2022 J1リーグ第18節 川崎フロンターレvsジュビロ磐田 メモ
スタメン
川崎は登里、ジェジエウが負傷離脱中。
磐田はゴンザレスがメンバー外。伊藤監督いわく「コンディションが整わなかった」とのこと。高野、山田、大津が離脱中。鈴木も引き続きメンバー外。古巣対決の杉本が先発復帰。
流れ
自陣からショートパスでつなぐ川崎に対して、高い位置からプレスを掛けて奪いに行く磐田。
磐田は全体で連動し切れないバランスのときは無理に出ていかずに構える守備も見せる。自陣で奪ったら縦パスと落としをテンポよく続けて陣地を回復する。
3分、川崎がカウンタープレスに近い形で深い位置で強度を高めて奪いに行くが、岩田がコンビネーションで密集を抜け出す。一気にゴール前までとはいっていないが、相手のプレスをいなすところまではできている。
4分、川崎が敵陣でパスを回し、左サイドからのインスイングクロスに小林。合わなかったが、点で合わせに行く攻撃。
磐田は立ち上がりこそ高い入りまで出ていっていたが、すぐに自陣セット要素が強めになってきた。
6分、磐田が組み立てから低い位置でロストするもグラッサがカバー。磐田はプレスを外す部分はいくらかうまくいっているが、そこからの前進まではいけていない。
8分、川崎はWGを相手CBへあてて、SBを高くまで押し上げてプレスを掛ける。
9分、右サイドでの連係からサイドに流れた大島のクロス。川崎は右サイドでのテンポを挙げたパス交換が続いた。
磐田が最終ラインを気持ち上げていることもあって、シンプルに裏抜けを狙う小林に送る攻撃も見せる川崎。
11-12分、磐田が自陣で奪ってからうまくつないでロングカウンター。杉本で時間を作り、右を上がってきた吉長のクロスまで。シュートまではいけなかったものの、プラン的には悪くない攻撃の形。
13分、左から逆サイドで浮いた山根へ送り、クロス。磐田は5バックながら、同サイドや中央に寄るため、サイドチェンジへの対応はワンテンポ遅れる。
杉本はトランジション時にサイドで起点を作ろうとする。川崎がSBを上げてサイドにスペースを空けやすいことを狙ってか。
14分、左でのパス交換からポケット進入を図る川崎。磐田は決定的なシュートこそ許していないが、組織の穴を突かれ始めている。
15分、CKの流れから谷口のヘッドを三浦が好セーブ。
16分、家長が右奥で起点を作ってから脇坂と山根でポケットを攻略するも磐田DFがギリギリブロック。川崎がゴールへ少しずつ近づく。
17分、家長が逆サイドまで流れてくるいつものやつ。川崎は前の選手がライン間に立って、磐田のCBやWBを引き出してから素早くパスを交換してスペースを突いていく。磐田は1つのエラーが致命傷になりえるような状態。
磐田は杉本だけ最前線に残してトランジションに備えさせるような形でほかのFP9人は自陣の守備に奔走。
21分、川崎が家長と小林のコンビネーションから右サイドでシュートへ持ち込むが、三浦がブロック。磐田は序盤のようにトランジションからパスで時間を作るようなシーンは見られなくなってきている。
22分、久しぶりに磐田がトランジションから前へ出ていくも、川崎の戻りにつぶされる。
23分、久しぶりに磐田の保持。川崎は一度撤退したら自陣で構えて守る。
23分、カウンタリングカウンターから鹿沼がPA付近へ進入を図るも谷口が阻止。その谷口に突っ込んだ鹿沼に警告。谷口が痛んで一時中断。
27分、磐田の保持。防戦一方の時間をしのぎ切って、少しずつ落ち着けるようになってきた。
28分時点で支配率はおおよそ川崎7-磐田3。
29分、磐田のカウンター。杉本が川崎CBに寄せられない位置で受けて起点を作る。そこからどれだけ追い越していけるかがポイント。
30分、ずっとリトリートできていた磐田がジワジワプレスを掛ける。強度を上げて奪いに行くというよりも、相手の選択肢を奪っていくような寄せ方。
33分、川崎先制、1-0。下りる家長と入れ替わるように背後へ抜け出した山根がそのままゴールへ流し込んでゲット。ファーに入ってきた小林への折り返しを狙った結果、枠内へ飛んだというようにも見えたが、どちらにせよ抜け出しまでが完璧な流れだった。ラストパスを出した谷口もお見事。
前節得点を奪った、山本義を攻撃参加させる保持の形を見せる磐田。
