2022 J1リーグ第17節 川崎フロンターレvs北海道コンサドーレ札幌 メモ
スタメン
川崎は大島とチャナティップが負傷明けで先発復帰。あまりいじらなかった最終ラインを変更し、橘田が左SBに。登里が負傷離脱中。
札幌は興梠が天皇杯で復帰し、この日も先発。田中駿が負傷明けで先発復帰。福森が出場停止明け。シャビエルが出場停止。中島がU-21日本代表招集中により欠場。菅野、高嶺、小柏が負傷離脱中。
流れ
川崎が持って攻める立ち上がり。
右サイドからのFKを脇坂が直接狙うもバー直撃。中野は意表を突かれたが命拾い。
札幌は青木が大島番。興梠と駒井でCBまで出ていく。
札幌が奪い取れるシーンもあるが、奪ったあとにつなげるところがまだ安定しない。
札幌のDFが下りるマーカーにかなり深くまでついてくることから、前の選手が下りて後ろの選手が出ていく動きでスペースを取ろうとする川崎。
7分、福森のインスイングFKに複数の選手が飛び込むも、荒野がオフサイド。やはり福森のボールからは得点の匂いを感じさせる。
徐々にボールを持つ時間を作って押し返し始める札幌。
8-9分、金子の仕掛けを生かしながらコンビネーションで打開を図る。ここまでは右サイドでの作りが多い印象の札幌。
10分、マンツーマンを逆手にとって背後のスペースを取りかけた川崎だが、札幌がギリギリで対応。札幌は人を当てて出ていっているが、ホルダーへの寄せが少し遅い印象。特に川崎の選手たちに対してだとプレッシャーになっていないときも。
13-14分、のらりくらりとパスを回しながら、一気にスピードを上げて右サイドでのワンタッチから右サイドを突破する川崎。マンツーでつかれていてもダイレクトでつなげれば、食われにくい。
15分、駒井がスイッチを入れて高い位置で奪取する札幌。直線的にゴールへは迎えなかったが、深い位置でのFKを獲得。川崎はアンカーが大島なので、トランジションから広いスペースで晒されると弱みが出やすくなる。
18分、札幌が低い位置からつなぎに行くが、川崎のプレスの前に前進失敗。
19分、川崎のテンポの良いパス交換から最後は上がってきた橘田のシュートまで。札幌守備陣は速いスピードで目線をずらされてマークが難しそう。
札幌は各所のコンビネーションレベルは高いが、中盤中央でのサポートがやや遅いように見える。カウンターでも保持でも中央で持って選択肢を考えている間に戻られてしまっている。
24分、中盤でルーズボールを回収した札幌がスピードを上げて金子の進入から折り返しまで。かなりゴールへ近づいたが、川崎守備陣も落ち着いて対応。
25分、大島が密集を抜け出したところから川崎が疑似カウンターを仕掛けたが、チャナティップのところで選択肢が狭まって囲まれる。完結はできなかったが、マンツーマンは1枚剥がせば一気に局面を打開できるというところを見せた。
27分、札幌先制、0-1。下からの作りで興梠が縦パスを引き出してからスピードアップし、大島の足に当たったこぼれ球を青木が反応してうまく流し込んだ。川崎はプレスがはまり切らず、中盤のスペースを的確に突かれてしまった。最後はアンラッキーなところもあったが、そこまでの過程は見直さなければならない部分。
30分~、札幌の時間。川崎がボールを前に運べなくなり、札幌が敵陣で持つ時間を増やす。
33分、左での作りで山根が中央に入ってきて起点づくり。2CB+アンカー大島はある程度固定されているが、それ以外はかなり流動的に動いてマンツーずらしを狙っている川崎。
川崎はやはり中盤にできるスペースが守備のネックになっている印象。遠野ががんばって戻ってきているシーンをよく見るが、逆にそうしないといけないとも言える。
38分~、川崎の時間。敵陣でのパス交換を続けながら相手の穴を探し出す。
