで進みながらも先制点を奪ったのは浦和。CKから用意してきたであろう形から山中に得意のミドルシュートを許し、こぼれ球をマルティノスに押し込まれた。
 
得点に絡んだ2人が、東京と優勝を争っている横浜FM出身というのがなんとも皮肉な失点。

 

そして前半終了前にディエゴが接触プレーで負傷し、交代。予期せぬタイミングでエースが離脱してしまった。

 

前半まとめ

 

 プランどおりと言うよりも、浦和がスペースを空けてくれたことで東京が得意な展開に持ち込めた印象。とはいえ、隙があれば徹底的に2トップでぶん殴り続けられる現実は、今季の東京が勝点を積み上げられている理由でもあるだろう。

 

ただし、前述したようにいくら決定機を作り出しても得点が生まれなければ意味はない。サッカーとは決定機を作るスポーツではなく、得点を取るスポーツなのである。その意味では0-1のスコアを見たときに、「前半うまくいったのは浦和」という結論になってしまった。

 

決定力不足を突きつけられた上で、ディエゴを欠く東京が残り45分で3ポイントを狙って戦う。

 

 

後半

 

後半はディエゴがいなくなったぶん、FWはサイドのスペースに斜めに出ていく動きが増える。その動きで前半から鈴木をちぎって猛威を振るっていた永井だが、後半の早い段階で負傷。ナ・サンホとの交代を余儀なくされた。

2トップを両方とも負傷で欠き、1点を追いかけなければならない頭の痛い展開に。

 


その後、スタミナの低下を感じながらも、中盤が必死に走ることでボールを回収し、敵陣でのプレー時間も作るが、後方のマネジメントはどうしても難しくなっていた。

攻→守の切り替えでも、東京は中盤にCH1枚しか残らない、[4-1]のような形になっていた。浦和はシャドウに入った柏木とマルティノス、もしくは下りてきた興梠が手薄な東京CHの脇で受けて、カウンターを狙う。ヒヤリとするシーンもあったが、少ない人数でうまく守れてはいた。



今季の得点源を2人も欠いた東京だったが、セットプレーから田川の今季初ゴールで追いつく。

やはり困ったときはセットプレー。リーグ後半は、キッカー三田の存在が本当に大きい。



ここから一気に流れに乗りたい東京だったが、前半から飛ばした影響もあり、圧力は強められず。残留を確定させたい浦和も他会場の経過も見た上でか、最終盤は絶対勝利!というよりも最低でも1ポイントを優先した戦いにシフトしたように見えた。


ゴール前までは迫っていたが、そこからの1点は遠く、無情にも笛の音が響いて試合終了。


FC東京1-1浦和


まとめ・感想

前半で圧力を強めて畳み掛ける「東京スタイル」を出すことはできたが、先制点は目の前にあるように見えて、手の届かない位置に置かれてるようだった。前半は結果的に「東京スタイル」を出しただけで「必勝パターン」には持ち込めなかった。

この試合で3ポイントをゲットできなかった要因を挙げるならば、そこが一番になるだろう。



横浜FMが勝利を収めたことで勝点差は3、得失点差は7まで開いた。逆転優勝のためには、最終節の直接対決で4点差をつけての勝利が必要。

非常に難しいシチュエーションではあるが、可能性は残っている。

湘南戦、浦和戦とホーム2連戦で引き分けが続いたのが痛恨なのは間違いないが、この可能性を残したのは森重のゴールであり、田川のゴールでもある。



浦和戦では追いついたものの、最後まで「必要な1点」を取るだけの決定力を見つけることはできなかった。だが、最終節は少なくとも4得点が必要になる。


横浜の地で「決定力」を見つけ、ホームでの2引き分けを価値のあるものに変える戦いへ挑む。

J1リーグ第33節 FC東京vs浦和レッズ プレビュー

 

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参考試合:31節・広島戦、30節・鹿島戦、32節・川崎戦(日程調整があったため、節の順序がバラバラ)

 

 

 

前節のスタメン

 

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FC東京 

前節は渡辺のケガで岡崎、小川がケガ明け、戦術的な理由などで大森がスタメンに入った。

前節はベンチだった渡辺が今節からスタメンに復帰の可能性も。

 

浦和

図は直近のACL時のメンバー。おそらくこのセットが現段階での1stチョイス。

リーグ戦では過密日程やACLのためのターンオーバーをしていたため、メンバーが非常に流動的だった。

 

 

浦和簡易分析

 

ボール保持

 

ビルドアップ

フォーメーションから配置は大きく動かさず、後ろは[3-2]で組むことが基本。

3バックはワイドに大きく開き、場合によっては中央にCHが下りてくることもある。

 

後ろで細かくつなぐ傾向もあるが、前進パターンとしては

左右に開くCBからWBへのパス

CBからダイレクトに裏

ロングボールのこぼれを拾う

の3つがメインだと思われる。

 

ショートパスでのつなぎに関してはCH青木への依存度が高いのかなといった印象で、前々節に対戦した磐田のようにスペースの作り方や使い方が共有されている雰囲気はあまりないように感じた。

前節・湘南戦のように中盤で間延びする状況が起きなければ、ショートパス主体のつなぎから脅威を与えられることは少ないのではないかと思う。

 

 

前述したCBからダイレクトに裏への展開だが、[4-4-2]で守るFC東京に対しての攻撃として予想されるのは以下の2つ。

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※イメージ

槙野からダイレクトでサイド奥のスペースを狙うパス。これは数年前から続けている形だ。

左WBを一度低い位置に下ろすことで背後にスペースを作り、パスが出てくるタイミングに合わせて走り込む。慣れ親しんだ形だからなのか、なかなか高確率で成功していた。

これに対応するのは室屋だが、走力に定評のある彼ならそこまで問題はないと思う。この形があるということが頭に入っていれば、多少出足で負けても致命的なダメージを負うことはないだろう。

 

 

 

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※イメージ

次に右CB(の位置)から出てくる裏へのボール。

先ほどの槙野のパターンと同じように、WBでSBを引き出してからその裏を狙う。

 

