がちゃのメモ帳

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2020 J1リーグ第9節 セレッソ大阪vsFC東京 ~攻撃<バランス。勝負はラスト10分~

 

 前節・鳥栖戦は前のアタッカー3枚(ディエゴ、永井、レアンドロ)に攻め残りさせ、後ろの人数を削って守る戦い方を選んだ。結果は敗戦。勝てなかった要因は「点が取れなかったこと」とも言えるが、「この守備でいいの?」という疑問もあっただろう。前節の「割り切りすぎた戦い方」で敗戦を喫したことを受け止めた上で、どのような戦略を取ってくるか。それがこの試合における一番のテーマだったはずだ。

 

 

それでは早速。

 

スタメン

 

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前節からの変更箇所

 

C大阪

鈴木→メンデス

 

ミッドウィークにルヴァンカップも戦っており、ヨニッチ、瀬古、丸橋、デサバトあたりは連戦でもぶっ続けで出ているような状態。

 

 

FC東京

林→波多野

三田→シルバ 

 

GKの入れ替えはサプライズ。中盤を3枚にしたことでシルバが入った。

 

 

前半

 

まずこの試合における最大のテーマ、前節を踏まえた上でどのようなバランスを取るか。ふたを開けると[4-1-4-1]のような布陣が表れた。攻撃力を少し落としてでも、アタッカーにある程度守備をさせることでバランスを整える選択。

シーズンの序盤で見られた3トップが前で並ぶ形ではなく、サイドのアタッカーを主に中盤で守らせる陣形。前節と比べ、中盤に十分な人数がいる(個人的には4バックであれば中盤に4枚は絶対に必要だと考えている)ことで、特にSBの守備が整理された。

今季は理不尽にたたかれがちな小川がこの試合で高評価を得ていた(ように思えた)のもこの影響が大きいはず。

 

簡単に守備の役割を整理すると以下のようなイメージ。

 

ディエゴ:CBに横から寄せて、片方のサイドへ誘導。CHのケアを行う時も。

永井:基本はSB監視だが、機を見てCBにもアタック。SHへの縦パスコースを塞ぐこともあり、やや仕事が過負荷気味。

レアンドロ:基本的に松田を見るだけ。マークの受け渡しも行うが、目の前にいる大外の選手だけは外さないように。

シルバ&安部:CHをがっつりマーク。CBから受けたパスで前を向かせない。

髙萩:中盤底のスペースを管理。最終ラインへのカバーも。

SB:対面のSHへ激しくアタック。割と深めまで追うことも。

CB:基本は2トップをマーク。サイドへ流れる動きにもついて行き、潰す役割が求められる。 

 

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おおよその守備基準



 

 

レアンドロが前で1人見てくれるだけで、小川はSH坂元へのマークに集中できる。これによって特長である前向きに当たっていく守備で良さを出せていた。

戦術とは選手の苦手な部分を隠し、得意な部分を際立たせるもの。この試合でその恩恵を受けたのが小川だったように思う。

 

 

試合内容の話を。

セレッソは2CB+右SBの松田+2CHでのビルドアップがメイン。まずはCBからCHへのパスで様子を伺うが、安部とシルバが強く寄せてくるため、そこを中継点にすることは難しい状況となっていた。そこでまず様子見でおこなったのは藤田を一列下ろすこと。

 

 

最初にこの動きを見せたのは6分を過ぎたあたり。藤田が最終ラインまで下りると、シルバはそのままついて行くわけではなく、かといって自分の持つエリアを守るわけでもない中途半端な立ち位置を取る。元々藤田(orデサバト)へタイトにつく守備タスクを持っていたと思われるシルバは、藤田が遠ざかると役割がかなり曖昧になり、“迷子”のような状態になっていたように見えた。

 

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藤田が下りると…

 

シルバが迷子になることは中盤にスペースを作ることも意味しており、右横の永井が意識しなければいけないエリアが拡大。永井の守備位置が途中で少し変わったのは、これが作用されていたのではないかと予想している。

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FC東京は左サイドが比較的安定していたのに対し、右サイドは各選手の役割が曖昧になっていた。そうなるとセレッソはそっちを使いたい。

 

一番バランスが難しくなるのは永井がCBへアタックへ行ったとき。マーク対象が一個ずつズレるため、室屋の背後が空く。セレッソの2トップがそのスペースを取りに行けば、CB渡辺はつり出される。

ここで潰しきれれば問題はないが、潰せなければ跳ね返しに強い渡辺を欠く状態でクロス対応をしなければならない。

 

リスタートからの流れだったためイレギュラーではあったが、上記のような形でうまく決定機を作ったのが10分頃の坂元の決定機。波多野のセーブでゴールとはならなかったが、これが決まっていれば完全にセレッソのゲームになっていただろう。

 

 

左に寄せてからサイドチェンジで坂元を使う形も見られ、小川との1対1を強いられたが、完封とは言えないまでも十分に対応できており大きな問題にはならず。

 

 

FC東京セレッソのゆったりとしたペースにお付き合いしつつも、永井と室屋のトランジションに強いスプリンターで縦を素早く取ろうといった意図も見えた。

ただ、セレッソも「前進は許容しても危険なところは使わせない」守備で対応。互いにシュートが少ない展開で折り返しとなった。

 

 

 

後半

 

 正確には分からないが、前半よりもシルバが「はっきり人をマーク」というよりは中盤のポジションを取るようになった気がする。その分永井がCHへのチェックを行ったり、内側へのアプローチも増えた。それによって室屋が1人で相手2人を見るようなシーンがチラホラ出始める。

ただ、室屋もさすが代表選手といったところで、背後のスペースを消して危険なエリアを使われないようにうまく対応できていたと思う。

 

46分前のカウンターや、53分の波多野→永井という展開があったように、永井をカウンターの槍として機能させ、セレッソが陣形を整える前に刺し切ろうという意図が見られた。特に46分のシーンは非常に惜しかったが、ここで刺し切れないのはまだまだ未熟な部分。ハイレベルな要求なのは承知の上で言うと、マリノス戦のようにこのようなチャンスで取り切れれば、守備に重きを置いた上でも確実に点が取れるチームになるだろう。

