J1リーグ第28節 サガン鳥栖vsFC東京 プレビュー
がちゃです。
アウェイ8連戦も前節・松本戦で折り返し。巻き返しの後半4試合に入っていく。
参考試合は26節・G大阪戦と27節・浦和戦の2試合。
前節のスタメン
2トップに流動的なポジショニングをする選手を置き、サイドで起点を作りながらワイドの選手もゴール前で絡んでくるシステム。
基本フォーメーションは[4-4-2]を用いるが、試合途中でシステム変更を行うことも。
シーズン開始からメンバーは固定化。
今節も右SH以外は同じ人選だと思われる。
鳥栖簡易分析
ボール保持
ビルドアップ
2CBと2CHの4人を中心にしたボックスビルドアップがベース。そこにSBがサポートに入りながらパスを回す。
SBが高い位置まで上がるときには、SHは内側へポジションを移す。ただし、これは(左)SBが三丸か金井かという選手起用によって差が出る部分ではある。
※鳥栖ボール保持配置イメージ
★サイドで起点づくり
基本的には簡単に蹴っ飛ばさず、後方からつないでいくが、前方のスペースを効率的に使えそうであればロングボールも入れていく。2トップが相手SB裏に流れて、起点を作るのは金崎の得意な形。
※イメージ
★中距離砲台の高丘
相手のプレスが強く、前方へのパスが難しい場合にはバックパスをためらわず、GKの高丘をビルドアップに組み込む。
GK高丘には足元の技術があり、少しプレスが来たくらいでは慌てない。そしてキックの質も高く、安易に前から追いかけるとミドルレンジの浮き球パスをフリーになった中盤や大外に届けてくる非常に厄介な仕様。
※イメージ
GK高丘を使ってくるビルドアップは厄介だが、CB2人のビルドアップ能力はそこまで高くないように思うので、そこを慌てさせるような守り方をしたい。
チャンスメイクパターン
★両サイドを封鎖せよ!
鳥栖の中で最も強烈なのが、両サイドに位置するアタッカーだ。
前節・浦和戦は金森が右SHに起用されたが、これまで右アン・ヨンウ、左クエンカのドリブラーが両翼を務めることが多かった。
このドリブラー2人は対面のDF1枚くらいであれば何事もなく突破してくる。彼らのカットインからのクロスやシュートによって少ない人数の攻撃でも完結できる構造だ。
ここに対しては複数人で対応してシャットアウトしたい。使用システムこそ違うが、広島戦の両WBのように徹底した対応が理想。
※広島戦時の守備対応イメージ
★潤滑油の小野に注意!
一部前述したが、2トップがサイドに流れて起点を作ったところから、SHが内側でフィニッシャーになるパターンも使う。2トップとSHが近い距離でのスイッチを駆使して、マーカーを剥がしシュートまで、という形は何度か見られた。
特に小野は前線の潤滑油的存在になっており、彼がいると各所の連係がうまく取れている印象だ。
小野がスタメンかどうかは微妙なところだが、彼は途中から入ってくるとチームの流れを変えられる選手なので注意したい。
ボール非保持
[4-4-2]ベース。
そこまで中央を狭めないので、フォーメーションこそ東京と同じだが、守り方は異なる。
★中盤の穴を狙え!
最終ラインはやや高めに設定。前から積極的に奪いに行くほどの守備は多くない印象だが、裏のスペースを使われないようにプレスを掛けていく。
まず、2トップが中央への縦パスを消す立ち位置を取りながら相手CBへ寄せていく。2トップの守備対象が相手CBへ移ると2トップ間で受けようとする相手選手へはCHが1枚前に出て対応。
セット時
↓
プレス時
CH出張後
CHが1枚前に出てきたときには、上図の中盤に生まれているスペースをうまく使えるかがポイントになりそう。
★CBをつり出せ!
