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【FC東京】健太式[4-3-3]が目指すものとは

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はじめに

今年から採用された[4-3-3]というシステム。ここまで公式戦4戦3勝(ACLPO1勝、ACL1勝1分、リーグ戦1勝)と結果は出ているものの、新システムが思うように機能しているかと言えばそうではないだろう。

 

直近の3試合をピックアップすると、すべての試合で守備がうまくハマらず、後半で守備の修正を加えている。しかしながら、次の試合になればまた前の試合の前半と同じような守り方でスタートするのだ。

 

おそらくそこには志しているスタイルがあるからではないだろうか。その“志しているなにか”を考えていくのが今回の記事である。

 

 

FC東京の[4-3-3]とは

今年から[4-3-3]のシステムを導入したが、同じシステムでも様々な守り方がある。中盤3枚を平行に並べたり(ex.20年川崎F)、アンカーの前に4枚を並べて[4-1-4-1]のように振舞ったりする(ex.20年鳥栖)場合もある。

 

その中でもFC東京の[4-3-3]は、あえて細かく分解して表現するならば[4-1-2-3]と言えるだろう。これは前に人数をかけているぶん前線で圧力を高めやすいが、後ろが手薄になる特徴がある。

 

今季の編成において、アダイウトンレアンドロを加えたことで攻撃的なメンバーがそろった。それによって前線に多く枚数を使えるこのシステムを選択したとも受け取れるが、ウイイレと違って実際のサッカーではしっかりとした仕組みを落とし込んで実行させなければ無理が出てくるだろう。

 

では、この攻撃的な布陣でどのように守りたいのか。

 

 

非保持時の一番の目的は?

ここまでの試合を見ると、前線の選手たちが前から追いかけていく傾向がみられる。昨季よりも明らかに守備の開始地点が高くなっており、意識的に全体の重心を前にしていると感じた。これは敵陣でのプレー時間を増やしたいことが一番の理由だろう。

相手がつないでくるならボールを奪って人数をかけたショートカウンター、ロングボールで逃げるなら強いCBのところで跳ね返して回収、といった形が理想形なのではないかと考える。

 

 

対4バック

 

対4バックのサンプルとして清水戦を取り上げると守備の構造はこんなイメージだろうか。

 

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※イメージ

 

図中にある矢印の多さからも分かると思うが、プレス隊となる前線の5人は見るべき選手が複数存在する。単純に数だけで言えば相手6人(GKも含めれば7人)を5人で見ているため、マンツーマンでつくと相手が1人余ってしまう。そうなればどこかで”浮いた1人分”を埋め合わせなければならない、ということでこのようになる。

実際にどういうタスクが与えられていたかは定かではないが、全員が頭を使いながら連動していかなければならないことは事実。

 

 

[4-3-3]を使うチームでは、片方のIHを前に押し出すことで疑似的な[4-4-2]を作り出してプレスを掛けていく守り方(ex.マンチェスターシティ)が比較的多くみられる。これは対4バックのときに相手の配置と噛み合わせやすくなることが大きな理由だろう。

 

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※IHを前に押し出して[4-4-2]に可変した場合。こうすると各マーカーがはっきりする。

 

WGを下げたくない

 

しかし、東京はこれとは異なり、[4-3-3]をおおよそ維持しながらプレスを掛ける。推測だが、これはWGに配置されたアタッカーを極力低い位置に下げたくないからなのではないか。

IHを上げればWGのマーカーはSBと明確になる代わりに守備の立ち位置が低くなる。相手のSBをフリーにしてはいけないからだ。

そうなってしまうと本来攻撃力を生かしたいがゆえに起用しているWGの個性が生かしづらくなる。それを嫌ってWGを高い位置のまま守備に参加できるような仕組みを意図的に扱っていると感じた。

 

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※自陣撤退時のイメージ。WGがここまで下がると良さが生かしづらい。

 

しかしながら、その守り方を採用すると、どの試合でも前半はショートパスであっさり守備の1stラインを突破され、空洞化した中盤を簡単に使われている。

 

これでは、同システムのウィークポイントである”アンカー脇”を簡単に使われ、DF陣は相手にスペースを与えた状態での対応を強いられてしまう。

 

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※1stプレスを突破されるときの一例。選択肢を狭めていかないとIHのマークが定まりにくい。

 

IHのタスクが多すぎるように見える理由の一つとして、おそらく3トップの制限がかかり切っていないことが挙げられると思う。

「連動」という以前にこのシステムで戦っていくにはもっと丁寧に、かつ細かくこだわっていかなければいけないだろう。結果として、アタッカーたちに繊細な守備の仕事を求めることになるが、前に残したいのであればそこからは逃れられない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

J1リーグ第1節 独断と偏見の見どころ 後編

 

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後編! 