 

 

一方でセレッソ。前述したように室屋のところで2対1が作りやすくなっていたことに加え、右サイドでは坂元が相手を2人引き付けて松田に時間を作れていた。両サイドともにSBに時間が生まれやすくなり、クロスを入れるまではできる。ただ、FC東京のCBは跳ね返しに強く、セレッソの2トップは単純な空中戦では勝てない。ということで53分にメンデスを下げ、ターゲットになる都倉を入れる選択をした。

 

 

その5分後、FC東京も選手交代。

カウンターにチャンスを見出していく上で必要不可欠の永井だが、コンディション面やこの試合のタスク過多の影響もあってか57分に下がる。代わりに、よりバランス型とも言える内田を投入した。

内田は永井のようにカウンターの先導役にするのは難しいが、ドリブルでアクセントをつけたり、器用に守備をこなすことはできる。

守備の役割自体は永井と変わらなかったかもしれないが、シルバが出ていったときの背後のスペースを埋める動きがより顕著になった気がした。

 

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シルバの背後を埋める守備

 

また、普段はロングスローを控え気味にしている藤田だが、都倉投入後からは躊躇なくロングスローを入れてきた。ターゲットの都倉投入、そしてカウンター局面で最も怖い永井が下がったことの2つがトリガーとなったかもしれない。

ちなみに78分に片山が投入されてからは、片山がロングスロー役になっている。

 

 

スコアレスのまま時間が進み、試合の分かれ目になりそうな予感がしたのはFC東京が82分に行った2枚替え。

 

シルバ→原

ディエゴ→アダイウトン

 

単純に言えば、MFを1枚削ってFWを増やす交代。規則正しく守るセレッソに対して、レアンドロアダイウトン、原と「予期しないプレー」ができる選手を前に3枚並べる。

 

第7節・鹿島戦の内容を思い出すと、相手にボールを持たれる時間が増えると非常に苦しくなるリスキーな采配でもあるが、この試合ではデメリットをぼかすことができていた。

それはセレッソが縦に速い展開にお付き合いしてくれたからだと思う。

 

 

最後の10分以外は、ゲームをコントロールして進めることができたと思う。最後の10分は、よりリスクをかけてゴールを奪いにいったことで、スペースが生まれ、相手のカウンターも受けたが、全体的なプレー内容には満足している。

【公式】C大阪vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2020年8月9日):Jリーグ.jp

 

ティーナ監督も以上のようにコメントしており、満足こそしていないが、「最後の10分は、よりリスクをかけてゴールを奪いにいった」とのこと。

 

FC東京としては森重と渡辺で十分に対応できていたので、非常にありがたい展開に持ち込めた。

 

アディショナルタイムアダイウトンが「予期せぬプレー」で決定機を演出したが、ジンヒョンの好セーブに防がれてタイムアップ。

 

 

雑感

 引き分けが妥当でもあり、両チームとも2回ずつくらいあった決定機を生かせていれば勝てたという試合でもあった。

 

 

これまでのFC東京を踏まえると、この試合では守備のバランスに重きを置きながらも点を取る術が考えられたプランが見られた。レアンドロや永井に低い位置での守備を求めるのは不本意ではあるが、そこと付き合っていくことを受け入れたような気がする。

 


--最後まで良いプレーが続いたが?
今日はチーム全体が守備面でタイトにいけていた。自分のサイドの坂元(達裕)選手はキーマンだった。そこはタイトに行くようにした。特に今日はレアンドロ選手が下がってしっかり守備をやってくれてやりやすかった。左サイドも(安部)柊斗や髙萩(洋次郎)選手も出てきて連動した守備ができた。攻撃も守備が良かったぶん、レア(レアンドロ)や柊斗と距離感が良かった。まだ自分としては後半何回かミスがあったので、そこは修正していきたいと思います。

--今季はここまで好不調の波があったが、ようやく良い調子になってきたか?
自分自体が動いている感覚がある。レアや柊斗とのコンビネーションが良くなってきている感じはします。

--森重 真人がチームの現状について「好守のバランスがまだ見つかっていない」と話していたが、今日の出来は?
この間の試合(鳥栖戦)を受けて、レアンドロの位置を高く取らせたままか、全員守備全員攻撃にするか。今週の練習ではかなり話し合った。結果今日の試合のようにハマったので、良かったなと思います。

--攻撃面は不発だったが、加えていきたいところは?
今季は左サイドは安部 柊斗とレアンドロと3人。もっとコンビネーションを上げて、えぐれるように怖い攻撃をしていきたいです。

--今日はスタートからひさびさの[4-3-3]。守備がハマればうまくいく手ごたえも?
そうですね。練習でもレアに対して監督をはじめ自分たちも守備に関して落とし込めた。レアンドロがすごく頑張ってくれて、ハマった感じはすごくありました。

【公式】C大阪vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2020年8月9日):Jリーグ.jp

 

上記の小川のコメントがすべてを話しているので、説明するのも野暮かもしれないが、前節・鳥栖戦とは明確に守り方を変えたことを少しだけ。

小川のコメントを借りると鳥栖戦は「レアンドロの位置を高く取らせたまま」、セレッソ戦は「全員守備全員攻撃」の戦い方を選んだというところだろう。

個人的な意見としては、守備が「改善した」ではなく、「やり方を変えた」のほうがしっくりくる。レアンドロが守備をしないのはチームとして意図したものだったと思うので。

 

「シルバの背後をどう守ろう」、「レアンドロのゾーンディフェンス意識のゆるふわ感をどうしようか」などの細かい課題はあったと思うが、1つのベースを見せてくれた試合で非常に面白かった。

 

ただ、この戦い方をチームのベースにするというよりも、対セレッソを考えた上でのアプローチだった可能性も十分にある。

名古屋戦の行方やいかに。

 