37分、磐田が山本義から大きなクロス。川崎が自陣で回収したあと、家長が個人のテクニックからハーフウェイラインあたりまで一気に陣地回復。
38分、磐田は高い位置からプレスを掛ける。川崎は大島を右サイドに流して人数を増やし打開を図る。
39分、プレスに来る川崎の背後を狙う磐田。抜け出した杉本とカバーにでてきたソンリョンが接触して一時中断。
44分、チャナティップのラストパスに橘田が抜け出して折り返すも小林と意図が合わず。小林は外からマイナスに入ったが、橘田はそのままファーへ送ってしまった。
磐田はボールを持つシーンとカウンターで前へ出ていくシーンを作れているが、前へいったときに全体が押し上げられずに中盤が間延びしていることが多くなっている。川崎はトランジションからそこを素早く突いてゴール前まで迫る。
25分あたりまでは川崎が敵陣での保持を続けて圧倒。磐田はゴール前への進入を許しながらも最後のところはやらせずに我慢を続けていたが、山根がゴールをこじ開けて川崎が先制に成功。その後は磐田の間延びでややオープン気味の展開になったが、決め切れずに1-0で折り返し。磐田は途中まで我慢ができて、少しずつ落ち着かせ始めた時間帯だっただけに悔やまれる。川崎は杉本を起点にする磐田の攻撃をプレスバックでしのげているので、ピンチというピンチはなかった。
磐田はゴンザレスと大津という、途中出場で馬力を上げるカードがないので、PA内でしっかりめに崩し必要がありそう。ただ、ここまではカウンターやクロスしか攻撃パターンがない。伊藤監督はゴールへの道筋をどのように作り出すか。
DAZN集計で磐田は前半シュート0だった。
後半
46分、自陣でのビルドアップから川崎のプレスをうまく外して疑似カウンターに出る磐田。最後は折り返しから杉本が狙うも、打ち切れず。前半は攻め手がなかった磐田だが、後半はさっそう保持から良い形を作り出した。
1点ビハインドの磐田はプレスのラインを上げて攻撃的に出てきた。川崎はワンタッチパスで外しにかかるが、圧に負けてズレるシーンが何度か。
51分、川崎が保持の時間を作る。磐田は杉本と大森がプレスの先鋒で、その後ろの選手たちがボールや人の場所に応じて大島ら中盤を捕まえる。
53分、谷口→小林の落としでポイントを作って、磐田のラインを下げさせる。磐田は前2枚がCBについて横に広がるので、縦パスのコースは空きやすい。
54分、チャナティップが完全に抜け出してGKと1対1に近いシーンを作り出すもシュートはポスト直撃。前からいった磐田がホルダーを捕まえ切れずに背後のスペースを突かれた。
磐田が前がかりになっていることや、敵陣へ人数をかけていることなどによってややオープン気味の展開が増えた。
59分、川崎がカウンターで一気に敵陣まで入り、PA前でFK獲得。グラッサが脇坂を倒して警告。
59分、川崎交代
遠野→マルシーニョ
マルシーニョを左WGに入れて、チャナティップをIHへ移す。
61分、車屋から一発で背後を狙うが、うまくコントロールできず。中央へ抜け出してきていたのが山根だった。
61分、遠藤のミドル。磐田は保持の質は上がっているが、決定的なシュートまでは持ち込めていない。
63分、磐田交代
杉本、鹿沼→ジャーメイン、山本康
65分、ジャーメインの突破を後ろから止めた車屋に警告。
65分、遠藤のFKをファーでグラッサが合わせるも枠外。セットプレーはグラッサがメインターゲットになっている。
67分、車屋→チャナティップの縦パスでプレスを回避してスピードアップ。川崎はビルドアップで苦しくなる場面もあるが、CBからの縦パスを受け取れれば抜け出せる。
68分、飲水タイム。追い付くためにリスクを覚悟で出ていく必要がある磐田が前からのプレスでボールを奪う回数を増やし、保持からゴールを目指す。一方で川崎は自陣での時間こそもらえなくなったが、敵陣でのスペースをもらえるのでマルシーニョを入れて一気に刺しに行く。
69分、川崎交代
脇坂、チャナティップ→瀬古、塚川
塚川が左SBに入り、橘田をIHへ移す。
70分、磐田交代
大森、吉長→金子、小川
72分、左からのインスイングクロスにジャーメインが飛び込むも合わせきれず。川崎はファーにぽっかりとスペースができてしまい、マークにもつけず。磐田はここまでで最大のチャンスだったかもしれない。