 

 

清水vsFC東京

別途プレビューを準備

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横浜FMvsG大阪

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※前試合のスタメン

横浜FM

昨季は7連勝フィニッシュを果たし、最終盤に驚異的な強さを見せた19年リーグ王者。富士ゼロックススーパーカップではPK戦の末、神戸に敗れたが、ACLは2試合ともアジアのチームを圧倒して2連勝を記録している。畠中の状態が不安要素にはなるが、そこの穴は伊藤が十分に埋めることができるだろう。

G大阪とは昨季に続いて開幕戦でぶつかる。昨季は2試合合計6-3と打ち合いの傾向がみられるが、今季も殴り合う展開となるか。注目は松原とティーラトンの両SB。G大阪が[3-1-4-2]の布陣を敷くと仮定すると、SBの位置はフリーになりやすい。起点となれる二人からの攻撃はカギを握りそうだ。

 

G大阪

既存戦力に加えて昌子や小野、新里など即戦力を補強。各ポジションに強烈な個がそろっているが、その選手たちをコントロール・マネジメントする宮本監督の役回りは非常に重要なものとなるはずだ。

ロジカルに崩してくる横浜FMとは相性が悪そうにも思えるが、井手口の運動量や宇佐美の一発など理不尽なポイントを多く持っているので、昨季王者を倒すチャンスは大いにある。必要不可欠な存在ではあるが、起用法が問われる遠藤とどう向き合っていくのかも気になるポイント。

 

広島vs鹿島

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※前試合のスタメン

広島

中盤のハードワーカー稲垣が抜けたものの、既存戦力のほとんどが残留。昨季までのベースの上に新戦力を含めた新しいエッセンスを加えていく。スローガンの「積攻」もそのような意味合いを示しているだろう。

ルヴァンカップでは昇格組の横浜FCに貫禄勝ち。強固な3バックを軸にした守備、ペレイラ&ヴィエイラの剛と柔を掛け合わせた前線、森島と柏の強力左サイドといった昨季からのストロングを存分に生かすことができれば、[4-4-2]ベースが予想される鹿島に対して主導権を握ることもできるだろう。

 

鹿島

チームが進む道を大きく切り替えようとしている今季。ACLプレーオフ敗退に加えてルヴァンカップ・名古屋戦でも黒星がつき、幸先の悪いスタートになっている。しかしながら、スカッドは活きのいい若手たちも含めて非常に充実している印象で、新スタイルが未完成ながらも地力で勝ちをつかめるチームではあるはずだ。

 その中でも若手の起用が目立っており、ルヴァンカップのレギュレーションという側面はあるものの、関川、荒木、松村がすでに出場を果たしている。ブラジル国籍のアタッカーたちと活きのいい若手が全体に馴染んでくると非常に怖い存在になってくるはずだ。

 

 

神戸vs横浜FC

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※前試合のスタメン

神戸

横浜FMと同様にACLは連勝スタート。昨季途中から指揮を執るフィンク監督が一つの軸を持ってチームを作り上げてきている印象だ。

ACL第2節でフェルマーレンが途中で退いており、コンディションは気になるところ。この試合では渡部が代わりに入ったが、もし出られないようであればシステム変更を含めてどのような布陣を敷いてくるのかは気になるポイント。

開幕戦の相手は横浜FC。単純すぎる頭で考えるとひたすらドウグラスに放り込んでおくだけで点が取れそうな気もするが、おそらくこれまでの哲学は守ってくるだろう。相手のスピーディーな前線が仕掛けてくるプレスをどう掻い潜るかに注目していきたい。

 

横浜FC

昇格1年目の今季はトップ10入りを目指す。昨季は途中から就任した下平監督の手腕と若手の爆発力で自動昇格を勝ち取ったが、J1の舞台でどれほどの力を発揮できるか。力試しとなるルヴァンカップ・広島戦は0-2で敗戦。個人能力の差もあってか難しい船出となった。

リーグ初戦の相手は神戸。指揮官のリクエストで獲得した可能性もありそうな左利きのCB小林は、契約上の理由で出場することができない。今季の主力候補でもある小林をいきなり使えないのは少なからず痛手になるだろう。