シャドウが走ったり、トップが走ったりするが、これが最もうまいのは興梠だろう。マークが甘ければ抜け出されるし、タイトについていけば、中盤のスペースが空く。空いたところにタイミングよく入ってくる抜け目ない彼の動きには注意したい。

本来はシャドウにこの仕事をしてほしそうだが、武藤を欠いているいま、適役がいない雰囲気だ。強いて言えばマルティノスあたりができなくもなさそうだが、おそらく彼の序列はあまり高くない。武藤の不在はかゆいところに手が届かない状況にさせているように感じた。

 

 

チャンスメークパターンとしては、WBからのクロスと裏抜けから手数をかけない攻撃。

興梠との駆け引き勝負になると、どのDFでもかなり厳しいので、危ないクロスを入れさせないことに力を入れたい。

 

 

ボール非保持

基本戦術:[5-4-1]で自陣撤退で迎撃

 

前節の湘南もフォーメーション自体は同じだったが、湘南の場合はどちらかと言うと[5-2-3]、もしくは[3-4-3]の配置に近い。対して浦和はビハインドにならなければ基本的に[5-4-1]でブロックをしっかり敷いてくることがほとんど。

おそらく東京ボールになれば落ち着いて持てることが予想される。ただ、逆に考えると敵陣には人が多くいるため、ゴールに近づくのに多くのDFをどけていく必要がある。

 

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※浦和のブロック

 

東京がボールを持ったときに狙いたいのはシャドウのファブリシオ。当日、どのようなメンバーを組むかは不明だが、出てきたら彼のところをつっついていきたい。

 

浦和はそこまでプレスをかけてこないが、浦和のシャドウは相手のCBとSBを主に見る。

ファブリシオはここのマークが非常に曖昧で、どっちにつくのか、またはどのタイミングで出ていくのかがはっきりしないことが多い。

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自由なファブリシオの動きに周りが合わせる必要が出てくると、ほかの選手の頭脳的な負荷が高まる。そうなるとマークやスペース管理のミスも生まれやすくなってくる。

 

また、前からプレスをかけたときもファブリシオだけ明らかに寄せが遅く、ハマらないケースがある。そこを起点にプレスを空転させることができれば、一気に2トップがスペースを享受した攻撃が可能となるはずだ。

ただし、自由がゆえに意図せず攻め残りのような形になったりもするので、カウンターには注意したいところ。

 

 

 

また、[5-4-1]でのセット時に狙いたいポイントは潰しに出てきたCBの背中。

5バックのチームにはよく見られる傾向だが、左右のCBが下りる選手を捕まえに出ていくとWBと中央のCBとの距離が開き、ここの間を縫われてエリア内に進入されてピンチを招く。

 

ここは室屋に狙わせたい。大外に張ったところから斜めに裏へ走り、ボールを引き出す。彼も得意としてる動きだ。

出し手は橋本、高萩、大森(三田)など多くいるはずなので、誰かしらをフリーにするようなボール回しができたらいい。

 

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※イメージ


展望

ゲーム自体で言えば、おそらく湘南戦のようにバッチバチのバトルにはならないことが予想される。スコアが動かなくても焦れずに勝負どころを待つ必要があるだろう。

ボール保持が得意とは言えない東京が、人数をかけて自陣を守る浦和を崩すのはなかなか難しいと考えられる。前節の森重のゴラッソとまでは言わないが、セットプレーだったり、相手のミスだったり、一個の隙を突かないとこじ開けられないかもしれない。

とにかく点が取れればいい!という、いつもどおりの精神で臨みたい。

 

 

 

 

リーグも最終盤となり、残り2試合。相手はリーグ戦の成績で見れば、今季絶不調とも言える浦和。

いくら東京が浦和を苦手にしているとはいえ、ここは確実に勝たなければならない。勝てないのであれば優勝するに相応しくないチームと言われても仕方ないだろう。

 

優勝へのドラマは揃っている。

これが美しい初優勝のエピソードとなるか、苦い記憶となるかは自分たち次第。

"勝負弱い東京"から卒業できるか試されるときだ。

 

 

 

 

 

 

J1リーグ第32節 FC東京vs湘南ベルマーレ レビュー

 

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プレビューはこちら。

 

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 アウェイ8連戦を終え、味スタへ約3カ月ぶりの帰還。

 成績を見れば、9戦負けなし、かつ6連敗中ではあるが、明らかに目の奥に魂が宿ってきた湘南を迎えた一戦となる。

 

 

スタメン

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FC東京

前節から3カ所変更。

 

渡辺→岡崎

オ・ジェソク→小川

三田→大森

 

渡辺は前節・磐田戦で負傷し、メンバー入りはしたものの、スタメンを外れた。

小川はケガ明けのJ1復帰戦。

 

湘南

前節から2カ所変更。

大野→山根

指宿→山﨑

 

浮島監督就任からメンバーを固定しておらず、まだ見極めの途中、またはコンディションを重視した人選だろうか。

 

 

前半

 

血の気の多い湘南とフワッとした東京の保持

 前半開始からやはり目の色が違う湘南。前線の選手を中心にハードワークと人を捕まえる守備で、東京のビルドアップを壊しに来る。

特に湘南左サイドの山田と鈴木冬一は球際が非常に激しかった。単純にその2人がそのようなタイプだったとも考えられるが、東京右サイドのビルドアップがやや不安定なところを狙った上での激しさだったのかもしれない。

 
 

 序盤こそ2トップを狙って蹴っ飛ばすシーンが多かったものの、この日の東京はプレスを掛けられても比較的つなごうとする意識があった。

プレスを交わして裏抜け一本で勝負!をやりたかったのか、湘南のプレスvs東京ビルドアップという構図を作り上げた。

 

しかし、相手は湘南。

前節はビルドアップのうまいセレッソに対して、ボールを刈り取りまくるくらい強烈なプレスを持っているチームだ。

率直に言って、湘南対策のビルドアップが仕込まれていたとは思えず、どのように掻い潜りたいのか不透明なまま、後方で回すシーンがほとんどだったように見えた。

 

