がちゃのメモ帳

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【FC東京】2022 J1第27節 vs柏レイソル 歩を進めるアルベルトーキョー

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第27節のアウェイ柏戦。6-3というエンタメ性の高い試合になったことで印象が薄れてしまったが、前半の内容は非常に素晴らしく、完勝を収めたアウェイ清水戦の後半とそん色ない、もしくはそれ以上の出来だったのではないだろうか。

何が良かったのか、現象の大枠と感想を並べていく。

 

 

収獲①:ゲームコントロール成功

一番の収穫はゲームコントロールができたことだ。「ゲームコントロール」といっても意図によって解釈が異なるだろうが、ここでは「自分たちのペースで試合を進めること」とする。

東京が目指す「ゲームコントロール」はボールを持つことがメインであることに対し、柏はボールを持たなくても「ゲームコントロール」ができるチーム。簡単に言うと、高い位置での守備を続け、カウンターからチャンスを作れるといったイメージだ。もう少し細かい部分に言及すると、2トップで相手CBにプレッシャーを掛け、サイドへ誘導したところで奪ってカウンターに移るパターンを十八番にしている。

 

※柏の奪取イメージ

 

この試合も例に漏れず、立ち上がりからそのパターンで仕掛けてきた。

 

一度話を変えるが、リーグ中盤戦あたりの東京はサイドに蓋をされると何もできないチームだった。特に、今季の中でも最も“怪しい雰囲気”になった第11節からのアウェイ福岡戦→ホーム鳥栖戦(→アウェイ磐田戦)→ホーム柏戦は、その流れが顕著に表れていたと記憶している。前回の柏戦では、相手の守備の特徴と、そのときの“東京のできないこと”のかみ合わせがばっちりだった。ただ、今回の柏戦は同じ轍は踏まないことを示す。

 

まずは右サイドの立ち位置。長友が内側に入ってサヴィオのマークを強引に引き付けることで、サイドで圧力を受けないようにする。

こうなると、当然戸嶋は紺野についてくる。プレッシャーが強ければGKまで戻してもよし、弱ければ左足から背後や中盤へ配球してもよし。左利きの紺野だからこそ、内側へのプレーがスムーズに遂行できる。

 

左ではWGとSBの役割が逆。佳史扶がオーソドックスにサイドへ張り、渡邊がフリーマンのようにインサイドをうろうろする。

柏は定型どおりSBにはIHが出てくる。2トップはCBへ前向きにプレスを掛けるため、プレスバックには重心移動が伴い、ワンテンポ遅れやすい。その2つによってアンカーの東は構造上浮きやすくなる。

柏はこの2トップの背後で前を向かれると、最終ラインを下げざるを得ない。背後へのラストパスを通させないためにスペースを埋める必要があるからだ。

これに近い形から一気にゴール前まで迫れたのが14:10あたりのシーン。時間があればぜひ見ていただきたい。ここは全体の絡み方も素晴らしかった。

 

こうなれば東京はより高い位置で保持することが可能になる。この「勇気をもって中央につけるパス」がこれまでは少なかった。中央経由はゲームコントロールの第一歩と言えるだろう。

また、序盤の柏はGKまで追ってくることは少なく、詰まったときはGKへ戻すことで組み立てのやり直しがきいたことも大きかった。

 

以上が、ゲームをコントロールするために重要になった部分だ。

それ以外にも、直線的に押し上げる手段も見られた。

長友がサヴィオ、紺野が戸嶋、塚川が田中を前へおびき寄せることでサイドにスペースを作り出し、ディエゴにそこで受けさせる。これができれば自陣でのロストの確率を減らした上で、敵陣へ入れる。

高橋も直線的にアタックできれば奪い取れる能力は高いが、ベクトルが定め切れない状態を作れればディエゴから奪える選手はそういないだろう。

足元だけでなく、奥のスペースも見られていることも示した。

 

これらのような動かし方をベースにしながら、相手のプレスにハマることなくボールをつなげたことが前半のゲームコントロールにつながったと言える。飲水タイムの直前あたりから柏が5-4-1へシステムを変更し、守り方の構造を変えてきたが、10分もすれば木本→塚川→東とつないで細谷の背後を取り、安定する形を見いだすなど、対応力もお見事だった。

 

 

収獲②:同じ絵の共有

ゲームをコントロールするための要素になる「全体の絵の共有」もできているシーンが多かった。より細かくすると、“3人目”になる選手のポジショニングの質とでも言えるか。これはボール保持の質を高める上で最重要項目と言っても過言ではないかもしれない。

フットボールスタイリストの鬼木祐輔さんはこれを「ボールなしペアリング」と呼んでいるが、つまるところ、ボールの受け手でも出し手でもない選手が、いかに次のプレーを予測して良い立ち位置を取れるか、という話。

