がちゃのメモ帳

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J1リーグ第27節 松本山雅FCvsFC東京 レビュー

がちゃです。

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プレビューはこちら。

 

brgacha.hatenablog.com

 

 27節松本戦を振り返っていく。

 

スタメン

 

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松本

まずフォーメーションをおなじみの3-4-2-1(5-4-1)から3-1-4-2(5-3-2)へ変更。

また、前節から4人を入れ替えた。

阪野→永井龍、中美→町田、パウリーニョ→杉本、田中→岩上

セットプレーのキッカーかつ、ロングスローも投げられる岩上が第4節以来のスタメン。前線には相手DFを背負って仕事ができる阪野ではなく、スピードがあって裏抜けが期待できる永井龍。そして、中盤には杉本と町田というボールを持てるタイプの選手を起用してきた。

 

 

東京

基本的にはいつも通り。

一箇所のみの変更で、右SHには4試合連続でスタメンに名を連ねていた大森ではなく、三田が入る。

 

前半

松本のフォーメーションは?戦い方は?

まず開始後に注目されたのは松本のフォーメーション。この記事ではスタメンの項でネタバレしているが、試合開始まで[3-4-2-1]でも[3-1-4-2]のどちらも考えられるメンバーだった。

結果は前述している通り[3-1-4-2]。普段使っていない形なので、奇襲的なことをやってくる可能性も考えられた。

対[4-4-2]で考えると、ビルドアップ時には相手は人を当てづらく、プレス時には相手に人を当てやすいという、対FC東京で相性の良いシステムと言える。

 

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※[3-1-4-2]だとプレス時に前から人を当てやすい

 

松本のメンバーにボールプレーヤーが多いことと、[3-1-4-2]を採用してきたことから「自分たちがボールを持ち、相手からボールを取り上げに行く」ような戦い方をしてくると予想したが、思ったほどプレスはかけてこず、ボールを持たれることは許容していた。

東京の選手もキックオフ後に松本のフォーメーションを察知し、前からプレスをかけてくると思ったのか、開始後5分くらいは後方で数的優位を作るために橋本が一列下りて3バック化することもあった。しかし、「そんなに前から来ないな」と気づき、その後は比較的やらなくなっていた。

 

 

 

松本の守備基準は以下のとおり。

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2トップ+3センターでまずは中央を固めて縦パスをけん制。

こうなるとシステムの噛み合わせ上、浮きやすくなるSBへボールが出やすくなる。そこに出てきたら3センター全体がスライドしてSBへチェックに行く。

この段階ではWBは極力前に出ないようにし、ボールサイドに人が密集するような陣形になる。

 

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※東京CBからSBへパスが出たときのスライド

 

 

東京が狙うべきポイント

 

①逆サイドのスペース

こうしてボールサイドに人が集まってくると別の場所にスペースができる。

こうなったときにどう攻めるだろうか。

あえてプレッシャーが強い密集に突っ込み、そこを掻い潜ればチャンスが作れるというやり方もあるが、東京は無理にリスクをかけず、スペースがある場所にボールを送る。上図で言うと右SB室屋のところに広大なスペースがあることがわかるだろう。

 

オ・ジェソクよりも攻撃的な室屋のサイドを使いたいということで、一度左SBジェソクのほうにパスをつける。そうすると松本の選手、特に中盤より前の「中盤固め部隊」5人がボールサイドに寄ってくる。寄せたらもうこっちのもん、ということで森重から室屋へ正確なフィードが飛ぶ。

前半の東京はこの形を軸にしてゴールへ迫ろうという狙いだった。

 

相手の出方が読みにくい中、開始5分程度で松本守備システムの弱みを見つけて、それを突けていたことは非常にポジティブだったと思う。加えて森重のフィードはさすがであった。

 

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※イメージ

 

こうなっても左WB高橋は三田のマークを捨てずに室屋は杉本のスライドが間に合うまで放置に近い状態に。杉本がくるまでの余裕がある時間で何かできればもっとゴール前でのシーンを増やせたと思うが、ここからの攻撃は髙萩の「変態パスセンス」に頼ることが多く、チームとしての工夫やアイデアは乏しかった印象。