その結果として、ボールをつなぐ自体はできていたが、前を向いてパスを出せない。良い流れから裏へのボールは出てこず、湘南が困る展開にはならない。

 

プレスを回避してSBのところに時間ができても球離れが悪く、その間にWBに寄せきられてしまうシーンも目立った。

 

いつもであれば橋本や髙萩のところでなんとかしてしまうケースもあったが、橋本のコンディションがイマイチなこともあり、個人ではなんともならず。そうなるとチームとしてどうやりたいか、という意思共有の足りなさがうまくいかない原因に。

湘南を相手にボールをつなぐ選択自体は決して悪くないが、それを行うにあたって、ビルドアップや崩しにおける整理が甘いように感じた。

 

そのツケを払わされたのが失点シーンだろう。 

 

16分頃には永井が室屋に対して「もっと右奥のスペース(おそらくWBの裏)に出してくれ」と声かけをしていたとのリポートが入る。

 

前回対戦時(第2節)ではそのスペースを積極的に突いていた記憶だが、この試合ではなかなか出せなかった。それだけいまの東京にいまの湘南のプレスを外すのは難しかった。

 

 

なんとかこの問題を解決すべく、ディエゴが下りて中盤で起点を作ろう!作戦を試みるも、そこは湘南も織り込み済み。

主に山根を下りるFWの潰し役として専念させる。事前に役割をはっきりさせていたのか、かなり出足が良く、ディエゴに背負う状況を作らせずに前でカットする。

プレスを掻い潜れない、スペースにも出せない、引くFWにも預けられない、と八方塞がり状態に近かった。

 

 

生まれる隙間、奪えないボール

 

湘南の保持に対して、東京はそこまで激しいプレスをかけず、引いて守る展開が多かった。ここで起きた問題点としては2トップと中盤の距離が開きがちで、湘南のCH(齊藤と金子)へパスが通ったときに捕まえることができなかったこと。そこから大外で待つWBへの展開を許し、ラインを下げざるを得ない状況に。

 

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※イメージ

 

これは単純に東京CHの出足の悪さもあるだろうし、山崎にロングボールがかなり収まっていたので、そこを挟み込みたい→CHのポジションが後ろぎみになって前との距離が開く、という流れだった可能性もある。収まりが良い湘南1トップの山﨑に対して、空中戦の強い渡辺が不在だったことも響いたはず。

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※イメージ

 

また、WBに入る古林のポジショニングがイヤらしかった。

プレビューでも薄く触れたが、東京のSHとSBのどちらがマークにいくか微妙な位置で受ける。

これに対して序盤はSHの東がプレスバックのような形で対応していたが、寄せが間に合わずクロスをあげられてしまう。

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※イメージ

 

これをよしとしなかったのか、18分頃から東京が守り方を少し変えた。

 

DAZNの映像だと見切れ気味でややわかりづらいが、小川を古林にはっきりマークさせる代わりに高萩が小川がいた場所を埋めるような配置に。

 

これで古林からのクロス問題はひとまず解決したが、逆に異なる問題が生まれた。

高萩が元々いた場所をどう埋める?

という部分だ。

湘南は主にシャドウが東京CHを外に引っ張り出してから、空けたスペースに齊藤や金子を突っ込んでくるような攻撃を見せる。

 

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※イメージ

 

東京もエリア内ではファウルを気をつけながら、ゴールから遠ざける守備が(ある程度)できていたので、致命傷にはならなかったが、湘南の保持に対しても少し困っているようには見えた。

 

 

前半まとめ

 やや強引とも思える形でつなぐ選択をしたこともそうだが、それ以前に出足や球際で東京は湘南に負けていたと思う。

後方にスペースができていても、ボールホルダーにプレッシャーがかかっていれば問題ない、という守備の根本でもある部分を教えてくれるような湘南のプレスであった。

 

勢いを持って入ってきた湘南は先制すると前からのチェイシングを少し抑えて省エネモードになった。90分も続けられるはずもないプレスだったため、0-0で推移すればスタミナ切れを待てばいい展開にもなったかもしれないが、湘南がここで休める状況になったのも少し痛かったように思う。

 

 

追いかける展開でベンチにジャエルやナ・サンホがいない状況でどのように点を取りに行くか、という難しい課題を突きつけられて後半を迎える。

 

 

後半

 

後半が始まると東京が徐々に落ち着いてボールを持てるようになる。

東京ビルドアップも橋本と高萩のサポートの仕方を変えたような気もするが、これは湘南が省エネモードに切り替えていることや、時間がたつにつれて単純に走れなくなってきたことが大きく影響していると思う。

 

ボールホルダーにプレッシャーが掛かりにくくなったことで、2トップが3バック脇に流れる形などで敵陣へ入れる回数は明らかに増えた。

 

ただし、敵陣に入ってからの攻撃はアイディアに乏しく、なにか偶発的な要素に任せている雰囲気が強かった。

それはこの試合に限ったことではなく、そもそも極力このような状況にならないように戦ってきたのが今年の東京だ。

 

長谷川監督もなにかを変えなければいけない、ということで大森を下げて三田を投入、疲労の色が見える永井に替えて田川を投入、フォーメーションも(おそらく)[4-3-1-2]の中盤ダイヤモンド型に変更。

明確な意図があるというよりも「なにかを変える」ための変更だったように思う。

 

湘南も選手交代を行う。おそらく60分が交代のメドになっている齊藤(前節も60分頃に交代)に替えて梅崎を入れる。加えて山﨑→指宿の交代を準備していたが、山根がプレーできなくなったことで急きょ大野を投入。

 

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※70分頃までの交代後

 

 

点を取るためにバランスを崩していたため仕方ない部分ではあるが、この変更によって中盤のスペースが生まれてカウンターを受けやすくなっていた。

点をとるべく、後ろは「なんとかしてくれ」状態で守る。

 