41分、川崎同点、1-1。知念がターンして前を向いたところで宮澤が触ったボールが家長の下へ転がり、家長がGKとの駆け引きを制してゲット。札幌の得点と同様に味方が触ったボールがゴール前の相手に渡ってしまうというまったく同じパターン。
大島の縦パスを知念が受けるパターンが何度か見られるようになってきた。
それぞれが自分たちの時間を作り合った前半。互いに1点を取り合ってイーブンで折り返したのは妥当な結果だっとように思う。札幌のマンツーに対して、全体を流動的に動かして、うまく前向きの選手を作って背後を突こうとした川崎。また、ダイレクトパスでスピードを上げて、マークのつき直しが追いつかないようにするアプローチも多かった。
札幌は相手を引き出した状態でうまく中盤でポイントを作りだし、スピードを上げた攻撃でゴールへ迫れた。90分のプランを含めて強度はそこまで上げなかったことで川崎のつなぎを許した部分もあるが、タイスコアで折り返せたことは悪くない。川崎が全体的に広く動くため、消耗を抑えるには保持の時間をもっと増やしたいところ。
後半
46-47分、右で回収してから左の遠野に展開し、カットインシュートまで。後半立ち上がりも前半とおおよそ同じような流れ。
川崎は前半よりもプレッシャーの強度を上げて寄せていく。
48分、遠野が左から内側へ入っていきミドル。プレスの勢いそのままに川崎がシュートの数を増やしていく。
52分、興梠が下りて落ち着きどころを作る札幌。やはり狙いどころをは中盤のスペース。
遠野のシュートからはなかなかゴール前までは入れなくなっているが、川崎がボール保持の時間は増やしている。
雨の影響もあってか、ラストパスが少し伸びて追い付かないシーンが両軍ともに何度か見られる。
55分、知念がボールと関係ないところで座り込む。担架で外に運び出される。
56分、川崎交代
知念→小林
札幌交代
宮澤、興梠→深井、オリヴェイラ
59分、金子に警告。遠野に後ろからチャレンジして倒してしまった。
59分、脇坂のFKから混戦のこぼれ球を大島が押し込みに行くが、中野がブロック。川崎はセットプレーのリスタートが早い。
60分、チャナティップに足裏で飛び込んだ深井に警告。川崎の素早いパス交換の前に、札幌は結果的に遅れて突っ込んでしまう場面が増えてしまっている。
札幌はなかなか攻撃のフェーズに移れなくなっている。
63分、チャナティップのターンでマーカーを外したところからスピードアップ。川崎がオープンな状況で3対2の局面を作り出したが、フィニッシュまでは持ち込めず。
64分、札幌が素早い攻撃からクロス→金子の仕掛けまで。互いに自由に動くので、トランジションで球際を制すれば、オープンな状況での攻撃に持ち込める。
65分、札幌勝ち越し、1-2。福森のCKを荒野が合わせてゲット。札幌は攻撃の試行回数を少しずつ増やし始めた段階での大きな1点。川崎はオープンな局面での攻めを許して与えたCKが失点につながってしまった。
67分、チャナティップの突破を防いだ荒野に警告。札幌は中盤に警告持ちが増えたので、カードトラブルには注意したいところ。
68分、川崎同点、2-2。右サイドでのコンビネーションからイレギュラーにゴール前に入ってきたボールを小林がボレーで流し込んだ。
70分、右サイドを抜け出した駒井が高速クロスでゴール前へ送るもソンリョンがクリア。70分にして早くもオープンな殴り合いのような展開に。
72分、チャナティップがパスで中盤で2枚を外してから家長のシュートまで。
73分、川崎交代
チャナティップ→マルシーニョ
オープン気味になってきたところでスピードでちぎれるマルシーニョは生かしやすいと踏んだか。
札幌交代
駒井→西