 

 

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2020 J1リーグ第8節 FC東京vsサガン鳥栖 プレビュー

 


 

 

気まぐれ浮上。

1週間空くタイミングだったので気分です。 

 

 

前節のスタメン

FC東京

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前節のスタメン

 

 [4-4-2]ベース。

橋本の移籍と東の離脱によって、中盤の構成には少し悩みを抱えている印象。

 

 

 鳥栖 

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前節のスタメン

 

 開幕、再開直後は[4-3-3]だったが、前々節・清水戦から[4-4-2]に変更。微調整を施しながら最適なバランスを探している状況か。

 

 

鳥栖の戦い方予想

 

ボール保持

 

 再開後は[4-3-3]と[4-4-2]の2パターンで戦ってきたが、ここでは直近の試合で使用している[4-4-2]を軸に考える。

 

 

 

ポジションごとの主な役割や特徴

GK高丘:ペナルティーエリア少し外に位置し、3バックの真ん中の選手のように振舞う。強めのプレスがかかっても強気につなげる。外へ開くSBへのミドルレンジのキックもある。

CBエドゥアルド&原:高丘もビルドアップ参加するため、CB同士の幅をかなり広く取る。

SB森下&内田:大外の高い位置で張って幅を取る。内田のほうが低い位置での関与もでき、ドリブルで運んで剥がすプレーも。

CH松岡:相手FWの背中側でうろうろ。中盤の中央で経由地点となるのがメイン。

SH原川&小屋松:少し内寄りに位置し、相手DF-MFライン間の中途半端な位置を取る。

 

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鳥栖ビルドアップ時配置イメージ

 

2人のCBが大きく距離を取り、その間にはGKが入る形。松岡は相手のトップの背後で待ち受けるのが基本だが、あえて下りることでプレスの対象を自分に強制させる動きを取ったりもする。

 

ビルドアップ隊を最少人数に抑えることで、SBを高く上げて攻撃に厚みを持たせる。SBが大外で張る役割を持つ分、SHには内側で仕事ができるタイプを置く。

以上がざっくりとした保持時の特長だ。

 

 

 

FC東京の[4-4-2]と噛み合わせるとこのような感じになる。

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鳥栖保持×FC東京非保持のイメージ

ぱっと見でも各選手のマークがはっきりしない、いわゆる“噛み合わない”状態ができている。

ここで懸念されるのは相手のSBとSHをどう捕まえるか、だろう。

FC東京は2トップの規制がうまくかからなかった場合、SHの選手が目の前のCB、大外に張るSB、背後にいるSHと、相手の3選手を同時に意識しなければならないシチュエーションが生まれる。

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誰が誰をマークするか

この対応についてはかなりデリケートな部分。ボールホルダーの意図、相手の配置、味方の状況など、複数の要素を考えながら立ち位置を取る必要がある。

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やや大げさではあるが、上図のようにSHの対応がどこかに偏ると確実にバランスが崩れる。そうなったときに周りの選手がどのようにサポートするのかを整理することも重要なポイントだろう。

 

 アン・ヨンウやチアゴ・アウベスなど、個人で局面を打開できる選手がサブに眠っているのも要警戒。

 

 

後方に人を残さないぶん、攻→守の切り替えでCBが守るスペースが広がっている。高橋秀人、もしくはパク・ジョンスの起用は、「奪われたときのための保険」という理由もありそうだ。

 

 

 

ボール非保持

[4-4-2]ベース。

特徴は2トップが相手のCHを消す意識が高いこと。

FWの2選手は機を見てCBへのプレスにも出ていく。プレス後、ボールが自分の背中側へ送られると、戻って人を捕まえ、陣形をコンパクトに戻すプレスバックも徹底。

 

直近2試合は主に豊田(林)+石井のセットが長い時間で組まれているが、これは守備面も考えられた人選かもしれない。

特に豊田は、相手CHを意識した場所からCBへのアタックができる。プレスがハマらないと見るや位置を下げてバランスを整える作業もかなりこまめにやってくれる、ということで守備における貢献度も非常に高いように見えた。

 

2トップが広い範囲を埋める役割を任されているぶん、CHは中盤底に残っての仕事に集中しやすい。

一方でこの特徴は、2トップの守備が上手くハマらなかった時にはバランスを崩す仕組みでもある。

 

おそらく相手の2CBとCHのところは基本的に2トップが担当。そのため、CHが前に出てつぶす動きはワンテンポ遅れがちに見える。ここを2トップのプレスバックで解決できれば問題はないが、プレスに行ったあとだと逆重心の方向転換を強いられるのでそれが難しい場合も多い。

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2トップで守りたいエリアが広い

 

 

2トップが相手のCHを消せなかった時には[4-4-2]の[4-2]部分が空きやすくなる。前の2人と後ろ8人が分断気味になるというイメージだろうか。

 

 

そうなった場合、アプローチが遅くなってサイドへ展開され、自陣に撤退せざるを得なくなる、といった場面も何回か見られた。

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狙いたい場所

 

先発11人の構成を見ると、ゴール前で構えて跳ね返す展開が得意なメンバーではないはず。だからこそ2トップに多くのタスクを課し、安易に撤退しないような戦い方をとっているのかもしれない。

 

また、後方の守備で言うと、エドゥアルドのカバーによるウエイトが大きいので、彼を外すような攻撃のアプローチはしたい。

 

 

 

 

 

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【FC東京】J1第4節 横浜FM戦 シルバ起用で表れた守備時のメリット

 

 

たまには個人にフォーカスしたものも。

短編。 

 

ということで早速。

 

 

アルトゥール・シルバのストロングとは?