76分、家長のファーへのインスイングクロスに塚川が入ってくるも磐田DFが対応。川崎が落ち着いて保持の時間を増やしてきた。
77分、家長と大島らの連係でポケットを攻略しかけるもパスがやや流れる。
78分、1本のパスで小川が背後へ抜け出して折り返すも、質が伴わず。ジャーメインも入ってくるのがワンテンポ遅れた。
79分、左からのクロスにまたしてもジャーメイン。触れば1点といったようなチャンス。磐田が「最後のところさえ合えば1点」といったようなチャンスを作りだしている。
81分、川崎交代
小林、山根→ダミアン、シミッチ
山根は今季初の途中交代。橘田が右SBへ移る。シミッチと大島が横並びのようになり、瀬古がトップ下に入る4-2-3-1気味のオーガナイズに。
84分、磐田同点、1-1。遠藤のCKを伊藤がニアで合わせてループ気味になったボールがファーサイドの隅に吸い込まれた。
86-87分、磐田のロングカウンター。山本康のクロスをジャーメインが合わせるもシュートはポスト。ホームの川崎が勝ちに来て前がかりになったところを人数をかけたカウンターで刺しに行ったが、あと一歩足りず。追い付いたことで磐田にも勝点3の可能性が大きく開けてきた。
88分、磐田交代
上原→大井
大井は最前線に入って金子を中盤に下ろす。
90分、PA手前で獲得したFKを瀬古が直接狙うも落ち切らず。
後半アディショナルタイムは川崎がボールを持って攻め、磐田セットしながらカウンターでの一発をもくろむ。
93分、家長に警告。遅延行為を取られたか。金子は背後から忍び寄る好守。
最終盤は川崎は勝利を求めて攻勢を強め、磐田は勝点1も見据えながらカウンターでの一発を狙う構図になったが、スコアは動かずに引き分け。磐田は苦しい前半を1失点でしのぎ、後半でシフトチェンジして押し返せたことが大きかった。得点はセットプレーからだったが、押し返す術を見せられたからこそ。川崎がリスクをかけてきただけに逆転まで持ち込める可能性も生まれたが、上位とのアウェイゲーム、さらにはビハインドから追い付いたという点では磐田にとっては価値ある勝点1になったといえる。
川崎は後半にあったチャナティップの決定機で2点目が取れていればより優位に進められたと思うが、それ以外に決定機を作れなかったことも事実。前半も保持からのトランジションで上回って主導権を握りながらも、質の高いチャンスをそれほど作れていないことが課題になるのかもしれない。
磐田は特に前半は苦しかったが、伊藤監督らしいパス回しからのスピードアップなど、少しずつ成熟度が増してきた雰囲気も感じられる。前半の一部と後半はプレスも機能するシーンが見られ、やれることの引き出しも増えてきた印象があった。
個人的MOM
★伊藤 槙人
貴重な同点弾を挙げた。また、ディフェンスリーダーとして苦しい時間で耐え抜いたことも評価できる。
磐田は前半で好セーブを見せて守備を崩さなかった三浦、ゴールこそ決められなかったものの、途中出場から攻撃を活性化させたジャーメイン、質の高いクロスでチャンスを演出した山本康も好評価。
トピックス
少し髭を蓄えた谷口。
フルタイム出場を続けていた山根が途中交代。試合後リポートによると、自分から交代を申し出たとのこと。
橘田は左SBでスタートし、途中でIHへ移動。そして山根の交代で右SBへ移るなど、1試合の中だけで3つのポジションをこなした。
アウェイながらゴンザレスは会場に来ていた模様。少なくとも重症ではないことが言えるか。
伊藤監督はいまのジャケットにしてから負けなしの模様。季節の変わり目で暑いが、言を担いでいるとのこと。
監督コメント
(※Jリーグ公式サイトから引用)
[ 鬼木 達監督 ]
自分たちのサッカーをしようということで送り出した。前半は自信を持ってボールを動かしながら、狙いとしていた得点も取れたが、もっとチャンスの回数を増やさないといけない。もう1点、2点と、取り切らないといけない。常々、1点差だとこういうアクシデントというか、セットプレー一発、カウンター一発もある。2点目を取ろうとずっと言い続けていたが、それが取れなかったのがこういう勝点1につながったと思っています。--後半、相手が守備の形を変えた。CBとボランチにチェックを掛けてきたが。