これを最も高い水準でこなしているのが渡邊。先ほど挙げた14:10あたりのシーン、プレッシャーが強まった後半の48:25あたりのシーンも彼が先を読んだポジショニングで攻撃を落ち着かせたり、加速させたりしている。保持を安定させる上でも、よりゴールへ向かう攻撃を繰り出すためにも、彼が今後のキーマンになっていくことを予感させた。

また、渡邊が“良い受け手”になるためには、出し手側も意思疎通ができていないといけないが、柏戦は全体でも同じ絵が描けていたことが非常に素晴らしかった。

 

 

反省点:後半のゲームコントロール失敗

後半は2点ビハインドを背負った柏が3枚替えを含めて前向きの勢いを強めてきた。ただ、前半の5-3-2の守り方の構造は同じ。

東京は前半同様の形で保持を安定させようとしていた。しかし、技術的なミスが出てピンチを招いたことなどから、リスク回避でマイボールになる確率が低いプレー選択しがちに。割り切った戦い方をさせると厄介なネルシーニョ監督にしてやられた格好だが、この立ち上がりが今後の展開を苦しくさせた。加えて、この日は非保持がかなり不安定だったこともあり、ボールを持てなくなったことが3失点につながってしまったと言える。

アダイウトン投入で陣地回復とカウンターの脅威が増し、相手以上にゴールを奪うことで勝利は死守したが、これはアルベルにとっては不本意だったはず。

「後半ですけど、立ち上がりからミスがいくつか重なってコントロールを失う展開になったと思います。後半の最初の10分のプレーが課題として残ると思います」

【公式】柏vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2022年8月27日):Jリーグ.jp

以上のコメントのように、最初の10分でもっと相手のプレスをかいくぐれていたら、各選手のプレー選択は変わっていたかもしれない。

相手の強度が上がっても勇気をもってやり続けること、そしてプレッシャーが掛かる中でも技術的なミスを起こさないこと。これらが今後に向けた課題になるのではないだろうか。

 

 

まとめ

第23節の広島戦から、良い傾向が出てきたと感じている。第24節のホーム清水戦では、「最下位にホームで完封負け」という印象からか、その内容にも疑問を示す人もいたらしいが、個人的な目線ではこの試合でもやろうとしていることは示していた。つまりは、柏戦の内容は“ぽっと出”ではなく、しっかりとこれまでの道の延長線上にあったということ。内容も結果もふがいない試合が何度かあり、「これで大丈夫なのか?」と感じたサポーターは多いと思う。私自身もシーズン半ばではそう感じることもあった。ただ、その時期の“我慢”を乗り越えてチームは着実に進歩を続けている。それはピッチ内で起きている現象からも明らかだ。

不安を乗り越え、次のステップへ進むアルベルトーキョーの今後が楽しみである。

 

 

 

(最後に気になったシーンのメモだけまとめておきます)

7:55 東のパスミスからカウンターを受けて被シュートまで。

印象だけで言えば、「安易なミスからロストしてピンチを招いた悪い場面」だが、作りの部分は悪くなかった。東のパスがつながっていればチャンスになりえたシーンであり、チャレンジしたゆえのミス。ただ、逆にいえば、東はこのようなパスミスをどれだけ減らせるかが生き残りのカギになるだろう。

 

10:10 東が下りて3バック化ビルドアップ

木本が相手2トップ脇から運んで渡邊へ縦パス。そこから紺野の仕掛けまで。画面には映り切っていないが、長友が背後へ走ったことで田中の重心を後ろへコントロールし、間に入ってきた渡邊がプレッシャーなしでパスを受けられた。

 

14:10 左サイドから中央を経由して逆へ展開

判断の時間が限られた中でのワンタッチでのパス交換の連続。全体の絵が共有できていることを象徴するシーン。

 

48:20 強いプレスを受ける中でのビルドアップ

外の佳史扶から中央の東へ預け、ドッジが出てきた背後のスペースで渡邊が受けてプレス回避。後半立ち上がりでこのような形がもっと作れていれば…!

 

62:45 木本→安部→東→渡邊でプレス回避からスピードアップまで

前半の木本→塚川→東と同じようなパターンで、東に前を向かせ、柏が前に出てきている分、渡邊がバイタルで前を向けるところまでがセットに。

 

66:30 東の横パスを奪われてカウンター(良くなかったシーン)

おそらく木本はパスを出したあとに内側へサポートに入り、リターンを受けて松木への縦パスを狙ったと思われるが、東はサイドへのパスを選択してロスト。この場面では同じ絵を共有できなかった。このパスだと相手の守備陣も狙いが絞りやすく、危険な奪われ方をされる確率が高まる。東が木本の狙いをくみ取れるようにするか、木本が外側へサポートに入って受けるかのどちらか、もしくはどちらもできるようになると素晴らしい。