湘南は奪ったあとの出足で勝ってカウンターを成功させる方針で追加点を狙う。

それなりの数のカウンターを食らっていたが、文字通り最終局面で「なんとか」していた。相手の決定力に助けられた部分もある。

 

 

最終盤は空中戦のターゲットがいない中でのパワープレー。理屈とか知らん!という攻撃でなかなか厳しい状況だったが、アディショナルタイムに森重のスーパーなミドルがゴールに突き刺さる。

最後の最後で「なにか」を起こして勝点1を拾った。

 

 

FC東京1-1湘南

 

まとめ・感想

東京の出来だけを考えたら個人的今季ワーストゲーム。

それは単純に湘南が良かった側面もあるが、方針が決まらないまま相手の土俵に立ってしまい、食われて失点。

選手やピッチのコンディション不良も重なってしまった影響は大きかったが、このチーム状態で湘南に挑むのは難しかった。

 

前半は特に

ボールが持てない→じゃあ相手に持たせよう!→相手に持たせたら苦しい→やっぱがんばってボールを持たないと!→ショートカウンターを食らって失点

というサイクルに陥った。うまくいかないなりに0-0で進めて相手のガス欠を待つ展開に持ち込めればよかったが、前半はそれにも失敗。ベンチには大きな変化をつけられる選手もいない。この非常に困難な状況からなんとか同点まで持ち込んだ。

 

順位の優位性を考えたら手痛い引き分けだが、チームのメンタルを立て直す、次の一戦に向けて、という点において森重の同点弾はあまりにも大きなものだった。

 

この1ポイントを生かすも殺すも次の2戦次第。次の浦和戦は引き分けではいけない。途中出場で“本気の気持ち”を見せたユ・インスのような姿勢を多くの選手に見せてほしいところだ。

J1リーグ第32節 FC東京vs湘南ベルマーレ プレビュー

 

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参考試合:29節・横浜FM戦、30節・G大阪戦、31節・C大阪

 

 

 

前節のスタメン

 

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湘南

浮島監督が就任してから3試合を戦ったが、スタメンは流動的な状態。

バックライン以外のメンバーが固まっていないことに加え、絶対的な存在として出場を続けていた山根や山﨑、秋元をベンチに座らせたり、大胆な選手起用もしている。

主に出場機会を増やしているのは指宿、山田直輝、鈴木冬一あたりか。

 

前節で齊藤×金子のボランチコンビが復活。杉岡がベンチ外だった。

 

FC東京

 2試合連続で同じスタメン。前節・磐田戦でCB渡辺が負傷しており、代わりに岡崎が入ることも考えられる。

また、ケガで離脱していた小川がJ3で実戦復帰を果たしており、メンバー入りの可能性あり。

 

 

※便宜上、以下で使用する図にも渡辺がいる形で作成する。

 

湘南簡易分析

 

ボール保持

 

ビルドアップ

 基本は後ろの[3-2]で回す。

そこにWBが下りてきたり、シャドウの山田が関わることで前進を試みるパターンが多い。

 

チームスタイル的に、おそらくあまり保持に力を入れていないこともあって、仕組みを作るというよりも個人での剥がしなどでチャンスを作っていくように見える。

主に技術のある山田が絡んだときにはチャンスにつながりやすい印象だ。

 

 

中央を固める東京に対しては、3バックの左右からの前進や、CB坂・CH齊藤からの展開で大外のWBを使う形を狙ってくるかもしれない。

 

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※イメージ

これに対しては、いつもどおりの対策ではあるが、SHが前に出てけん制することと、中央の選手にしっかりプレスを掛け切ることが重要になる。

 

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※イメージ

 

東京SHが2トップ脇を塞ぐように前に出ると、湘南WBは下がらないと受けられなくなる。それはゴールから遠ざかることを意味し、脅威を薄れさせることができる。

 

 

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※イメージ

 

坂と齊藤からは大外への展開、金子は個人の推進力で前進を試みてくる。前進の起点になりやすいこの3人は2トップと2CHでしっかりと消したい。

4人で3人を捕まえると書くと簡単そうに見えるが、実際には2トップは湘南の左右CB、CHは背後のシャドウへのパスコースも意識しなければならないので、全体の意思疎通が必要になる。

 


チャンスメイク

 1トップに入る指宿や山﨑の落としからのシュートや、WB縦突破からのクロスが主な攻撃パターン。

 

中央の攻撃で言えば、間を通すスルーパスというよりも、深さを取った選手に当ててからシュートするイメージがある。そのため、シャドウの選手のみでなく、CHも押し上げてきてミドルシュートを狙うことが多い。

 

クロス攻撃は右なら古林、左なら杉岡(鈴木冬一)が強引に仕掛けたり、ワンツーなどで縦に抜け出したところからスピードのある低弾道気味のクロスを入れる。

中に強烈なターゲットがいるわけではないため、誰が入ってきても合わせられるようなボールを入れている印象。

 

 

ボール非保持

湘南と言えばメインはこちら。

 

相手にボールを持たせたところから、猛烈にプレッシャーをかけていく。

 

対4バックであれば、1トップ2シャドウで相手の4バックを監視しながら、ボールに向かって圧力を掛ける。

それに連動して、WBとCHも前に出てきて人を捕まえるというのが主な仕組みだ。

 

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※イメージ

2CHの齊藤と金子がかなりハードに当たれて広範囲をカバーできる選手であるため、ここが奪いどころになりやすい。

 

 

このときにポイントになりそうなのがWBの立ち位置の取り方。

3バックのチームはボール非保持時になるとどうしても両WBを下げた5バックになりがちだ。低い位置からのアプローチだと相手SBまでの距離が遠く、余裕を与えてしまう可能性がある。

ということで、湘南はプレスのスイッチが入ると比較的早めにWBが前に出てくるのだが、東京からするとここは狙い目。WBが前に出てくるということは、その背後にはスペースが生まれるということ。サイドに流れて起点を作るのがうまい永井やディエゴの活動エリアが広がることを意味する。加えて間にポジションを取るSHに対しては誰がマークするの?という問いを突きつけることもできそうだ。