 

FC東京を応援している方々には、説明する必要もないだろうが、彼のストロングは「球際の強さ」「ボールを持ったときの力強さ」が挙げられる。

自陣に撤退して守り切る、というよりは積極的にアクションを起こす試合運びがしたいときに生きてくる選手だ。

 

今季は3節の川崎戦から先発で起用され、4節の横浜FM戦でも存在感を発揮。

フィジカルバトルでマルコスを吹っ飛ばしたシーン、前述した「ボールを持ったときの力強さ」は印象的だったと思うが、個人的にはそこよりも守備面でストロングがよく表れていたように感じた。

 

具体的には前線がプレスに出ていったときの連動。横浜FM戦ではトップに永井を起用したこともあって、いくらか前から追う場面があったが、そのときに実はシルバが効いていた。

 

 

実際に表れた現象

マリノスのビルドアップは、ボランチの選手が外に流れて受けに来る特徴がある。

そしてこの日のFC東京のプレスとして、SHが相手CBまで出ていく場面が何回か見られた。

これを掛け合わせると、FC東京がプレスを掛けた際に空きやすくなるのが下図の場所。

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扇原が外に流れて受けにくる

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左SHが相手のCBへプレスに出ていく

ここが空きやすくなるわけだが、そこでシルバの登場である。

おそらく試合前からこのような現象が発生する予測を持って臨んでいるはずで、シルバはここへ積極的に出ていく。彼の寄せていくスピード感や球際の激しさであれば潰せるという計算があったのだろう。

実際にこのパターンが発生したときには、しっかりと対応できていることが多かった。ファウルになることもあったが、大事なのは相手に時間を与えないこと。シルバはその役割を果たしたと言える。

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(ちなみに流れてくる扇原を潰すシーンは6:05秒あたり、小池を潰したシーンは20:55秒辺り!47:45あたりの寄せもgood!)

 

 

まとめ

守備面で言えば似たようなことが安部もできるかもしれないが、シルバは安部よりもボールを持ったときのパワーがある。そして髙萩にはないストロングを持っている。

よりパワーが必要な試合において、今季は昨季以上に戦力となってくれそうだ。

 

 

このようにFC東京が前からプレスを掛ける際は、広範囲に出てくるアルトゥール・シルバの潰しに注目してみると面白いかもしれない!それぞれの視点でサッカーを楽しもう!

それでは!

 

 

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2020 J1リーグ第4節 横浜F・マリノスvsFC東京 ~3得点を生んだ明確な狙いと取り戻した魂~

 

狙いを遂行できた攻撃、必要なものを思い出した守備。

そんな素敵な試合でした。

 

得点シーンに関連した部分がメインの内容となります。

それでは早速。 

 

 

スタメン

 

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前節からの変更箇所

 

横浜FM

エジガル→オナイウ

仲川→水沼

エリキ→遠藤

喜田→天野

高野→ティーラトン

伊藤→チアゴ

松原→小池

 

梶川、畠中、扇原、マルコス以外の7名を変更。

 

 

FC東京

 

安部→永井

レアンドロ→田川

 髙萩→橋本

小川→室屋(SB左右変更で中村帆が左、室屋が右)

 

4名入れ替え。ケガで離脱していた永井の先発復帰が最も大きなトピックか。

システムも前節・川崎戦の[4-2-3-1]から[4-4-2]に変更。

 

前半

「前から行くぞ」という気概を感じる人選のFC東京。思っていたよりは前から行かなかったが、しっかりと陣形が整っていれば永井のチェイスをトリガーにして後ろが連動していく。とはいえ昨季王者のパス回しも巧み。ハメつつ相手をうまく誘導できた、もしくは奪いきれたのは数回だったと思う。

 

ただ、それはそこまで問題ではなかった。

狙っていたのは前プレからのショートカウンターではなく、マリノスのアタッカーを自陣に引き込んでから、空けたスペースを使っていくこと。

マリノスの特徴であるハイプレスと、攻→守の切り替えでボールを奪いに来るところを逆手に取る。

 

 

ただ、裏のスペースが空いているとはいえ最後方にはチアゴがいる。単純にチアゴとバトルしていては分が悪いのでその前にひと工夫を加える。

 

ゴール前のスペースを取るためにまずサイドを取ることだ。

 

2分過ぎのシーン。切り替えのスピードで上回ってフリーとなった中村帆が前線のスペースへ走る田川へ。タイミングと精度が合わずにミスとなったが、これが狙いをだそうとした最初のシーンだったと思う。

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2:05あたりのシーン

こうなった瞬間に前4人が全員DFラインと駆け引きをしていて、田川、ディエゴ、永井の3人が裏へ抜け出そうとしているのが特徴的。たぶんこれしか狙っていなかった。

 

 

 

続いて良いシーン二つ目。11:20あたり。

マリノスの前プレから林→室屋へ浮き球のパス。そのこぼれ球の混戦からシルバが扇原をかわし、さらにはマルコスをどかして空洞化した中盤のスペースを運ぶ。そして戻り切れていないSBの背後へ走る永井へスルーパス。永井は少しもたついたようにも見えたが、逆サイドから上がってきた室屋へ届けてワンタッチで折り返し。キックの精度が伴わなかったが、逆サイドでは田川が詰めており、意図は見えた。

抜け出してからの判断力にやや難のある永井だが、ここは室屋の上りを待つためにあえて時間をかけたのかもしれない。考えすぎだろうか。

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シルバが扇原とマルコスの前に入ってスルーパス

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精度が伴わなかったが、狙いはこんなイメージ

 

 

 

一度サイドを取ってから素早く中に折り返してゴール前のスペースを取ろうとしていたのは左右どちらのサイドでも同じだったと思うが、よりダイナミックに前へ出ていける室屋がいる右サイドがメイン。さらに、右サイドのスペースを取れれば、左SHに入る田川がスピードを持ってゴール前へ飛び込めるという相性の良さも重なっていた。

 

そしてこのシーンの約1分後、12:45あたり。

東京がビルドアップでGKまで戻すとマリノスは高い位置からプレッシング。しかし、中盤の空洞にタイミングよくおりてきた東に通されて、1stプレス部隊は完全に置き去りに。