ドウグラスを止められるだけの能力をもったCBはおらず、自陣深くで守ることには一定のリスクを伴う。そうなると極力ボールを持ちたい、もしくは敵陣でのプレーを多くしたいのではないかと予想するが、後方でのボール保持を心得ている神戸相手に、どれだけプレッシングが機能するかは一つの見どころになりそうだ。

 

2020 J1リーグ第1節 清水エスパルスvsFC東京 プレビュー

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前試合のスタメン

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清水

※図はルヴァンカップGS第1節・川崎F戦のメンバー

今季からピーター・クラモフスキー監督を招き、[4-2-1-3]のシステムに取り組んでいる。昨季の横浜FMのようなイメージで作り上げている予想はできるが、選手のタイプが横浜FMとは異なるのがやや気になる点。

岡崎は契約上の理由で出場不可。川崎F戦ではU-21枠の関係もあってボランチの一角に西村を起用したが、その縛りがないリーグ戦では誰を起用するか。

20日にはカルリーニョスの加入が発表された。登録が間に合えば当日のメンバーに名を連ねる可能性もある。左からのカットインを得意にするタイプらしいが、出場可否やいかに。

カルリーニョス ジュニオ選手(FCルガーノ)完全移籍にて加入決定のお知らせ|清水エスパルス - 公式WEBサイト

 

FC東京

※図はACLのGS第2節・パース戦のメンバー

今季から挑戦中の[4-3-3]は自由な3トップが特徴的。

ここまでの公式戦2試合はブラジリアントリオがそろって先発しているが、原や紺野が右WGに入る可能性もある。直近2試合は11人が固定されているが、国内リーグでも同じメンバーを起用するか。

 

 

 

清水の戦い方予想

初めに断っておくとルヴァンカップ川崎F戦を見ていないため、分析結果ではなく完全に推測。実際と異なる可能性はあるが、ご容赦願いたい。

 

以降はヒロさん(https://twitter.com/hiro121720_yfm)が作成したレビューを参考にしながら進めていく。

 

 

 

ボール保持

清水の布陣は数字で表すならば[4-2-1-3]だが、実際の配置は異なってくる。

DHの一人をCBの間に下ろし、両SBを中盤の内側へ押し込む。SBは左右が非対称気味であり、右の奥井はDHの脇、石毛はトップ下近くまで移動。

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表現が難しいが、無理やり表すのであれば[3-2-2-3]とでも言うだろうか。

 

これを東京の布陣と噛み合わせると以下のようになる。

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図中にも記したとおり、前線は[3-2]のところが完全に噛み合う。その背後にいる石毛とドゥトラに関しては明確なマーカーが定まりにくいため、彼らをどう捕まえるか、もしくは彼らまで到達させないことが重要だ。

これまでの東京の試合を見てきた限りでは、そこまで届けさせないように前線から圧力を強めていくのがベターだろう。ACLの2試合では不本意な前半が続いているが、ゲーム開始からエンジンをかけられるかどうかは最初の見どころになる。

 

また、3トップと2IHの5人は確実に前向きの意識が強くなるため、アンカー橋本の守備タスクは難しくなりそうだ。プレスを掻い潜られたときは中盤エリアを一人で管理しながら、相手WG(特に左の西澤)にボールが渡ったらカットインのコースを消す作業も行うことが好ましい。しかし、この役割を90分まっとうできるとは考えにくいため、相手のWGはSBに頑張って止めてもらう、といった割り切りが必要な時間も出てくるだろう。

 

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最も狙いたいのはカウンター。清水がビルドアップで可変するならば、裏を返すと守備の配置が整っていないことになる。

川崎F戦でもカウンターからSBがいないスペースを使われ、ダミアンと竹内が競り合うミスマッチを突かれていた様子。スペースさえあれば一人でゴールまで近づける選手が東京にもそろっているため、サイドのスペースを積極的に利用したい。このときに中央に残っていてほしいのはアダイウトン。ブラジリアントリオの中では競り合いからのヘディングやゴール前の嗅覚に優れているアタッカーをサイドではなくゴール前で勝負させたい。

 

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このカウンターを軸に考えると、個人的には安部は右サイドに起用してほしい。SBが本職の奥井がいる(東京から見て)左サイドより、本来中盤より前が本職の石毛がいる右サイドでの攻撃に力を使いたいから。右WGの守備を極力減らし、そのぶん安部がカバーする。カウンターに転じたら安部と室屋の走れる二人がWGを素早くサポートする、といった攻撃を多くできればゴールを割ることはそう難しくないのではないかと考える。

 

 

 