 

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※イメージ

 

後ろで無理にボールをつなごうとすると、湘南のパワーを持ったプレスに押し潰される可能性が高いため、このようにサイドに起点を作りながら敵陣でプレーすることが東京にとっては最善策な気がする。

 

もし、WBがあまり出てこないのであればSBのところから前進できる可能性が高まる。それか湘南のシャドウかCHが過負荷となり、段々と攻撃に力を残せなくなるだろう。

どの手を打ってきても、適切な選択ができれば優位に進めていくことはできると考えられる。

 

 

サイドで起点を作るに当たって、重要になりそうな選手の1人が三田だ。

最近では右サイドで相手を背負いながらキープするシーンを何度か見ている。彼がサイドで起点になることができれば、2トップをゴール前の仕事に専念させることが可能になり、余計なポジション移動も最低限に減らせそう。

 

また、ペナルティーエリア付近での連係も少しずつ良くなってきている印象で、ボールと逆サイドのWBの戻りが遅れがちな湘南を相手に、左で作って右(三田)で仕留めるような崩しができたら最高である。

 

 

 

展望

 

現在6連敗中、9戦勝ちなしとクラブのゴタゴタを引きずって絶不調に陥っている湘南だが、今節に関してはそれを考えないほうがいいかもしれない。

元の状態に戻ったとまでは言えないかもしれないが、浮島監督が就任してから29節・横浜FM戦、31節・C大阪戦と明らかに選手の目に魂が入り込んだ雰囲気がある。

 

しかし、まだ生き返りきってはいないなと感じさせたのが30節・G大阪戦。このゲームではセットプレーの流れから早々に失点を許すと、そこからはどこかフワッとした空気が流れたまま進み、結果は0-3の敗北。

早い時間帯でプランから外れた事態を招くと張りつめた糸は切れてしまう印象だ。

 

 

神戸戦や大分戦のように前半で固め取りができれば東京の土俵で勝負できることに加え、相手のメンタルをへし折ることもできる。

内容どうこうよりもどれだけ早く先制点を奪えるか、そして相手の心を折れるか、ということが重要なポイントになるだろう。

 

 


今年はスタメンが固定されがちな東京だが、このゲームでは負傷の渡辺に代わって岡崎、負傷明けの小川がスタメンに名を連ねる可能性もある。

タイミングよく、対戦相手は彼らの特徴が生かせそうな湘南。ここにきてまた戦術的な上積みが加えられれば優勝に向けて一歩近づくことは間違いなしだ。

 

J1リーグ第31節 ジュビロ磐田vsFC東京 レビュー

 

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プレビューはこちら。

 

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スタメン

 

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磐田

前節から変更なし。

大南がメンバー復帰したが、スタメンではなくサブに入る。

 

 

FC東京

前節から変更なし。

 

 

 

前半

 

前節、「静岡ダービー」に勝利したことでメンタルはかなり上向き傾向であることが考えられる磐田。この試合もホームの雰囲気を背に受けてハイテンションな立ち上がりを見せる。

 

主に中盤のではかなり激しいバトルが繰り広げられ、序盤は磐田の勢いに押され気味になる東京。自陣で守る時間が長くなるものの、ゴール前の一番危険なエリアにはしっかりと人を配置し、まともにシュートは打たせない。

 
外からクロス攻め
磐田は2トップのルキアンとアダイウトンの強さを生かし、中央で起点を作ってからサイドへ送り、クロスを入れる攻撃が中心。特に右の松本を大外に張らせて、そこへ届けてから仕掛ける流れが序盤は多く見られた。
 
 
 
磐田のボール保持は、2トップのチームによく見せていたCHを一枚下ろす3バック化がメイン。主に上原が下りることが多かった。
 

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前節・大分戦と異なって、東京が積極的にプレスを掛けに行かなかったこともあり、最終ラインで落ち着いて持つことができていた。
また、東京の2トップがカウンターに備えて自陣での守備にほとんど戻らないことから東京[4-4]ブロックの前は空きやすい状況になっていた。磐田はここから展開するサイド攻撃で攻める。
 

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※イメージ

CHからのパス精度が伴ってくるとSBとの1対1を強いられることになる。

そして、このようにSBとの1対1を作られると、カットインをされたときにクロスを防ぐことが難しく、中央で跳ね返さなければならないシーンが増えた。

 

 

また、藤川が室屋の前に立ち、ピン止めをすることで大外の宮崎に時間を与えるというような工夫もあった。

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※イメージ

 

プレビューでも触れたが、磐田の左サイドは流動的にポジションを移動させる。

1人が動くとそれに連動するように誰かがスペースに入っていく動きで、マークを混乱させる狙いだ。しかし、東京は動く選手について行きすぎず、適宜マークを渡していくことでポジションを大きくずらされることなく対応できていたように見えた。

 

 

東京は内側を固める守備であるため、フリーを作られて大外に展開されるのはなかなか苦しい。しかし、2トップをあえて前に残していたのは、そのリスクを承知の上で点を取るためだろう。

例えクロスを入れられたとしても、よほどの精度で入ってこなければ跳ね返せるという計算で、奪ってからのカウンターにパワーを残すことに比重を置いたのだと思われる。

 

実際に奪ってからしっかりつなぐ意識はいつもより強かった印象で、ロスト後すぐに取り返しに来る磐田のプレスを掻い潜れるかという攻防をしていたと思う。

そこについては中盤の巧みなパス回しや2トップの理不尽な個人技でチャンスに結びつけられていたシーンも多く見られた。

 

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※イメージ

 

東京攻撃の手札

東京の攻め手は上記で触れた自陣からのロングカウンターに加えて、永井のシンプルな裏抜けと相手ビルドアップでボールを奪取したショートカウンター、それとマイナス方向へのクロスだ。

 

 