全体的に選手の間がやや広め。その間を通されたときは後ろの選手が迎撃して捕まえる仕組み。
逆に言えば、CB等が自分のポジションを捨てて人を捕まえに来たところをワンタッチで外すことができれば、最終ラインには穴ができた状態となる。
↓
CBをつり出してから一つ横を経由してから裏抜け!という狙い。
ここまで簡単にはいかないだろうが、90分で1回でもこの形を作って決めきることができたら最高である。
また、中盤の選手に帰陣意識が高くないときが見られ、DFが一対一で競り勝てないとかなり後手を踏む印象がある。
27節・浦和戦の先制点はDFが空中戦の競り合いに連続で負けたことであっさり中央でフリーを作られていた。
★クエンカのところのトレードオフ
最後に今節で最も肝になるかもしれないポイント。
それはクエンカがいる鳥栖の左サイド。
クエンカは独力で何かを起こせるクオリティーのある選手。鳥栖としてはそのクエンカを極力攻撃に専念させたい。
というわけで、クエンカに対してはある一定基準で攻め残りを許容しているように見えた。
自陣深くまでは守備に戻らずポジティブトランジション(守→攻の切り替え)に備える。
この攻め残りによって、鳥栖左サイドの守備はSBの個人守備と左CHのカバー能力に依存しがちになる。そのかわり、奪ってしまえばクエンカが高い位置に置いた状態で攻撃をスタートできるため、カウンターの威力は増す。
クエンカ自身は守備タスクが軽減されてることもあり、チームがボールを奪った際の切り替え速度はかなり速く、そこの意識は徹底されているようだった。
鳥栖がキン・ミョンヒ体制になってから、やや大味な試合が多くなっているのは、こういったリスクを受け入れて得点の確率を高めている影響があるのかもしれない。
東京はリスクを承知で得点を取りに行くのであれば、鳥栖の右サイドをつつくような攻撃をしていきたい。
クエンカが戻らない深さまで攻め込めば数的優位を作り出しやすい。
右SHを内側に入れることで大外の室屋を浮かせる。
個人の考えだと、この2つの形を作れたら面白いかなと思う。
展望
どちらも引き分けをよしとせず、欲しいのは勝点3。
27節・松本戦の後半にもあったが、お互いにリスクをかけて攻めに転じる時間ができることが予想される。
★鳥栖が押し切るか、東京がひっくり返すか
鳥栖は前線に速い選手を揃えているため、カウンターを打てるだけのパワーはある。しかしながら、メンバーの編成を見ると攻撃を受け続けるには少し強度が足りない人選なのかなとも思う。
そういう面もあり、鳥栖がボールを握りたがる展開を予想する。
そうなると非保持型の東京としては好都合にも思えるが、鳥栖の保持パワーもなかなかなので、どっちが先に仕留められるかという試合になるかもしれない。
★序盤勝負に持ち込む
また、ここ数試合の鳥栖は前半に崩れて、後半に立て直す(勢いづかせる)傾向。
これは立ち上がりが不安定という反面、流れを変える手段を持っているとも捉えることができる。
スタメンは当日にならないと分からないが、鳥栖には小野・豊田という戦術的にもメンタル的にも流れを大きく変えることができる選手がいる影響があるだろう。
対して、東京のここ数試合を見ると、残念ながら途中から入ってきた選手が流れを変えているとは言いづらく、終盤での1点勝負になると分が悪いかもしれない。
東京としては立ち上がりが不安定な鳥栖を前半で刺し切って、後半は試合を殺しながらチャンスをうかがうような展開が理想だろう。
★最後はメンタル!
鳥栖のホーム直近2試合は後半にかなり勢いづく戦いを見せている。
戦術もあるだろうが、おそらくホームの雰囲気が後押ししている部分も大きいのではないかと思う。
終盤になって雰囲気にのみ込まれないようにメンタルを制御することも、この試合における重要なテーマになるかもしれない。