ボール非保持

(こちらは特に情報がないため、ほぼ推測)

 

ボールを持ちたい清水は[4-2-1-3]の形で前線から強めのプレスを掛けてくると予想する。右の金子は追い直しをしてくれる上に気が利いた守備ができるため、清水としては極力そちらのサイドに誘導したい考えがあるかもしれない。

東京のボール保持におけるストロングサイドは左。つまり金子がいる清水の右サイドとバッティングすることになる。そこでの攻防を優位に進めたほうが主導権を握りそうだ。

 

カウンターでは右を狙っていきたいと記述したが、ビルドアップは左で作っていくと思われる。狙いたいのは奥井を定位置の外へ引っ張り出すこと。奥井をどかせばおそらくCBが外に出てくるが、そのときにスライドの関係でおそらく石毛がゴール前を守らなければならなくなる。

例えばそこにアダイウトンをぶつければミスマッチが生まれることは言うまでもない。この状況を作り出すために左からのビルドアップは工夫していきたいところだ。

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注目選手

清水:石毛 秀樹

ルヴァンカップ川崎F戦でゴールを決めた今季唯一の得点者。左SBとは名ばかりで、トップ下のように振る舞う役割は良くも悪くもカギを握る。彼が的確にサポートできれば、ビルドアップでも脅威を与えられるだろう。

 

 

FC東京:ディエゴ オリヴェイラ

青赤のユニフォームをまとって3年目を迎えた大エース。今季はスタートポジションをサイドに移すことが増えそうだが、昨季までと変わりなく理不尽さを見せつけることができるか。

SBがサイドからいなくなる清水を相手にしたとき、彼が使えるスペースは広がるはず。そこからゴールを演出できれば勝点3は手にできるはずだ。

 

 

 

J1リーグ第1節 独断と偏見の見どころ 前編

 

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完全に個人的な、そして簡易的な見どころつらつらと。

まずは金曜&土曜ぶん。

 

 

湘南vs浦和

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ルヴァンカップ第1節のメンバー

湘南

プレーオフに回るもなんとかJ1に生き残った。いろいろなことがあった影響でスカッドは大きく入れ替わったが、浮嶋監督は続投し、3年連続のJ1に挑む。

ルヴァンカップ・大分戦では終了間際に獲得したPKを決め切って勝利。結果だけで見れば幸先のよいスタートを切った。

古巣戦となる選手が多い浦和戦。新主将を任された岡本や10番を背負う山田には様々な思いがあるだろう。これまでのように「湘南スタイル」のベースを持ちながらどのようなチャレンジをしていくのか楽しみである。

 

浦和

17~18年の堀監督期以外では長らく使用してきた3バックシステムに別れを告げ、今季から[4-4-2]に移行した浦和。本来2トップで生きる杉本や昨季J2得点王のレオナルドには興梠に次ぐ得点源としての働きが期待される。リーグ前に開幕したルヴァンカップGS第1節ではその二人がそろって2ゴールを挙げ、5得点大勝の華麗な幕開けを果たした。

昨季は最後まで上手な使い方が見つからなかった印象がある山中だが、おそらく4バックでは良さが生きてくる。仙台戦でも内側を駆け上がる動きで得点を演出した。WBで起用されていたアタッカー(関根や汰木など)も守備をする位置が高くなることで攻撃に集中できるようになるかもしれない。

 

仙台vs名古屋

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ルヴァンカップ第1節のメンバー

仙台

長期政権を築いてきた渡邉監督が退任し、昨季まで山形を率いていた木山監督を招聘した。初陣となった浦和戦では2-5と苦しい結果にはなったものの、主力選手の離脱が多いことに加えて攻守における約束事が浸透しきっていない面もあるだろう。

ゲデス、長沢、クエンカ(、赤﨑?)とアタッカー陣に長期離脱者が続出している中で期待がかかるのはジャーメインになるか。昨季はブレイクする兆しも見えた印象があるだけに、(チームとしてはよろしくないが)FWが手薄になっているいまの状況は本人にとってはチャンスと言える。

アレクサンドレ ゲデス、長沢駿 両選手の負傷について | ベガルタ仙台オフィシャルサイト

イサック クエンカ選手の負傷について | ベガルタ仙台オフィシャルサイト

アタッカーが不足している中で、イタリア国籍の監督が率いる名古屋との対戦は難しさがあるだろうが、どこに得点の可能性を見いだすか。ケガ人が多いとはいえ1ポイントを狙う戦いにはならないはず。めぐってきたチャンスを確実に決め切りたい。