74分、ルーズボールの回収から菅が運んでクロスを送るも中に飛び込む西には合わず。結果的にオフサイド。オープンバトルでどちらがゴール前の勝負強さで上回れるかの勝負。
77分、札幌のカウンターをマルシーニョの戻りで阻止し、小林→大島でシュートまで。札幌の中央がぽっかり空いてしまったが、シュートは枠へ飛ばず、命拾い。
81分、川崎交代
遠野、脇坂→ダミアン、シミッチ
81分、金子の仕掛けでCK獲得。
札幌は押し込まれたら人数をかけて自陣で守りを固める。
85分、川崎逆転、3-2。札幌がゴール前でつなぎに行ったところをアタッカーで強めに追い掛け、マルシーニョがさらうと、一度は防がれたが、小林が押し込んでゲット。札幌は我慢を続けていた中で手痛い安い失点。
途中出場で元気なダミアンが前線で追い回して出所を制限してくれる。
88分、川崎追加点、4-2。またしても前線のチェイシングから相手のつなぎのミスを誘発し、小林が右で収めたところから家長が追い越してGKの股を抜くシュートでゲット。
90分、福森のFKから混戦を作り出してプッシュするもソンリョンがビッグセーブ。
ボールを持って攻める札幌に対し、川崎は自陣に人数をかけて守る。
92分、橘田とのマッチアップ時に肩を痛めた様子を見せる荒野。プレーは続行。
93分、札幌交代
荒野→中村
95分、川崎追加点、5-2。自陣からのロングカウンターをマルシーニョが1人で決め切った。札幌は得点を取りにいくためにリスクをかけていたので、ある種仕方ない失点。2人を完全にちぎって交わしたマルシーニョもお見事。
途中までは一進一退の攻防が続いたものの、最後は前線のエネルギーを高めた川崎が一気に押し切って勝利。札幌も勝つチャンスがなかったわけではないが、同点で自陣でのビルドアップミスから勝ち越しを許してしまったのは痛恨の極み。また、マンツーマンで出ていってスペースを空けやすくしている一方、前で奪って一気にショートカウンターというシーンもほとんど見せられず、“リターン”のうまみがあまり出せなかったのも難しくさせた部分か。
川崎は二度のビハインドを背負いながらも、時間を置かずにタイスコアに戻せたことでメンタルの平静を保つことができたと言える。また、どちらに転ぶか、といった展開の中で、途中出場のダミアンのチェイシングで相手に落ち着いたつなぎを許さず、一気に流れを引き寄せられたところがターニングポイントになった。
個人的MOM
★小林 悠
戦術的というよりも、知念のアクシデントによる投入になった中、失点直後の同点弾、拮抗した状況の中での勝ち越し弾、突き放す4点目のお膳立てと、重要な得点に多く関与。これまでの流れ、そしてこの試合の流れを一変させる大きな価値のある活躍を見せた。
ゴール前で異常な落ちつきを見せて2ゴールを奪った家長、途中出場からチェイシングで絶大な貢献を見せたダミアン、マンツー打開に効いたチャナティップ、運び役やプレスバックで全体のバランスを整えた遠野も好評価。3点目を与えなかったソンリョンのビッグセーブも見逃せない要素。
札幌は青木が動きの良さを見せ、ゴールのシュート精度も高かったが、もっと攻撃で流れを変えられるとよりよかった。
トピックス
知念が負傷交代。表情的にはそこまで深刻ではなさそうだが、足首あたりを抑えていた?
荒野が肩を負傷。見た感じでは脱臼ではなさそうだが、違和感を感じている模様。
監督コメント
(※Jリーグ公式サイトから引用)
[ 鬼木 達監督 ]
中断明けで勝ちたい試合だった中で、途中から追いかけるゲームとなったが、我慢強く自分たちのサッカーを続けてくれた。また、雨の中でそれを支えてくれたサポーターも自分たちの力になった。スタートから出た選手も、あとから入った選手も、全員がパワーを与えてくれた。そういうゲームだったと思う。--前に出ていく攻撃の迫力、それに遅攻でも速攻でも迫力を出せたが?