裏抜け

永井の裏抜けについては毎度のことだが、2CHにプレッシャーがかかっていないのに最終ラインが高いまま、というシーンが何度かあり、橋本と髙萩から裏のスペースを狙うパスが何度か出ていた。

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※イメージ

 

磐田は極力コンパクトな陣形を敷こうとしていたと思うが、2トップと後ろの連係が合わないと、このようにCHをフリーにしたままラインが高い、という状況ができていた。

 

前プレ

基本的には低い位置で構えていた東京だが、しっかりと陣形が整っていればプレスを掛けていく場面もあった。

 

2トップでけん制するように最終ラインを追いかけ、2トップで追いきれないほうのサイドはSHが前に出ていく。それに連動してSBが大外の選手、髙萩がアンカー位置に残る山本を捕まえに行く。

28:50頃のシーンでは、山本のパスミスを誘発し、ディエゴの決定機までつなげた。

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※イメージ

 

マイナスクロス

磐田のCHは攻→守での潰しに行く役割や、2トップの背後に入る選手に出ていくこと等、前に出ていく仕事が多かった。

そのため、縦に速い攻撃を仕掛けられると物理的に戻り切るのが難しい状況になりやすい。東京はそこをつくようにマイナスのクロスを入れる。

 

14分の永井のシュート(シュートブロックで防がれた)や上記で触れたプレス成功からのディエゴのシュート(八田のセーブ)はいずれもマイナスクロスから生まれていた。

 

 

 

両者ともにチャンス・決定機があったが、決め手には欠けてスコアレスで折り返し。

また、25分頃に東京のCB渡辺が負傷し、岡崎に交代している。

 

前半まとめ

磐田の圧力に押されながらも、一定のリスクを許容して得点への道筋を太くする東京。チャンスはあっただけに、先制できればいつもの「東京のサッカー」に持ち込めたはずだが、そんなに毎試合うまくはいかない。

 

一進一退といった攻防で、どちらに点が入ってもおかしくなかったが、ネットが揺れることはなかった。

磐田がゴール前で何かを起こすこと、東京がカウンターを沈めきることのどちらが早いかの勝負といった印象だった。

 

 

また、磐田は途中でアダイウトン右、藤川トップ、松本左、という配置転換をしたが、これの理由はよくわからなかった。

なんとなくこうじゃないか?とわかる人はぜひ教えてほしい。

 

後半

 

大きく変わった感じはないが、球際のハードさが少し薄れたかな?と感じた。

 

動くスコアと攻めるしかない磐田

試合を動かしたのは東京。

前半から見られた室屋の斜めの抜け出しで裏を取り、戻ってきた藤川が足をかけてしまいPK。これをディエゴが落ち着いて決めて先制に成功する。

 

3ポイントが必要な磐田は再びエンジンをかけ直して、東京ゴール前にボールを入れていく。

 

58分 藤川→大久保

66分 松本→荒木

72分 山本→ムサエフ

 

3ポイントのためには2点取らなければならない、ということで早い時間に交代カードを使い切る。

 

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※交代後

 

いつものことではあるが、東京はリードを奪うと無理して追わず、自陣で守る時間が増える。

 

整理されたビルドアップとアダイウトンからの放り込み

60分頃からはSBを起点としたビルドアップを東京が止められなかった。

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※ビルドアップイメージ①

 

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※ビルドアップイメージ②

 

このような動かし方などで前進を許し、サイドへ展開。そして左サイドに回ったアダイウトンの仕掛けから、内巻きのクロスを入れるプレーが増えた。

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※イメージ

 

室屋は一人では縦と右足側を切ることはさすがに難しく、三田は立ち位置がやや曖昧でアダイウトンからの配球を抑えられない。

 

 

ということで東京は73分、三田のところに「安心と安定、一家に一台」の大森を入れる。

 

この交代がばっちりハマって、ここからアダイウトンの右足を切ることができるようになった。

それでも強引にクロスを上げきれるアダイウトンだが、許したのは利き足ではない左足からだったり、やや無理めな体勢からのクロスだけで危険な場所を大森の投入で1つ抑えることに成功。

 

ちなみに荒木を入れたことで右サイドにもガンガン仕掛ける選手が入ったわけだが、こちらは縦突破だけ切っておけばokという対応で問題なかったのか、ジェソクが右足からのクロスを警戒した対応で十分だった。

 

 

積み上げの差が出た終盤

終盤に入ると磐田の足が徐々に止まり始める。前半からハイテンションで入っていたから、こうなるのも無理はない。

こうなると東京のカウンターを警告覚悟のファウルでしか止められなくなり、磐田は連続した攻撃をなかなか打てなくなっていった。

また、前線の顔ぶれを入れ替えたことも重なって、前からのプレスがうまくハマらなくなり、東京が落ち着いてボールを持てことで時計の針を進める。

 

「灰になるまで走る」という恐ろしい言葉が生まれるほどに、2018年からハードワークスタイルを貫いてきた東京。終盤にきて積み上げたものの差が大きく出たと言っていいだろう。

 

 

ゴール前に人数をかけて何とか事故を起こそうとする磐田だったが、東京も意地で踏ん張り、試合終了のホイッスルが響いた。

 

磐田0-1FC東京

 

 

まとめ・感想

 

チャン・ヒョンスが移籍によっていなくなったあとから、穴を感じさせない活躍を見せていたCB渡辺が負傷退場というアクシデントはあったが、これまた岡崎が不在を感じさせないプレーを見せた。

大森も途中出場でしっかりと自分の必要性を感じさせる活躍で、田川もストロングである走力の部分でやれることはやってくれた。決定機を外してしまったが、その得点は次以降の試合で助けてくれるゴールとなることを期待したい。

 

 

決定機を決めきれず、前半でリードを奪えないというあまりイメージの良くない展開でゲームは進んでいったもののPK一発で3ポイントを獲得。内容が悪くても勝ち切るという、強いチームのそれを見せられているのではないかと思う。

 

ここにきて3連勝と、チームは「強い東京」を思い出した。

あと3試合も「強い東京」のまま突っ走りたい。

 