 

名古屋

フィッカデンティ監督が「アグレッシブさ」を掲げている今季。ルヴァンカップ・鹿島戦ではジョーと(トップコンディションの)山﨑を欠く状況での戦いを強いられたが、1-0という"らしい"スコアで勝利を手にした。

マテウス、相馬、(この試合では1トップに入った)前田など、サイドから個人で打開できる選手が多く、おそらくそこが攻撃の軸になる。彼らを生かすためにも1トップがキープしたり時間を作ったりする作業は重要性を増す。ジョーと山﨑は二人とも負傷によって開幕はつまずく形になっているが、彼らの稼働率は名古屋の攻撃力に多大な影響を及ぼしそうだ。

 

柏vs札幌

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ルヴァンカップ第1節のメンバー

ルヴァンカップではG大阪を下し、ちばぎんカップに続いて2連勝を飾った。前線にそろうタレントはもちろんのこと、後方からのビルドアップにも優れており、ボールを自由に持たせると失点のリスクを感じるチームの一つだろう。

キープレーヤーは江坂。もともとはFWの選手だが、中盤エリアでのプレーも得意としており「ラストパサー兼フィニッシャー」として機能している。マンマーク要素が強い札幌が、下りていく彼にどこまでついていくのか、どう捕まえるのか、という点は個人的な最注目ポイントである。

 

札幌

昨季からメンバーをほぼ入れ換えず、ミシャ体制3年目を迎える。相変わらず福森のキックは針の穴を通すような精度の高さで、セットプレーは大きな武器となるだろう。

少し気になる点としては、先日発表された深井のケガ。開幕から数試合は欠場する見込みであり、中盤のリンクマンが欠けたことによる影響はどの程度になるか。主将の宮澤や大卒の田中、高嶺が深井の穴を感じさせない働きができるかどうかに注目したい。

ニュース | 北海道コンサドーレ札幌オフィシャルサイト

柏を相手に狙いたいのはアンカー脇のスペース。迎撃にはやや不安の残るCBをつり出した裏に誰かが走りこめば決定機が作れるだろう。

 

川崎Fvs鳥栖

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ルヴァンカップ第1節のメンバー

川崎F

リーグタイトル奪還を目指す川崎Fは長らく親しんだ[4-2-3-1]から[4-3-3]にシステムを変更。トップ下が天職であろう中村憲剛が長期離脱で不在という要素はあるものの、思い切った改革に取り組んでいる。目線を変えれば中村憲剛依存からの脱却という意味合いも含まれているのかもしれない。

ルヴァンカップ・清水戦では5得点を奪って大勝スタート。左WGに個で打開できる長谷川と三笘、右WGにCFに近いタイプの宮代と旗手を起用していることから、左がチャンスメークを、右がゴール前での仕事を任されているだろうか。ただ、この試合では左でも右でも、さらには中央からでも起点が作れており、攻撃の幅は非常に広く感じた。

   

鳥栖

こちらも新システムの[4-3-3]にチャレンジしている真っ最中。ルヴァンカップ・札幌戦では3失点を喫して苦しい結果にはなったが、攻撃では小屋松や本田らがいる左サイドからチャンスを演出することはできていた。完成度はまだまだといったところだろうが、今季の鳥栖は"主体的なサッカー"を見せてくれそうだ。

各ポジションの主力がごっそり抜かれたが、主にJ2からの補強で人員は確保。あとはその新戦力たちがいかに活躍できるかにかかっている。

 

 

C大阪vs大分

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ルヴァンカップ第1節のメンバー

C大阪

相変わらず手堅いロティーセレッソ。京都とのプレシーズンマッチでも守備組織の堅実さはもちろん、ビルドアップも非常にオートマチックな形を披露した。水沼が抜けたものの、そこのポジションに入る坂元が良いアクセントとなっており、山形から加わった左利きのドリブラーはキーマンになりそうな予感。松田との右サイドのユニットをどう止めるかが他チームの課題になるかもしれない。

大分はボール保持のイメージが強いが、守備も全体がなかなか崩れない。昨季第9節での対戦では、お互いが睨み合いを続けたような展開のままスコアレスで終了した。今回は威嚇するだけでなく、引き金を引くタイミングを作っていけるか。

 

大分

片野坂体制を継続し、2年連続のJ1へ挑む。J2からの選手がメインではあるが、的確な補強を行って層も厚みが増した。昨季は藤本が抜けたあとに得点力が大きく落ち込んで停滞。昇格組として9位に入ったことは大健闘だが、まだまだ満足していない様子がうかがえる。

