J1リーグ第18節 FC東京vsガンバ大阪 レビュー
がちゃです。
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スタメン
現段階での噂だとヒョンス、田中ともに移籍の可能性があるとのこと。
補足情報
この日は一日中雨が降っており、試合中も多量の降雨があった。
ピッチは水浸しで、前半のガンバ陣内右サイドには水たまりができていた。
前半
開始から数分はお互いに中盤でのバトルを中心に奪ったら縦に速く、という攻撃がメインで進む。
東京のプレス
開始3分のシーンで東京のプレスの狙いの一角がなんとなく現れたように思う。
まずは両者の噛み合わせを確認。
ガンバ3-1-4-2でのビルドアップの対して東京は4-4-2での構え。
上図■の部分が形がかみ合わない4対4ができており、ここをどう合わせるかが最初のポイントとなる。
東京はSHを縦に押し出して左右のCBへプレスをかける。
※イメージ
対3バックには定番のパターンで後ろから強く当たれる小川のところで奪いたいという狙い。3分のシーンではファウルになってしまったが、全体がうまく連動できた良いシーンだった。
ガンバ先制
まだどちらがボールを持つかも定まらない中で5分にガンバが先制。
トランジションが連続した流れで裏へ抜けだされた後、4-4ブロックの前で持った矢島から大外にいた小野瀬への配球で小川が対応を誤って失点。最近の被決定機でよくある形からやられた。
迅速な帰陣からの流れで配置に戻り、そこからのプレスだったのでなかなか難しい状況だったが、あそこで矢島をフリーにしたら危険なボールは出てくる。そして小川は外へ意識が行ってしまい、より重要な内側を明け渡してしまう対応ミスだった。
~中央圧縮と大外アプローチのバランス~
この試合からは少し話がそれるが、最近は中央を圧縮しているのに外への意識が強くなりすぎて内を使われるシーンが個人的には気になっている。
こちらが中央を狭めていれば相手は当然大外を意識した攻撃が多くなる。大外へパスが出ると東京のSBやSHはそこへアプローチへ出ていくのだが、そこへ出ていくのが速すぎると逆を取られてハーフスペースへの縦パスを許す。
中央を使わせないために内を狭めて守っているのに、空いた大外へのアプローチに意識が行き過ぎて中央を使われるという本末転倒がいくらか起きているように思う。
※イメージ(この試合ではなかった)
小川本人の中でどのような考えがあったのかはわからないが、この失点シーンも先に外を意識して動き出した結果、小野瀬の内への動きに反応が間に合わず、重心が崩れたことでバランスを崩しているように見える。
※失点シーン
もちろん外への寄せが遅すぎるとそこからアーリークロスが出てきてしまうので、寄せに出ていくタイミングは非常にナーバスなものであるが、もっと強固な守備を築くのにはここの向上は一つのポイントになるのかもしれない。
先制する前からだが、ガンバは東京が持っても全然取りに来ず、東京がボールを持つ展開が続く。
対してガンバは矢島→ウィジョのラインをメインにダイレクトにゴールを目指す。
自由を得る2トップ脇
ガンバの非保持時基本システムは5-3-2。まずは配置を確認する。
5-3-2だとどうしてもサイドのスペースが空きがちになり、東京は外に開いたCB森重やSBがプレッシャーを受けにくい状態になる。ガンバも2トップが中央に立つだけでそこまで制限をかけてこないのでより自由に持つことができた。
東京はここを起点として攻撃の組み立てを行う。左サイドでは足元がうまい森重や小川を、右サイドでは髙萩を軸にガンバの陣形に揺さぶりをかける。
①小野瀬と高尾を外に引き出す
解説の戸田さんも触れていた部分で、右WBの小野瀬が前に出た後、高尾がサイドへスライドするが、三浦との距離が開きがちになっていてそこを通すパスが何度か出ていた。
②中村をつり出して背後を狙う
右サイドでは髙萩が絡むことやディエゴが下りることで人数をかけた崩しを狙った。
室屋と東で中村のマークを惑わせながら、3人目の動きでWBの背後を取りに行った。
③サンホvs高尾
小川のマークは主に小野瀬となっていたが、ベースポジションの都合上寄せがやや遅れる。その少しの時間があれば小川はパスを捌くことができるので、外のサンホへ素早く渡す。そしてそこから仕掛けるという流れ。
途中から配置よりも質で勝負しようというこのパターンを狙い始め、38分に永井の同点弾を生んだ。
サンホの個人技から生まれた得点だが、三浦は中央にステイすることから高尾を抜くことができればカバーするDFはいないという性質を狙えた効果なのではないかと思う。
この得点からガンバはテンションを上げてきた。
それによって中盤のトランジションが増えたが、これの恩恵を受けたのは東京。
オープン気味になったことでWBの裏は空きやすく、サンホが仕掛けやすい状況ができる。
40分、小川のオーバーラップでのサポートを受けて一瞬フリーになったサンホから中へクロス。ゴール前の永井が先に触って追加点。前半のうちに逆転に成功した。
前半まとめ
5分の失点は濡れたピッチで滑ったことで事故にも見えがちだが、守備構造上生まれる意識による判断ミスといったようにも見えた。
ただし小川の対応だけでなく、全体に目を向けることが必要。4-4ブロックの前で持たれたときに精度の高いボールが入ってくるとかなり受動的な対応を強いられている。このやり方を徹底していくのであれば、そこへの寄せの甘さは極力減らしていかなければいけないだろう。