J1リーグ第31節 ジュビロ磐田vsFC東京 プレビュー

 

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参考試合:29節・鳥栖戦、30節・清水戦(途中まで)

 

 

 

前節のスタメン

 

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磐田

監督交代後から[4-4-2]を基本フォーメーションとして使用している。

前節はアダイウトンが久しぶりにスタメン。

また、フベロ体制になってから藤田、宮崎、山本の経験値の多い3人と若手の藤川が出場機会を増やしている。

 

FC東京

前節はいつもの[4-4-2]に戻した。

大森が復帰してきており、右SHのスタメンを再び三田と争う形になりそう。

 

磐田簡易分析

 

ボール保持

 

ビルドアップ

 

CHを1枚下ろして3バック化し、数的優位を作り出す形がメイン。

鳥栖戦は今野が下りる役割を担うことがほとんどだったが、今野が不在だった清水戦では主に上原が行っていた。


東京は2トップのシステムなので、おそらくこの形は継続してくると思われる。

 

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中盤に残るCH、もしくは最後方(CBか下りたCH)からの配球がメイン。中央突破というよりは長めのボールかサイドへの散らしが多いように感じた。


基本的にはサイドからの前進が多い。

少し左に開くCBの藤田が持ち運んで大外のSB、もしくは横のCHに預けて進もうとするパターンをよく見る。



東京としては、下りるCHに対してどう対応するかがポイントではないかと思う。

2トップに気合いで3人みてもらうのか、SHを前に出して左右に開くCBを睨むのか。

または、磐田の両CBが配球に長けるタイプではないので、2トップ脇からの前進を放っておくという選択肢もある。

あえてCBに運ばせ、後ろにスペースを作り出すことができるのであれば、悪くない作戦だろう。

 


SBが大外で高めの位置を取ることもあり、特に攻→守の切り替えではSBとCBの間が空きやすい。

そこを2トップが狙うのも面白いかもしれない。


 

チャンスメイク

 

前節は左サイドでのコンビネーションが度々見られた。


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2トップのアダイウトンがいくらかサイドに流れてくる傾向があり、彼がいなくなったところに藤川や宮崎が走り込む。

息が合う3人なのか、ここの連係は比較的スムーズに行えている印象なので、注意する場所の1つになりそうだ。



東京は右サイドの三田(大森)、室屋、橋本(高萩)、渡辺の4人でマークの受け渡しやスペースの管理をうまく行い、抜け出されないようにしたい。



また、磐田の要注意人物は間違いなくルキアン。

磐田の攻撃は彼の強さを生かしたキープや落としから成り立っていると言っても過言ではないだろう。


アバウトなロングボールを入れられること自体はなかなか防げないので、単純に競り合いに負けないことや、こぼれ球の回収が大事になる。


おそらくルキアンとのバトルが増えるのは森重。

ここは最重要マッチアップになることが予想される。

 

ここを抑えることができれば、磐田はサイドからの攻撃に頼るしかなくなると考えられる。

そうすれば、跳ね返しには強い東京のペースに持ち込める可能性が高まるだろう。


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ボール非保持

 

[4-4-2]ベースで陣形を組む。


鳥栖戦を見た感じだと、積極的に追いかけてくるのは2トップくらいといった印象で、SHやCHはそこまでついてこない気がする。


そのため、2トップと[4-4]ブロックの間のスペースが空きやすいように見えた。

 

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2トップ相手だと橋本を1列下ろしたビルドアップが多い東京だが、この試合においては、この間の場所に残って受けられるかがボール保持でのポイントになるかもしれない。


そうすると数的同数でのプレスを受けるであろうCBの落ち着いた配球が必要になる。

森重は問題なさそうだが、ビルドアップ時にミスが多い渡辺にはやや不安が残る。


それを踏まえて「やっぱり橋本を下ろしてリスクを回避! 」ということも大いに考えられるが、逆にここのスキルが上がってくればチームとしてももうひとつ上のステップへ上がれそうだ。


 

展望

 

 磐田には名波前監督のDNAがまだ残っているのか、試合の最終盤にかけてくるエネルギーがすごい。

うまく守っていても止められないようなプレーが不意に出たりするので、それまでに2点以上のリードを作っておくのが理想。



ビルドアップはポジションを移動させる可変型を用いる磐田。相手に持たせて配置を崩させ、奪ったところを素早く攻めるカウンターでゴールを決めたい。



また、5バックではなくなったことにより、ボール保持からも崩せる可能性はいくらかありそう。

最近良くなりつつある、三田が中央で絡むコンビネーションにも期待だ。 

 

 

 

J1リーグ第30節 大分トリニータvsFC東京 レビュー

 

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プレビューはこちら。

 

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スタメン

 

 

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大分は

長谷川→島川
負傷した小林成→三平

の2カ所を変更。

 


東京は前節・神戸戦で初スタメンだったシルバのところに永井を入れて元の[4-4-2]に戻す。
また、直近2試合でベンチ外となっていた大森がメンバーに復帰した。

 

 

前半

 

そうだ、プレス行こう!

前回対戦時には超ハイプレスとも言える戦い方を選んだ東京だったが、この日も比較的高い位置から追っていた。
単純に大分の不安定さもあったように感じたが、結果として相手のビルドアップを妨害することは成功していた。

ボール保持についても、細かくつながず、最終ラインから2トップ、もしくは裏のスペースへ簡単に蹴りこんでいた。
こちらが持つ時間を作る、というよりも相手に持たせた状態から奪ってショートカウンター!がファーストプランだったのかもしれない。
 

元々ボール保持がストロングではない東京としては「難しいことなんかしないで、前の2人になんとかしてもらおーぜー」がメイン。

これが結果的に早い時間の先制につながった。

 

髙萩から出たスペースへ送るパスに対して、GK高木が飛び出すが触れず。スピードを上げていた永井があっさりかっさらって、GKのいないゴールに流し込む。

その後もCKから圧倒的な跳躍力を持つCB渡辺が競り勝って追加点。開始7分で2-0に。

前期で猛威を振るった「前半の固め取り」という東京の必勝パターンへ早々に持ち込むことができた。 

 