新たなフィニッシャーとして迎え入れられたのは知念と渡。J3で結果を残した髙澤もいるが、前者の二人が軸になるだろう。昨季と同じようなサッカーを志向するのであれば裏抜けが得意な二人のアタッカーにチャンスは訪れるはず。その訪れたチャンスをゴールに繋げられるかどうかで大分の順位が決まってきそうだ。

C大阪を相手にするとなるとやや馬力不足な気もするが、指揮官は相手の組織的な守備をこじ開けるためにどう動くか。セカンドプランの引き出しに注目したい。

 

パース戦 監督・選手コメント振り返り

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レビューはこちら。

 

 

Jリーグ公式のコメントからいろいろ考えていこうのコーナー。

 

www.jleague.jp

※コメント類はすべてこちらから引用

 

守備について

橋本(拳人)ら中盤が後ろに重い感じがあった。プレッシャーを掛けにいくときも、アンカーからなかなか出ていけない。本来ならアグレッシブにつぶしにいくところで、なかなか行けなかった。

 ※長谷川監督のコメント

 

中盤が後ろに重い感じ、とあるが、確かに前半は前と後ろがバラバラな印象があり、前から行くのか行かないのか半端になっている(見える)ことが多かった。

 

ハーフタイムに、「もう少し行っていいから」と指示した。「後ろが同数になってもいいから、しっかり対応しろ」と。

 ※長谷川監督のコメント

 

中盤の選手としては各々でなにか悩みながらプレーをしていたゆえに“バラバラ感”が出てしまったのだと思うが、そこをクリアにしてやるべき仕事をはっきりさせた結果が後半の内容に表れたのだろう。

 

 

前半は自分たちの攻撃ができなかった。後半からは速い攻撃ができたが、あのくらいのハードワークを早くやらないといけなかった。縦へのスプリントを前半からできれば、もっとラクな試合になったと思う。

 ※安部のコメント

守備の仕組みには課題アリだったが、やることをはっきりさせて単純に強度を上げていけば十分にボールを奪えることは示すことができた。これがJ1チーム相手にも通用するかは未知数だが、前半から圧力を高める守備ができれば、また守備のイメージも変わってくるかもしれない。

 

ビルドアップについて

橋本のポジションも下がり過ぎていたと思っている。相手の9番(※1トップ)の裏側でボールを持てれば、こちらの2CBがハーフウェーラインを越えて持つようなシーンがもっと増えたと思う。前半はなかなかそこを越すことができなかった。

※長谷川監督のコメント

[4-3-3]のシステムではビルドアップの鍵を握るであろうアンカー。東京でその位置を担っているのは橋本だが、彼の位置取りがうまくいっていないという認識のようだ。実際にCBから中央を経由して前進するシーンはほとんど記憶にない。相手にそこを意識させなければサイドもうまく使っていけないため、橋本だけに限らず中央を使ったビルドアップについては修正していきたい部分だろう。

 

 

 

 

おまけ

 

3トップに対して研究してくるところは出てくると思うが、紺野のようなタイプが効くと思っている、期待どおりのプレーをしてくれた。

※長谷川監督のコメント

 

やっとこれがスタート。これから出続けることが大事。明日から、また毎日良い準備をしていきたい。

 ※紺野のコメント

ACLでトップチームデビューを果たした紺野。大学で名を上げていたドリブラーが今季はやってくれそうだと思わせるプレーを見せた。外国籍の強烈なアタッカーがそろう前線だが、大卒ルーキーの即戦力として出番を勝ち取って今後も存在感のあるプレーを披露してもらいたい。

「4-3-3守備の再試験」 ACL GS第2節 FC東京vsパース・グローリー

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スタメン

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FC東京

前節・蔚山戦とまったく同じ。3トップはおそらく初期配置が図のとおりだったが、途中でディエゴ真ん中、アダイウトン左、レアンドロ右になっていたと思われる。

 

パース

蔚山と同じ[3-4-2-1]ベースのシステムを採用。後方から丁寧につないでくる。

 

 

前半

蔚山戦の再試験?