失点後は珍しく東京がボールを持つ時間が増えた。ガンバは先制してからウィジョのカウンター一本狙いで、それが失敗すればそのまま連動したプレスをかけることもなくすぐに撤退する。結果的にこれはなかなか裏目だったように思う。率直に言うと5-3-2で守るガンバには隙が多かった。
前述したが、2トップは攻撃に力を残すためか、あまりプレッシャーをかけてこず、ボールは比較的自由に持てる。しかしながら、選手間の距離が開きスペースを与えるということがよくあり、ゴール前にボールを送るシーンは多く作らせてくれた。
ウィジョのカウンターが1発決まっていればプラン通りだったのだろうが、渡辺がそれをうまく消すことに成功。
前節マリノス戦でもそうだったが、先制されてもすぐに逆転できるというメンタルがついて行きそうな非常にポジティブな前半となった。
後半
後半開始からガンバが選手交代。
高江→遠藤
遠藤をアンカーに置き、矢島を一つ前へ。
機動力よりも配球役を増やすような意図だろうか。
ビハインドになり、得点が必要になったガンバはボールを持ち、失ったら奪いに来る。
東京は守りを固めつつカウンターを軸に追加点を取る隙を伺う。
中村敬斗のアイソレーション
ガンバは中村のアイソレーションからチャンスを狙う。
アイソレーションとは主に1対1が得意な選手がいる場合にわざとその選手から離れることで孤立したような状況を作り出すもの。ガンバの選手は左WBの中村にボールが渡ると、そこからあえて離れることでDFを中村から遠ざける。
ガンバは突破力のある中村のところで1対1を制してゴールに近づこうとしているように見えた。
これに対して東京は室屋が1対1に負けないという前提は持ちつつ、CHやSHがカットインのコースを埋めることでサポートしていた。
※イメージ
結論から言うと90分を通じてここの勝負は室屋の勝ち。ガンバが狙っていた個人での突破に蓋をすることができた。
東京は室屋vs中村の1対1、前プレから小川の刈り取り、中央圧縮での囲い込みの3つが主な奪いどころ、またはプレーを切る場所になっていた。
奪ったらシンプルに永井&ディエゴに預けることで陣地を回復する。
トランジションを制した追加点
60分、東京に追加点。
相手のスローインから敵陣でボールを奪い、髙萩→永井でPA奥を攻略し、空いたバイタルにディエゴが飛び込んでゲット。
ガンバの中盤がボールサイドに寄りすぎる傾向を突けた得点だったと思う。
トランジションからの流れで中村の戻りが遅れたことでヨングォンは外につり出されており、永井を見るのが遠藤になっている。捕まえてはいるものの、やや出遅れていることで永井のパス出しに間に合っていない。
また、この時にサンホがニアに走りこんで三浦と高尾を引き付けて、その背後のスペースを空ける。
それによって背後のディエゴは完全にフリーの状態に。
アンカーの遠藤が永井に引っ張られているので、バイタルを埋めるならばボールと逆サイドのIH矢島になると思うが、ボールサイドに寄っていた上、入っていくディエゴに対して完全に出負けている。自分が埋めなければいけないという意思をそこまで感じなかったので、その役割は振られていないのかもしれない。
2点リードした東京は守備重心を強める。2トップのラインを少し下げて、どちらか1人(主にディエゴ)は守備にしっかり参加するように。
この時間帯から非常に印象的だったのはカウンターの流れなどでバランスが崩れたときの対応。永井が東のところまで戻る、髙萩が小川の場所を埋めるなど、各個人で状況判断をしながら献身的に動いていた。
ガンバは前述した中村の仕掛けと左(中央)から右外(小川の外側)を狙う配球を中心に攻めるが、クロスに小川が被ってしまい林の好セーブに助けられた65分以外はそれほどピンチはなかった。
ガンバは70分前後に
小野瀬→福田
矢島慎也→食野
と交代カードを使うも、どちらも効果的な変化には至らず。小野瀬・矢島ともに天皇杯の疲労を考慮したのかもしれないが、先制点を生んだコンビを下げることで中央を固める東京から得点を取るための選手を失ったようにも見えた。
東京は
サンホ→大森
永井→矢島輝一
ディエゴ→アルトゥール・シルバ
と前線をフレッシュにして締める。
個人的には髙萩か橋本を早めに下げてもいいのでは、と感じたが、連戦が終わるタイミングだったので、1%もこの試合における不安要素は作りたくなかったのだろう。
ガンバも必死に点を取りに来るが、途中で入ってきた大森や矢島(輝一)の自分の役割がわかったプレーぶりで時間を効率的に使ってそのまま終了。
感想・まとめ
結果的に東京はディエゴ・永井だけを頼ったカウンターではなく、流れの中から3得点を奪った。1点はサンホの個人技、2点はトランジションを制したところから生まれた。
ガンバとの噛み合わせの相性もあっただろうが、新たな得点パターンが見れて、FWが点を取れたことは明るい兆しである。
逆にガンバは守備の弱点をこの試合でさらけ出してしまったように見える。次節は比較的東京に似たスタイルの清水なので、ここでの修正力は新システム後で一番試されるかもしれない。
終わりに
神戸・仙台と連敗のあとホームで連勝。神戸には敗れたが、いまだホームでは圧倒的な強さを誇っている。
次節もホーム。相手はリーグ連覇を達成している王者川崎との多摩川クラシコ。17節横浜FM戦に続いて勝利に6ポイントの価値があるゲーム。
川崎に今季2つ目の黒星をつけることができるか。首位に立つのにふさわしいのがどちらか試されるゲームになるだろう。