 

どうぞどうぞ

 

ある種、偶発的な部分で先制した東京。どんな形であれ、リードさえしてしまえばこちらの土俵に持ち込める。

ということで、ボールは大分に持ってもらうことに。

この試合では「ボールを持つこと」よりも「ボールが敵陣にあること」を重要視していたのではないかと感じた。

 

 

ボールを持たせたら高めの位置からプレスをかける。

まずは[4-4-2]でしっかり構えたところから待ち受けるスタンスだが、バックパスが出ると一気にスイッチを入れる。

大分ボール保持の特性上、バックパスはあっさり出てくるので、スイッチは入れやすい状況が整っていたかもしれない。

 

 

2得点が入ったあとの守備を簡単に説明する。

 

 

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※プレスイメージ

 

まず2トップが大分ビルドアップ隊[4-1]の[1]の部分にあたるアンカーを監視。[4]同士の横パスが出たらCBの場所に入る選手へプレスをかける。

このとき、2トップのもう1人はアンカーをマーク。

あとはあらかじめ決まっているであろうマーク対象にアタックしていく。

 

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マーク対象

2トップ→鈴木、小林裕、島川

SH→左右のCB

SB→WB

CH→下りるシャドウ

 

こうまとめると分かりやすいが、2トップだけ2人で相手3人を見る守備になっている。

つまるところ、2トップがプレスのコース取りでアンカーを消す守備ができるかどうかが重要なポイントになる。

このポイントをしっかり押さえられたからこそ、(得点後の)序盤の主導権を握れたと言える。

 

 

このハードな守備をずっと続けることは難しく、30分辺りから基準を少し変える。

この変更は大分がビルドアップを少し修正したことも1つの理由かもしれない。

 

 

まず、大分のほうから。

CHが1枚下りる[4-1]ビルドアップから初期配置に近い[3-2](気味の)ビルドアップに微調整。

これによって東京2トップが背中側で監視しなければならない選手が2人になった。

このビルドアップに対して、同じ守り方をするとCHのどちらか1枚を捕まえきれないシーンが増えそう。

ということで、永井がCHの1人にべったりくっつき、ディエゴに最前線の守備を任せる。

もう一人のCHは橋本が前に出て捕まえにいくことが多かった。

 

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東京も機を見てプレスには行くが、永井をバックラインから遠ざけた大分は徐々に落ち着いた前進ができるようになった。

ただし、東京もそこはある程度許容していた気もする。

 

 

守り方を変えた東京にとって嫌な存在になったのが左シャドウの小塚。

彼がSBとCHの間辺りに顔を出すことでフリーになる。東京は構造上、そこを捕まえることが難しくなっていた。これによって、大分は小塚を軸にして敵陣でのプレー時間が増える。

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とはいっても、東京はCBをゴール前から動かさない守備ができていたので、ミスが起こらなければ問題ない状態。

 

大分に得点を許すことなく、ゲームを折り返した。

 

 

前半まとめ

 2試合連続で早い時間帯での先制に加え、固め取りにも成功。

出来すぎ感は否めないが、「FC東京2019ver」を表すような前半の流れとなっている。

 

本来であれば自陣に相手を引き込みたい大分に対して、ハイプレスを行うことはある意味愚行と受け取られてもおかしくない。しかし東京は「パスをつながせないほどのプレスを掛ければ問題ない」という精神で押し切った。

この作戦を選ぶ勇気もそうだが、それを実行できる選手たちが揃っていることが大きかっただろう。

 

 

 

後半

 

 後半の入りも大きな変化は感じない。

最低でも2得点を奪わなければ勝点を得られない大分は、前に出るしかない状況だ。

 

東京は極力前半と同じように高めの位置から追いかける姿勢は見せるが、サッカーという競技は90分間ある。

ハイプレスを90分保つことは不可能であり、徐々に「前進は許すが、ゴール前(や自陣)は固める」守備に移行していく。

 

展開としては29節・神戸戦と似たような流れ。


途中からはハイプレスをやめる。

2トップはCHの監視、SHは中央を埋めながらサイドのサポートという役割が主になる。


相手3バックへのプレッシャーがないことで簡単に(特に岩田からの)前進を許す。最も危険な中央を固めていることにより、サイドからのクロスはある程度許容する陣形となり、放り込みを跳ね返す構図となる。

 

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ここからSBが前に出ると、その背後にシャドウが出ていく。ここは東京のCHがカバー。

 

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そうすると中央のスペースが空く。どこかに空くスペースが出てきてしまうため、大分はその「どこかにできたスペース」を使う攻撃を目指す。

 

ただ、大分戦に関しては"何かを起こせそうな選手"や"一発がある選手"が少なかったこともあり、放り込みが大きな驚異にはならなかった。

 

大分としては敵陣でボールを保持することには困らないため、"なにかを起こす"ために必要な選手を入れていく。

 

オナイウ

伊佐

 

この試合ではベンチスタートとなっていた、FW色の強い2人が投入される。

 

 

相変わらずゴール前を固める東京は浅い位置からのクロスを止めることはなかなかできない。

ただし、ゴール前にはスペースもないし、強い人を配置してるから大丈夫!ということで跳ね返し続ける(事故りそうなシーンも多かったけど)。

 

 

自陣に引きこもりながらカウンター一発で息の根を止める作戦だっただろうが、トドメはさせず。

東があれを決めてれば終わってたぞ!

 

と、完璧とは言えないものの、東京の試合運びに持ち込んで完封勝利。

 

 

 

まとめ・感想

 仙台戦以来となる連勝、そしてクリーンシートでの白星となった。

 

上位3チームがいずれも勝ったため、勝点差の変動はなかったが、勝ち癖を取り戻すことが重要だ。

 



"健太東京のあるべき姿"に戻りつつあるいま、やるべきことはこの状態でシーズンを走りきること。

あの日の強い東京を思い出したい。