前半も、相手が前から来たところでこちらが外していったことで、撤退していった。その形をより増やさないといけない。実際には(大島)僚太のところもかなりケアしてきて、そういったときにより背後などが空いてくるというものは頭では分かっているはずだし、そういう話もしている。どういう戦いを相手がしていて、前から来るか、そういう話もしているが、そこを見つけられるかどうか。受け手との距離が少し伸びたり、相手がいてもつけていくことが必要になる。相手がいてもつけていた前半は、そのことでポジションの入れ替わりもあったが、後半は少し少なかった。そこも、全員が相手を見られる目をもってやっていかないといけないし、あとはチーム全員、サブも含めて同じ目をもっていけるようにしていくことが必要かなと思う。
--この暑さもあり、ボールを握っているときの頭の判断が重要になるが。
おっしゃるとおり、頭のところはすごく研ぎ澄まされないといけない。自陣であれば、1個のパス、トラップできるところで後ろに下げてプレッシャーを受けたというのもある。あとは前線で、外から見ていると背後に走れそう、出せそうというのがあるが、そこを暑さの中でやめたのか、あるいは見えてないかというのは大きな違い。その目をそろえていかないといけない。相手陣地にはいっていくことで、自分たちのクオリティーは維持できるはず。ハーフウェーラインを越えていく作業をもっとやっていかないといけないと思いました。--ゴールシーンでは山根 視来選手が裏を取った。ああいう大きな動きが少し物足りなかったか?
そのとおりだと思いますし、逆に言えば、あの動きであれだけ背後を取れるわけなんで、フリーで蹴れるシーンは、前半で狭いバイタルエリアでもボールは入っていた。そのタイミングで背後に抜け出せる場面は、こちらから見るとあるが、背後に走る選手がいれば、5バックはガタガタとギャップが出ている。そこに走らないとギャップができない。一発で背後は取れるわけで、一緒になるが、タイミングや目をそろえるということもある。怖いところに人が走ることが、あらためて必要だと思っている。
[ 伊藤 彰監督 ]
まずは暑い中、ナイターゲームにもかかわらず多くのファン・サポーターの皆さまに足を運んでもらってありがとうございます。最後にわれわれが押し込めたのは、ファン・サポーターの応援があったからだと思いますし、一緒に勝点をもぎ取ったことをうれしく思っていいます。前半の入りで前線からプレッシャーを掛けたかったですが、1つは(相手の攻撃を)受け入れてしまったこと。もう1つはCBと大島 僚太くんのところで1トップの(杉本)健勇がプレッシャーを掛けるとはがされてしまって時間を作られてしまった。これが前半押し込まれた原因の1つだと思います。そこで川崎Fさんは、前向きでフリーな選手がいれば、前線にタレントもいますし、裏を取られて失点してしまったところが反省点だと思っています。前半はボール保持者へのプレッシャーが甘かったことで失点を招いてしまった。
(失点場面の)左サイドの守備はどうしても家長(昭博)選手に強く行くがために、少し(マークの)受け渡しが遅くなってサイドハーフの選手が山根(視来)くんにいかなければいけなくなったことが問題だったと思います。なるべく早く受け渡しながらウイングバックが裏のケアをできればまた違ったと思います。それでもクオリティーが高い相手をよく前半1失点でしのいでくれたというのが正直な感想です。
後半に入ってCBとアンカーの大島くんにプレッシャーを掛けようというところでオーガナイズを変えました。そのときにサイドでやられてしまうところとボランチの脇をやられてしまうのは想定内でした。前から守備をしながら入ってくるボールを奪って、ショートカウンターからミドルサードやアタッキングサードでゲームをコントロールしたいという意図でした。後半は選手がプランどおりに動いてくれて、そこに良い攻撃と切り替えの早さで、後ろも頑張ってくれたと思います。
われわれのほうが控えに背が高い選手がそろっていたので、セットプレーは1つチャンスになる可能性があると思っていて、そこで1つ取ることができたことは良かった。
全体的に後半はすごく戦ってくれて勝点1を取れたことがリーグ戦の自信になっていくと思いますし、ここからもっとチームとして逆転できるような力をつけていかなければいけない。それをトレーニングから積み上げながら次の試合に向けて戦っていきたい。