ボールホルダーの東と、永井&田川の抜け出しのタイミングはうまく合わなかったが、ディエゴを経由して右サイドのスペースを取った室屋へ。室屋がお約束のようにワンタッチで中へ折り返すとゴール前に飛び込んできた田川へと渡る。そこにチアゴがたまらずファウルで止めてPK獲得。

 

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東が空いた場所を見つけて顔を出す

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ディエゴのワンタッチパスから室屋がティーラトンの背後を取る

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室屋の折り返しに田川が飛び込んでPKゲット

深さこそ違えど、形としては1分前のシーンとまんま同じだった。終始押し込まれながらもちゃんと前に出てくる室屋、サボらずゴール前に入っていく田川。二人の良さを生かした上で狙いを持って手に入れたPKだったと言える。

 

 

 

その後は左に人数を掛けて的を絞らせないマリノスのボール保持に苦労しつつも、ゴール前は割らせません、という守備の集中力を見せてギリギリで守り切る。

守備のポイントは左SBに入った中村帆高。マリノスの保持に合わせてFC東京の陣形が右に寄せられると、構造的にどうしても孤立しがちだったが、安定感のある守備を披露した。内に絞ってファーポスト付近の危険な場所を埋めながら、逆に振られたら1対1対応。広いスペースで晒されることが増える役回りだったが、自分のやることを理解し、予測から準備された対応が素晴らしかった。

長谷川監督がどこまで計算していたかは不明だが、この安定した対応を何度も見たら、守備ポジショニングにやや難ありの小川ではなく、中村帆高を起用した理由もわかる。

 

上記で挙げた2分のシーンも、左足でスペースに蹴れる小川なら…、と思うポイントではあった。しかし、中村帆高はその小川よりも苦手な部分を差し引いても、多めのおつりがくる守備を見せてくれた。

 

 

話を戻して再び攻撃。29:20あたり。

右で少しパスを繋いだところから室屋が逆サイドへロングパス。ここは精度が伴わずチアゴにカットされた。

 

シーンは変わって42:40あたり。再び右サイドでパスをつないだあと、室屋から逆サイドへロングパスが送られる。今度は精度の伴ったパスでディエゴへ通ると、梶川の飛び出しが間に合わずFK獲得。

レッドカード相当のプレーにも見えたが、レアンドロがFKを決めたことで、結果的にPKになったのと同じ状況となった。

 

 

 

前半で取った2点はともに似たようなプレーがその前にあった。一度は失敗しても二度目は高い精度でやり直す。学習能力の高さを見せたようなチャンス創作だった。

愚直に相手の「ツボ」を狙い続けたFC東京と、そこを狙われているのは承知の上で「自分たちのサッカー」を貫くマリノス。この両チームだったからこその展開だったのかもしれない。

 

 

後半

 開始早々に追加点を決める。

GKからのロングキックから、永井が一人でDFを交わしてクロス。ファーサイドに飛び込んだレアンドロが丁寧かつ豪快に合わせた。

レアンドロがどこまで意図をもって狙っていたかは分からないが、「逆サイドからのクロス(折り返し)にはゴール前に詰めろ」という指示があったならばチームとして完璧なゴールといえるかもしれない。

前の質だけで取ったことは間違いではないが、そこにチームとしての意図があった(かもしれない)と考えるとなお一層いいゴールに見える。

 

 

その後は、前からのプレスや2トップのスピードでカウンターをちらつかせながらゴールを守る。終盤には東、室屋、中村帆高と足をつる選手が続々と出てきたが、守備の時間を増やされた上に、前へ出ていく役割を求められたこの3人がこうなるのは必然でもあった。むしろ中断明けのコンディションで80分近くまで普通にやれていたことを称えるべきだろう。

 

FC東京は5枠ある選手交代を使いながら試合を締めにかかる。構造的にうまく守れていない部分もあったとはいえ、最後のところで体を張ってゴールを死守する集中力、そして気合いは最後までなくならなかった。

戦術云々より、まずは強い気持ちを持って戦うこと。

前節・川崎戦で見失いかけていた昨季までの「魂」を完全に取り戻していた。

 

 

 

雑感

 

 得点の取り方、集中した守備も素晴らしかったが、この試合で勝てた大きな理由として挙げられるのは失点後のメンタルだったと思う。

前節・川崎戦で惨敗を喫したあとの今節。始まってすぐは気持ちを切り替えてテンション高く入るが、開始早々に先制を許す。正直、昨季後半の湘南のように、急に気持ちが切れてしまう姿がよぎった。だが実際は違った。そこにあったのは、ビハインドを背負いながら、自分たちがやるべきことを見失わずに戦い続けた姿。狙いが上手くいった攻撃、集中力を持続させてゴールを割らせなかった守備、これらを見られたのは失点後のメンタリティーがあったからだろう。

プレー遂行能力だけではなく、気持ちの強さも見せた試合だった。

 

ナイスゲーム。

 

 

 

 

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2020 J1リーグ第4節 横浜F・マリノスvsFC東京 直前プレビュー

 


 時間がないのでサクッと。

 

 

 

スタメン

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スタメン



 

 

FC東京

永井が復帰。割と時間がかかるのかなと見せかけておいて唐突な先発。ただ、どこまでできるのかは未知数っぽい。

前節からアルトゥール・シルバが続いてスタメン。さらには左SBが小川ではなく、中村帆であることも一つの予想外ポイントか。サプライズというほどではないけども。

 

 [4-4-2]も[4-3-3]もできそうなメンバーではあるが、永井がいることを考えると2トップのほうがあり得そうな予感。仮に田川がSHになるとしたら、ハードワークは前提として、どこまで頭を整理できるか。

 

 横浜FM

けっこうはっきりとターンオーバー。チアゴが先発復帰に、連戦フルタイム出場中の喜田をベンチスタートに。前のメンバーも前節からごっそり入れ替えた。

 

 

前から行ったれ!!