相手の戦い方こそ違えど、[4-3-3]の布陣で[3-4-2-1]の相手に挑む、前節・蔚山戦の"再試験"のような形になった。

 

東京の仕組みとしては蔚山戦の前半とおおよそ同じ。3トップで相手の3バックを牽制し、外に追い出したところをIHが捕まえにいく。

ただ、今回は蔚山戦とは少し違った問題点が出る。それはIHが相手のボランチも"しっかりと"捕まえなければならなかったことだ。"しっかりと"を少し強調したのは、パースのビルドアップで肝になっていたのがボランチだったため。パースは二人のボランチ(特に88番キルケニー)が広範囲に顔を出し、ビルドアップの中心になる。受けるのもうまければ、ワンタッチではたくこともできる。多少のプレッシャーであれば苦にせずプレーできる選手だった。

そうなるとIHがボランチのマークを極力外したくない、でも大外も見なければならない、と確実に無理な役回りに。

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 IHは相手のDHを捕まえることを優先で動いているような気はしたが、3トップの圧力と制限の掛け方が甘いゆえにWB・DHのどちらに出されても対応できるポジショニングを取る必要があった。そうなるとどうしても寄せがワンテンポ遅れてしまい、展開を許すことになる。こうしてボールはフリーとなったWBへ届けられた。

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このような流れで、過程こそ異なるものの蔚山戦と同じようにサイドを簡単に使われて押し込まれるシーンは何度もあった。

IHが出られないならSBが出ればいいじゃないか!とも簡単に言えない理由が相手のシャドーの位置にある。相手のシャドーがSBの近くをうろついており、容易に前に出ていくことはできない。これに伴って最終ラインは下がっていくため、相手WBに対してはIHかWGがプレスバックで対応しなければならないが、物理的&走力的にそれは非常に難しい状況だった。

 

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仮にSBが簡単に前へ出れば、その背後を使われて自陣深くへの進入を許すこととなる。

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一方で東京のボール保持。

相手は[5-2-3]ベースの守り方でシャドーの二人の負荷がやや高いように見える仕組みで守る。シャドーがCBの持ち上がりをけん制しながら、SBへパスが出たらサイドまでスライドして対応。

 

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 シャドーががんばることで後ろの枚数が確保でき、強力3トップにボールが入ったとしても良い状態で持つことはできない。

CBがフリーの状態であっても近くの誰かに渡すだけになることが多く、このシャドーの過負荷守備を困らせることができなかったが、本来はここを狙ってズレを作っていきたかった。

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上図はあくまで理想論でしかないが、CBがシャドーを引き付けることでSBに時間を与え、そこから相手のWBを引き出して前線にスペースを与えるようなことができれば3トップももう少し生かせたのではないかと思う。 

 

 

そんなこんなで、うまくいかないながらもスコアレスで折り返し。

 

 

後半

再び後半で修正。選んだのは前向きの圧力

 

蔚山戦同様、前半にうまくいかなかった守備を後半で修正した。

蔚山戦では右WGのディエゴを少し下げてバランスをとったが、今回とった選択は前の人を増やすこと。IHの髙萩を前に押し上げ、両翼を少し外へ出すような形で見方によっては“4トップ守備”とも言えたかもしれない。

後方でつないでくる、そしてパス回しが上手な相手に対して、攻撃的な両WGを下げて守備対応をさせるのは非効率的だろうということで前からの圧力を強めていく。

(おそらく)SBも前半より相手WBへのプレスを意識したことで比較的前でボールを奪えるようになった。そのぶん、後方に広大なスペースができてCBへの負荷は高まるが、そこは森重&渡辺コンビへの信頼感の表れでもあるのだろう。

f:id:brgacha:20200219025724p:plain※イメージ

仕組みが変わったこともあるが、ボールを奪われたあとのアクションの速さと強度が明らかに良くなったことが後半に流れを取り戻すきっかけになっていたと思う。

 

 

攻撃面で言うと59分に紺野が投入されたところも一つの節目と言えるだろう。

アダイウトンに代わって入った紺野は右WGに配置。自由に動き回るブラジリアントリオとは異なり、右に張ったところからドリブルを仕掛けていく紺野が入ったことで相手のWBを引き連れて室屋に活動スペースを提供できていた。

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ほかにもCKのキッカーを務め、鋭いボールでチャンスを演出。持ち味のドリブルだけでなく、セットプレーのキッカーとしても可能性を見出した紺野はこの試合における大きな発見の一つだった。

 

 

試合は最終盤にレアンドロのゴールが決まって1-0の勝利。内容が多少アレでも勝てばよかろうなのだ!といったゲームになった。

 

感想

1stプランは絶対的なものか?