前に人数をかけていきたいとずっと話していた。単純にマイボールの時間を増やして、攻撃回数を増やしたかった。多少、後ろに重たくなった前半だったが、それでもボールを持ちながら進んでいけた。先制されたことで大変になったが、そのプレーを続けていたことが良かったと思う。人を追い越す動きなどが徐々に出てきたので、継続してやっていきたい。この2週間、やってきた形の守備もできていた。それを評価したい。--大島 僚太がひさびさに入り、存在感を出したが?
彼が入ることによって、ゲームの展開の中で時間を作れるし、攻撃のビジョンがある。それが大きいと思う。ほかの選手も、京都戦には敗れたが、天皇杯からそこらへんの意識が高まってきた中で、いろいろな選手が帰ってきた。自分たちのサッカーってなんだろう、というのをやれたゲームなのかなと思っている。--FWの選手たちが結果を出したが?
競争力のところだと思う。得点に全員がこだわったからこそ、迫力が出たと思う。誰が出てもいいというか、そういう思いでやってくれた。この2週間でコンディションの良い選手、あとはパワーのある選手がどんどんゲームに出た。それについての悔しさなど、いろんな選手の思いをぶつけられたゲームかなと思う。
[ ペトロヴィッチ監督 ]
今日のゲームは、両チームにとって良いゲームであったと思っています。川崎と対戦するときには、前からプレスを掛けて奪いにいく姿勢をもって戦う。その準備をゲームで出していくことを意識させて戦わせました。そういったシーンも、出せなかったシーンもあったが、非常に良いゲームをしてくれた。負けたあとに、どう感情を表現したらいいか分からないが、3点目を奪われるまでは非常に良いゲームを見せてくれたと思う。狙いとするところを選手たちは出してくれた。ただ、残りの5分で3失点。表現するならば、少しずつ牛から乳をしぼってバケツに貯めたミルクを最後に自らひっくり返してしまったゲーム。良いゲームをしていたが、最後にそれを壊してしまったゲームだったのじゃないかなと思います。--2-2になってから、スローインなどでプレーを急いでいなかった。そのままのスコアで、という意図もありましたか?
われわれはもちろん、引き分けは狙っていない。勝利を目指して戦うチーム。フィジカル的に疲労が出てきた中で、自動的にそうなってしまったというのが理由だと思う。ケガ明けの田中 駿汰は最初のゲームだったが、経過とともに疲れが見えたし、試合終盤は疲労の色が濃く見えた。相手の交代で入った選手の質を見れば、質の差が出たのは事実。そのあたりが、後半の最後に差が出た1つの理由に挙げられると思う。いま、5人の交代枠があるが、それが継続されると、資金力が豊富な、質の高い選手をそろえられるチームが有利にはなる。マンチェスター・シティ、レアル・マドリー、バルセロナがそうであるように、そのチームは20人が代表選手。札幌は特別な資金力はないクラブ。5人交代枠が継続されて、差が生まれるのは仕方ないことでもある。その差を冷静に判断しないといけない。交代選手の中に、浦和にキャスパー ユンカーが、川崎Fにはレアンドロ ダミアンがいれば、交代による展開の差は生まれるだろう。それを言っても仕方ないが、60、70分までは良くても、5人交代による質の差が出るのは、こうやって終盤の結果として表れてしまう。残念ながら、それは事実だろうと思う。5人の交代枠があるのは、若い選手にとってチャンスがあると、日本ではそういう価値判断で良いと言われるかもしれない。もし、若い選手にそういうチャンスを与えられる状況のリーグならいいが、3人のブラジル国籍の選手が、そして小林 悠が途中から入ってきて、交代の差は明らかにあるだろう。
とにかく、私は65歳。交代枠がさらに広がるかもしれない。さらに資金力が力の差になるかもしれない。私が引退するまでそんなに長くないでしょうから、そういう意味では、5人の交代枠のままでいてくれたらと思う。サッカーはお金、資金力ある者に優位性がある世界で、それが進んでいくのかなと思う。