 

前から取りに行くなら絶対に2トップ。永井とディエゴでCBにアタックし、SHの詰めで前へ運ばせない守備が理想だ。「SHの守備は慣れたものですぜ」の東はいいとして、元々FWの選手である田川がどこまでやれるか。ここの守備が器用にこなせるかどうかがマリノスのビルドアップを妨害する最初のポイントになりそう。器用にこなせないのであれば「ハードワークでカバーしよう」の精神でやり切るしかない。

 

また、球際に強いシルバを起用したということは、引いて守るより奪いに行く意思表示にも見える。4点取らにゃいかんかった昨季の最終節でも先発だったし。

ボランチの二人は、マリノスの流動的に動くCHを捕まえる役割、ということだろうが、外まで動いて受けに来る喜田はベンチスタートで、和田もベンチ外。どちらかというとそんなに動かなさそうなタイプの扇原なので、選手起用はややミスマッチ感はあるが、その分、フリーに動くマルコスや天野を捕まえる役割にウエイトが移るか。シルバには手前の人を消していく役割が求められそうなので、「出ていったら必ず潰す」くらいでやれないと厳しいかもしれない。

 

 

 

 

ハイボールクロスの人選

マリノスのスタメンを見ると前節・湘南戦で決勝点を奪った水沼、オナイウのコンビが名前を連ねている。メンバーを変えただけであってスタイルは変えないかもしれないが、得意の「サイド突破からのグラウンダークロス」にこだわらず、オナイウを目掛けたハイボールでのクロスを送りこんでくる回数も増えてくると思われる。

中に強い選手が揃うFC東京にとっては好都合にも思えるが、中盤の脇を空けるとクロスが上がってきてしまうため、注意が必要だろう。

ラインが下がり切っている場合なら対応できそうだが、中途半端に上がっているタイミングが要注意。

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中盤脇からのクロスは注意

 

ティーラトン起用による影響

 

マリノスは左SBに高野ではなくティーラトンを起用してきた。上下動でシンプルにクロスを上げてくることが多い高野ではなく、中に入って受けてきたり、ビルドアップにおいても貢献度が高いティーラトンということで、マークする選手(たぶん東かな?)がどこまでついて行くのか、によって周りの動き方が変わるかもしれない。

中央までついて行くのであれば、左WGに入ると思われる遠藤へ渡ることは増えるはずなので、そこでのバトルに負けないこと、前に加勢してくるマルコス、及び天野をフリーでゴール前に抜けさせないこと。ボランチを含めた後ろの6人は頭がこんがらがるかもしれないが、マリノスに勝つためにはそこに対応できてこそ。

扇原と天野の組み合わせなので、ティーラトンがボランチのように振舞って、天野を一列上げる、ということは十分考えられる。

 

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横浜FMのビルド配置はこんな感じになりそう?

 

 

 

 

ショートカウンターに活路を

 

浦和も湘南もマリノス相手に狙っていたのはサイドチェンジからのスピードアップ、ないしはダイレクトなプレー。サイドでの密集を掻い潜れば逆サイドはスカスカで、湘南はサイドからファーに届けるクロスで2点をゲットした。

しかし、FC東京のメンバーを見ると高精度なサイドチェンジができそうな選手がいない。強いて言えば森重くらいか。それができそうな髙萩を起用しなかったということは、少なくとも前半ではショートカウンターからの得点を狙いたいのかなと。

 

積極的に圧力を掛けて相手バックラインに負荷を与え、後半に元気なブラジリアンを投入してパワーを上げていく、という作戦かもしれない。

 

 

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2020 J1リーグ第3節 FC東京vs川崎フロンターレ 前半シーン別考察

 

レビューじゃないです。

 

時間別にシーンを抜き出して、思ったことを書いていくだけのやつです。

権利的な問題で試合の画像が使えません。そして図を作るのも面倒なので、時間があるときにDAZN片手に見てください。

 

 

スタメン

 

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前節からの変更箇所

FC東京

システムを[4-3-3]から[4-2-3-1]に変更。

 

選手起用

アダイウトン→シルバ

 

室屋→中村帆

 

川崎

 

変更なし 

 

 

前半

 

まず触れなければならないのはここ。[4-2-3-1]でトップ下に安部を置く、対川崎を意識したように思える布陣でスタートしたが、早々に隙を見せた。前節・鹿島戦で2得点を演出している家長の左足を切れないのは致命的。レアンドロを左に置くことのデメリットが露呈した。

 

 

川崎の守備について。大外で受けたときにSB-CB間が開くのだが、その間に走りこまれたときにIHのカバーがワンテンポ遅れがち。元々脇坂がもっと前よりの選手であることも影響していると思う。CBが出てきてカバーするが、ここをつついていけたら綻びが出てきそうな気もした。

 

ツイートメモしてなかったけど、34:30のシーン。ハーフスペースをうろつく髙萩にジェジエウが食いつき、安部がその背後を取る。こういうCBが動かされる構造を利用した攻撃がもっと出せたらよかった。

 

レアンドロが内に絞って大島へのコースを消して、2CHでもっと中央を閉められたらこのパスが通らなかった気もする。SBへのマークは最初捨てて、パスが出てから寄せても十分に間に合う。

ジェジエウからこういうパスが出てくる以上、もっとボールホルダーに寄せる必要もあったかもしれない。

 

 

 

よく見ると家長がシルバをひきつけたことで大島がシュートを打てるスペースが生まれている。シルバは場所を埋めるより、広く動いてつぶしていく傾向が強かったので、そこを利用されたかもしれない。(結果的にそうなっただけかもしれないけど)

 

 

※冒頭のDAZNハイライト2:55あたり

17:10あたり。リプレイ明けだったので、最初どう追い込んだのかが分からないが、ディエゴがFC東京から見て右側に追い込んで、中盤の選手は下りる選手を捕まえていく。狭いエリアで時間を奪うことによってパスミスを誘発した。

この布陣でボールを奪いに行くならこれが理想形にも思えるが、失点時まで前プレがほぼなかったことから、プランを切り替えたと思われる。これでリズムをつかんでいけたらよかったが、これ以降はほとんど見られず…