パース戦の前半も蔚山戦の前半と似たような守備で臨んだわけだが、結果的にはどちらもうまくいかず、後半に修正を施す流れとなっている。

まだこのシステムを使いだしてから日が浅いことはあるが、守備での仕込みが不十分である点が多々見られる。しかしながら、2試合ともに1stプランはIHに頑張ってもらう構造。これをベースを完成させることが理想形なのであれば突き詰めていくだけだが、少なくともこの2試合を見た限りでは効率的には思えなかった。

 

一方で2試合とも後半からの修正で流れを引き戻しているあたりはさすがの一言。正直なところ、蔚山もパースも強烈なチームではなかったことで助かっている感は否めないが、これがJ1相手にも通用するかどうかは見ものである。

 

 

 

なにはともあれ、2試合を消化して4ポイントをゲットした。結果が大事な中で十分な出来と言っていいだろう。ACLでは日本を代表するチームの一つとして存在感を示していきたいところだ。

 

 

【蔚山vsFC東京】選手・監督コメントで答え合わせ

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brgacha.hatenablog.com

簡易レビューはこちら。

 

Jリーグ公式サイトのコメントから、いろいろな考えを巡らせていこうのコーナーをやっていく。

 

www.jleague.jp

 

 

①前半の粗い守備から後半の修正まで

 

前半はなかなか自分たちのリズムで試合運びができなかった。何回かクロスで危ないシーンも作られていた。全体的にはやられている感じはなかったが、何かハマっていなかった。後半はバランスよく戦えて、押し込む状況を作れたし、ボールも奪えた。後半の内容に関してはまた1つ前進することができた。

長谷川健太監督のコメント

 

ハーフタイムに守備の行き方を話し合って、良い形に持っていけた。ただ監督も話していたけど、前半のうちにピッチ内で修正しないといけなかった。

※安部柊斗のコメント

 

ハーフタイムで相手の3バックシステムにどう守備をハメていくかを話した。

※渡辺剛のコメント

 

 監督と選手の両方から挙がっているのは、前半の守備がうまくいかずにハーフタイムで修正したという点。蔚山が予想と異なるシステムで想定していたプランで守備が行えなかった可能性もあるが、実際に前半の守備はお粗末なものだったと言っていい。3トップの基準が定まらないことから中盤より後ろの選手が割を食う状況でピンチも多かった。

 また、安部のコメントから長谷川監督がピッチの上で修正することを求めていたことが読み取れる。構造の欠陥に気づきながらも曖昧に伝わる可能性があるプレータイム中にはあえて指示を出さず、集中してすり込めるハーフタイムでまとめて伝えるという方針だったのだろうか。なんにせよピッチ内で解決することを第一に求めていそうではある。

 結果的に前半の欠陥を野放しにしていたわけだが、後半頭からしっかりと修正して立て直せたことはスタッフの落とし込みと選手の実行力を褒めるべきポイントだろう。

 

 

②三田の投入とシステム変更について

ロングボールのセカンドボールを奪うことが1つのポイントだった。あの時間帯はセカンドボールがだんだん奪えず疲労も見られたので、ダブルボランチにして三田をサイドに入れて、ディエゴ(オリヴェイラ)とレアンドロの縦関係の2トップにした。決勝点を狙うために三田を入れました。

長谷川健太監督のコメント

 

 同点に追いつかれてから5分後の87分に行われた交代。この試合で唯一使用した交代カードには三田が選ばれ、アダイウトンを下げた。この交代でシステムも[4-3-3]から[4-4-2]に変更(最後のほうは[4-5-1]っぽかったけど)。蔚山のロングボールに対してこぼれ球回収役がアンカーの橋本一人では心もとないということで、ダブルボランチにして回収役を二人にする狙いだった。

 あとはシンプルに全体のバランスを整えて、一刺しを狙いながら負け筋を無くす方向を選んだのだと思われる。

 

 

③自由な3トップについて

アダイウトンも含めた3トップは)監督から「自由に動いていい」と言われていた

※ディエゴ・オリヴェイラのコメント

 

 この試合、特に前半では3トップがやたら自由に動く印象を受けたが、案の定監督から自由を与えられていた。後半になると前半よりも守備タスクが与えられた影響からか自由度は減った印象だが、攻守においてどこまでの自由が与えられているのかは気になるポイント。

 攻撃で自由に動きすぎればそれはボールを失ったときの守備に影響する。公式戦2試合目の現在は、自由を与える部分と抑制する部分の丁度良いバランスを見つける作業に入っている段階だろうか。

 

 

 

以上!

今回気になったのはこの3つ!

これで蔚山戦の振り返りは終了!ということで次戦に向けて気持ちを切り替えだ!