がちゃのメモ帳

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「4-3-3守備の再試験」 ACL GS第2節 FC東京vsパース・グローリー

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スタメン

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FC東京

前節・蔚山戦とまったく同じ。3トップはおそらく初期配置が図のとおりだったが、途中でディエゴ真ん中、アダイウトン左、レアンドロ右になっていたと思われる。

 

パース

蔚山と同じ[3-4-2-1]ベースのシステムを採用。後方から丁寧につないでくる。

 

 

前半

蔚山戦の再試験?

相手の戦い方こそ違えど、[4-3-3]の布陣で[3-4-2-1]の相手に挑む、前節・蔚山戦の"再試験"のような形になった。

 

東京の仕組みとしては蔚山戦の前半とおおよそ同じ。3トップで相手の3バックを牽制し、外に追い出したところをIHが捕まえにいく。

ただ、今回は蔚山戦とは少し違った問題点が出る。それはIHが相手のボランチも"しっかりと"捕まえなければならなかったことだ。"しっかりと"を少し強調したのは、パースのビルドアップで肝になっていたのがボランチだったため。パースは二人のボランチ(特に88番キルケニー)が広範囲に顔を出し、ビルドアップの中心になる。受けるのもうまければ、ワンタッチではたくこともできる。多少のプレッシャーであれば苦にせずプレーできる選手だった。

そうなるとIHがボランチのマークを極力外したくない、でも大外も見なければならない、と確実に無理な役回りに。

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 IHは相手のDHを捕まえることを優先で動いているような気はしたが、3トップの圧力と制限の掛け方が甘いゆえにWB・DHのどちらに出されても対応できるポジショニングを取る必要があった。そうなるとどうしても寄せがワンテンポ遅れてしまい、展開を許すことになる。こうしてボールはフリーとなったWBへ届けられた。

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このような流れで、過程こそ異なるものの蔚山戦と同じようにサイドを簡単に使われて押し込まれるシーンは何度もあった。

IHが出られないならSBが出ればいいじゃないか!とも簡単に言えない理由が相手のシャドーの位置にある。相手のシャドーがSBの近くをうろついており、容易に前に出ていくことはできない。これに伴って最終ラインは下がっていくため、相手WBに対してはIHかWGがプレスバックで対応しなければならないが、物理的&走力的にそれは非常に難しい状況だった。

 

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仮にSBが簡単に前へ出れば、その背後を使われて自陣深くへの進入を許すこととなる。

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一方で東京のボール保持。

相手は[5-2-3]ベースの守り方でシャドーの二人の負荷がやや高いように見える仕組みで守る。シャドーがCBの持ち上がりをけん制しながら、SBへパスが出たらサイドまでスライドして対応。

 

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 シャドーががんばることで後ろの枚数が確保でき、強力3トップにボールが入ったとしても良い状態で持つことはできない。

CBがフリーの状態であっても近くの誰かに渡すだけになることが多く、このシャドーの過負荷守備を困らせることができなかったが、本来はここを狙ってズレを作っていきたかった。

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上図はあくまで理想論でしかないが、CBがシャドーを引き付けることでSBに時間を与え、そこから相手のWBを引き出して前線にスペースを与えるようなことができれば3トップももう少し生かせたのではないかと思う。 

 

 

そんなこんなで、うまくいかないながらもスコアレスで折り返し。

 

 

後半

再び後半で修正。選んだのは前向きの圧力

 

蔚山戦同様、前半にうまくいかなかった守備を後半で修正した。

蔚山戦では右WGのディエゴを少し下げてバランスをとったが、今回とった選択は前の人を増やすこと。IHの髙萩を前に押し上げ、両翼を少し外へ出すような形で見方によっては“4トップ守備”とも言えたかもしれない。

後方でつないでくる、そしてパス回しが上手な相手に対して、攻撃的な両WGを下げて守備対応をさせるのは非効率的だろうということで前からの圧力を強めていく。

(おそらく)SBも前半より相手WBへのプレスを意識したことで比較的前でボールを奪えるようになった。そのぶん、後方に広大なスペースができてCBへの負荷は高まるが、そこは森重&渡辺コンビへの信頼感の表れでもあるのだろう。

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仕組みが変わったこともあるが、ボールを奪われたあとのアクションの速さと強度が明らかに良くなったことが後半に流れを取り戻すきっかけになっていたと思う。

 

 

攻撃面で言うと59分に紺野が投入されたところも一つの節目と言えるだろう。

アダイウトンに代わって入った紺野は右WGに配置。自由に動き回るブラジリアントリオとは異なり、右に張ったところからドリブルを仕掛けていく紺野が入ったことで相手のWBを引き連れて室屋に活動スペースを提供できていた。

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ほかにもCKのキッカーを務め、鋭いボールでチャンスを演出。持ち味のドリブルだけでなく、セットプレーのキッカーとしても可能性を見出した紺野はこの試合における大きな発見の一つだった。

 

 

試合は最終盤にレアンドロのゴールが決まって1-0の勝利。内容が多少アレでも勝てばよかろうなのだ!といったゲームになった。

 

感想

1stプランは絶対的なものか?

パース戦の前半も蔚山戦の前半と似たような守備で臨んだわけだが、結果的にはどちらもうまくいかず、後半に修正を施す流れとなっている。

まだこのシステムを使いだしてから日が浅いことはあるが、守備での仕込みが不十分である点が多々見られる。しかしながら、2試合ともに1stプランはIHに頑張ってもらう構造。これをベースを完成させることが理想形なのであれば突き詰めていくだけだが、少なくともこの2試合を見た限りでは効率的には思えなかった。

 

一方で2試合とも後半からの修正で流れを引き戻しているあたりはさすがの一言。正直なところ、蔚山もパースも強烈なチームではなかったことで助かっている感は否めないが、これがJ1相手にも通用するかどうかは見ものである。

 

 

 

なにはともあれ、2試合を消化して4ポイントをゲットした。結果が大事な中で十分な出来と言っていいだろう。ACLでは日本を代表するチームの一つとして存在感を示していきたいところだ。