 

24:55あたり。ここもディエゴで右に誘導できて人も捕まえられていたので、川崎はロングボールを選択。ダミアンとのバトルを強いられるのでCBに負荷は掛かるが、ここで勝つorセカンドを拾えればいい流れになりそうだった。セカンド拾われたけど。まあ、ビハインドだし、やり方自体は全然おかしくない。

 

 

突破されたところのそもそも球際の強度なさ過ぎ問題はまずいけど、森重のラインを下げるスピードもやや気になる。素早く下がってマイナスのコースを消せていればダミアンと剛のバトルを未然に防げたようにも見える。

 

 

このシーン、レアンドロの守備があれだからクロスを許したと思われがちな気がするが、普通に川崎が上手。

家長が脇坂に渡してから裏を狙ったことで小川は中央へしぼってパスコースを消さないといけない。一番取られたらいけないのはゴール前のスペースだから。家長は見せかけただけで止まったので、サイドで時間が生まれる。脇坂が縦に抜けて森重をどかしてカットインのコースを空ける。時間に余裕を持っている家長がフリーでクロス。という流れ。

エリア内でほぼ数的同数だし、帆高は2対1を作られているので、シュートブロックでなんとかするしかなかったと思うけど、股下ぬけちゃってぐぬぬ

 

 

 

たぶんこの試合のプランとしては、自陣で守りながらこれをたくさん出したかったのかなと。奪ってからディエゴに当てて、レアンドロに落とす。レアンドロを運び役にさせて柊斗とディエゴを裏に走らせる。このシーンでは安部の切り替えの早さが抜群だったけど、登里もちゃんとついていってなんとかした。

 

 

家長にパスが出たタイミングで小川が食いついて背後にスペースを空ける。そこに山根が飛び込んできて対応が遅れるとまたマイナスクロスからダミアンへ。家長へのパスをSHの対応でなんとかできる、という認識があれば食いつかなかったかもしれないし、単純に小川が慌てて出ていっただけかもしれない。「自分が出ないとまずい!」と思ったのなら、レアンドロSH起用のデメリットが出た形と言えるかも。

2点目と同じで森重が下がってコースを消せたらよかった。

 

 

まあFC東京の守備もお世辞にも良いとは言えなかったけど、川崎のCBの配球力が高かったのも事実。ここでも挙げたジェジエウの縦パスや、37分の谷口の左足のパスなど、CBへのプレスが半端だと簡単に通される部分も守備対応を難しくしたポイントになったはず。

 

 

以上

 

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2020 J1リーグ第2節 柏レイソルvsFC東京 レビュー

 

4ヵ月ぶりのJ1再開は熱いものがこみ上げましたね。

以前のような週末とともにこの記事も戻ってきました。

 

 

それでは早速。 

 

 

スタメン

 

 

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前節からの変更箇所

 

選手起用

クリスティアーノマテウス・サヴィオ

三原→大谷

クリスティアーノ、三原ともにベンチ外

 

ポジション

ヒシャルジソン→アンカー

大谷→IH

 

FC東京

選手起用

田川→アダイウトン

三田→東

橋本→安部

中村帆→小川

※三田と橋本はベンチ外

 

ポジション

髙萩→アンカー

安部→IH

 

 

前半

 

まずスタメン発表時でのトピックとなった、両チームのアンカー選手ベンチ外。

ここの変更について、FC東京はキャラクターは変われど、役割はそこまで変わらない。髙萩のところでのバトルが頻発しなければ大きな問題はないと見込んでいた。

対して、柏は広範囲に動いて前向きでの潰しが得意なタイプ(と思われる)のヒシャルジソンが中盤の底へ移動。相方となる大谷は自陣撤退時こそヒシャルジソンと横並びのようになるが、プレス時や保持時には前へ出ていく役割を担っていた。

 

 

柏の保持に話を移す。

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FC東京の守備は外が空く

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大谷が持つ保持時のタスク

中盤より前の外のスペースを大きく空ける東京。柏はそのスペースを使って前進しながら、ゴール前をこじ開けにかかる。この切取り部分はヒシャルジソンが1列下りているが、配置を変えないまま、2CBから簡単にSBへ出されることもあった。

 

 

外でフリーになる高橋峻に真ん中を空けすぎないようにして前に立つ安部。サヴィオについていく小川。

空きやすくなるSB-CB間へは大谷が走りこむ設計に見えた。

ここでCBが外へカバーにいけばオルンガへのパスが通りやすくなるため、「ここに動いたら君たちはどうするんだい?」と選択肢を突き付けていく攻撃だったのだろう。

カウンターの脅威を残すために[4-3]で守るFC東京に「ここは誰がついて行く?」という迷いを作る意味で柏のこの動きは理解できた。

 

ただし、そこで割を食ったのがヒシャルジソン。

 

柏はスローインからの被カウンターでヒシャルジソンに“尻ぬぐい”1回目が訪れる。

攻撃で上がっていた大谷は自陣におらず、相手に前を取られた高橋峻も進路を塞げない。晒されたヒシャルジソンが強引に止めて警告を受けた。 開始わずか6分過ぎ。

早い時間で守備のキーマンにイエローカードを誘発させたレアンドロの推進力はさすがの一言。守備の役割を最小限に抑えていた意味が早くも表れたと言っていいだろう。

 

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ヒシャルジソンの警告を誘発

 

そして2回目は11分になる直前。オフサイドのあとのクイックリスタート?(映っていなかったので詳細は不明)からこぼれ球をディエゴが拾うと、ヒシャルジソンがたまらずファウル。このときも大谷は中盤にいなかった。

非常にグレーゾーンだったと思うが、主審の判定はノーカード。次のグレーなプレーは確実にoutだろうという「退場スーパーリーチ状態」に。

 

 

この柏右サイドからの前進をよく思わなかったのか、おそらく10分過ぎくらいから東を右、レアンドロを左に置く“なんちゃって[4‐4‐2]”に変更。“なんちゃって”にしているのは中盤のラインを「4」と呼ぶにはレアンドロの位置がほかの中盤選手と連動してこないから。

とは言え、レアンドロがある程度、高橋峻を追ってくれることで安部は中盤、小川は後ろにとどまることができ、2人は守備がやりやすそうになった。

 

 

20分くらいまでを見ると、「柏の右サイド攻撃vsFC東京の左サイド起点カウンター」といった構図で進みそうだったが、1つの変化が起きたのは28分。ヒシャルジソンから受けたファウルで痛めていたディエゴがプレー続行不可と判断し、田川を投入。

田川を左SHの位置に置き、レアンドロを1つ前へ。

 

 

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田川投入後

田川はレアンドロよりも低い位置まで守備に参加する。田川にはレアンドロのようなカウンターの起点になる役割はできないため、守備の比重を強めた、という判断かもしれない。

これによって左サイド守備はかなり落ち着いたように思うが、代わりにカウンターの脅威はかなり薄れた。レアンドロが前へ移ったことで、奪ってから運んでもらう起点役がいなくなったからだろう。

 

40分過ぎ頃、やや偶発的な流れから江坂→オルンガで決定機を作られたが、お互いにゴールに迫るシーンが少ないまま前半は終了。

 

 

後半

 FC東京がシステムをいじる。

安部をトップ下に入れて、田川が右、レアンドロが左の[4‐2‐1‐3]のような配置に。

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後半開始時のシステム

 

 --リーグ戦初先発となった安部 柊斗選手の評価は?
後半はトップ下にして非常に彼の持ち味が出たのかなと。前半は硬さもあって非常にハードワークの相手に持ち味が出なかったですが、後半はアグレッシブになって良かったと思います。

 

 

自陣での守備では非常に効いていたように見えたので、長谷川監督がここで言う安部の「持ち味」は、前に圧力を掛けていく守備であったり、攻撃でも前に絡んでいく動きのことを指しているのではないだろうか。

 

ちょっと今日は縦に急ぎ過ぎていたので、後半は(東)慶悟をボランチにしてから中盤のハマりが良くなった。

※両コメントはJリーグ公式サイトから引用

柏vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2020年7月4日):Jリーグ.jp

 

ロングボールばかりになっていた組み立てのところを整理する狙いで、東をはっきりとCHにした意味もあった様子。前半のビルドアップは髙萩と東が気を利かせて成立していたので、この2人をビルドアップに関与させやすい位置に置いたのも理解できる。

 

 

長谷川監督のコメントを読む限り、以上の理由でのシステム変更とのことだが、実際の現象としては再び中盤の脇を簡単に運ばれるシーンが増える。安部がアンカーへプレッシャーを掛ける役割自体は適任だと思う。ただし、柏としてはそこをケアされようがSBは簡単に使える。

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外から簡単に運ばれる

この形を組むなら、もっと3トップで中央へ誘導するアプローチが必要だが、再開後のコンディション面も含めてそれを起用にこなせる人選ではない。

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こんな守備がやりたかった?

 

 

これらの要素から2CH脇を柏の前進のポイントにされ、FC東京はボールを持たれると撤退せざるを得ない。東と髙萩の「健太式守備」3年目を迎える猛者たちの動きで大崩れしないのはさすがではあった。

しかし、江坂からラストパスが飛んできて危険なシーン自体はいくつも作られた。守備が崩されて、というよりは「江坂に時間を与えると危ない」だったが、それを許した理由が「簡単に撤退する守備」でもあった。

 

 

柏がチャンスを作りながら進んだ後半だが、60分にこの試合のターニングポイントが訪れる。ヒシャルジソンの退場だ。

サイドからアダイウトンにスルスルと抜けられると、中盤で晒されたヒシャルジソンが後方からのチャレンジでファウル。一度目(警告)、二度目(ノーカード)とギリギリで潜り抜けたが、三度目に逃げ場はなかった。

ちなみにこの時も大谷は前にいた。明らかにチーム全体のリスクマネジメント失敗と言えるだろう。

 

 

数的優位を得たFC東京は、直後のCKから先制。

キム・スンギュの頭上を越すキックから、森重が折り返して渡辺が詰める。CBコンビでネットを揺らした。

 

 

中盤のフィルター役を失った柏はサヴィオを下げて戸嶋を投入。大谷と横並びの[4‐4‐1]。HTにヒシャルジソン→戸嶋でこのような形に変えるかと思ったが、ネルシーニョはリスクを取り、結果的に賭けに敗れた。

 

7分後には大谷→神谷で[4‐3‐2]に。さらに8分後には瀬川→仲間でアタッカーをフレッシュにして、得点を狙いに行く。

 

戦術的には1人足りない状況での展開なので、1点ビハインドで点を取るためにクリエイティブな選手を投入して引き分けに持ち込みたい狙いでした。

ネルシーニョの試合後コメント

柏vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2020年7月4日):Jリーグ.jp

 

 

FC東京は数的優位ながら、プレーを切れずにカウンターを食らう場面や、安易にスペースを使われる守備など、課題は残ったが、自分たちができる範囲でうまく時間を使ってタイムアップ。

再開後初戦で3ポイントを獲得した。

 

 

雑感

ディエゴが早い時間で下がるアクシデントはあったが、今季は前のタレントを生かしたサッカーをしたいという意思は開幕から継続。それに伴ってどうしても後ろの選手の負担が大きくなるが、「カウンターで刺しゃええ」の精神。

実際にカウンターからヒシャルジソンに警告を誘発し、後半は個人能力で抜け出したところから退場に追い込んでいるので一定の効果はあると言える。

ただ、数的優位×1点リードの状況でも同じスタイルを貫くなら、追加点は取らなければいけなかったと思う。守備での隙を許容する割にチャンスが作れなかったのは、このサッカーを続けるにあたって改善したいポイントだろう。

 

 

 

 

 

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