 

室屋から相手がイヤがるようなクロスをガンガン送れたら、松本も対応に困ったかもしれないが、ここの精度もなかなか上がってこなかった。

 

 

そして、東京2トップお得意のWB(SB)裏流れによる仕掛けも左CB水本には通用せず。1試合を通じて安定した守備を見せていた水本をいかに機能させないかがこの試合における課題になる雰囲気。

 

6分のシーンでは三田が水本を引き出し、横からのパスをスルーしてから抜け出しを狙った。水本を無力化するパスワークでこれが唯一面白い狙いだった。

 

 

バイタルエリア

意地でも中盤のスライドでなんとかしようとしてくる松本。サイドに杉本と町田が出ていくのは仕組みとして設計されていたが、もう一つ徹底されていたのは3センターの真ん中に入る藤田が中盤をふらつきながらサポートに来る東京の選手(主にディエゴや髙萩)を潰すこと。

サイドへ出されたときに中盤中央を経由されないよう、スペースを守るより、人を絶対に捕まえる仕事をこなすことが多かった。

 

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※イメージ

 

これによって東京は中盤で息苦しくなり、ロストから被カウンターというシーンも何度かあった。松本はこの形からカウンターで得点を取ることが攻撃の1stプランだったと思う。

 

苦しんだ部分もあったが、裏を返せばDFラインの前のスペース、つまりバイタルエリアは空きやすくなる。

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※イメージ

 

藤田が出てきたときに、このバイタルエリアをどう使うか、ということも攻撃における1つのポイントだったと思うが、ここも活用できたことは少なかったように思う。

おそらくここで一番能力を発揮できそうなのがディエゴなのだが、彼はサイドに、中盤に、と動きすぎていて、一番いてほしいエリアにいない時間が長かった。東京のボール保持が彼の圧倒的キープ力に頼っていることが悪い方向に出てしまったかもしれない。

 

 

相手の弱点を見つけてそこを突くことはできたが、最深部まで入り込むことはできなかった。

 

 

 

松本の徹底した裏狙い

松本のボール保持について。

 プレビューでも触れたが、パスを回しながらフリーで前を向けたときに裏を狙う。

この試合ではスピードのある永井龍が起用されたことで彼を走らせる回数が多かった。

 

この部分に対しては、おそらく試合前のスカウティングで予想できていたはずで、東京のCBコンビもラインコントロールしながら、ついて行く守備で冷静に対応できていたと思う。

 

 

 前半まとめ

 ボール非保持にストロングがあるチーム同士の対戦ということで、お互いにボールを持って何かができる空気感は薄かった。そうなるとある程度トランジション(攻守の切り替え)でのチャンスを増やす必要が出てくるが、前半はそこで上回ったのは松本。ボール扱いがうまいセルジーニョを中心に東京はプレスを外されて、自陣まで必死に戻るというシーンを作られていた。

 

また、お堅い展開ではセットプレーも大事な要素となる。中盤がちびっこ編成になっている松本に対して、単純に大きさという優位性を持っていた東京だが、セットプレーが脅威になっていたシーンは少なかった。前半に関してはボール保持での停滞感よりも、セットプレーからの得点に可能性を感じにくかったことが辛い点だったと思う。

 

 

後半

 

疲弊するまで我慢、そして中盤のバトルで勝て!

両チーム、選手交代は無し。

展開も前半と大きくは変わらず、「松本の3センターがいつ疲れてくるか」という点が最初のポイントになる。

55分頃からはその影響も出てきてか、オープンな流れが増えて、両チームともにゴール前まで迫るシーンが多くなる。

 

プレビューの展望で触れた「カウンターを狙いに来たところをひっくり返す」ことに近い部分で、相手のカウンターを潰すためにDFが人を捕まえに出てくるところの攻防で勝ったほうがチャンスを作れるようになっていた。

東京はディエゴ・オリヴェイラという“重戦車”がいることで最前線まで届けることさえできればバトルには勝てる。そこから「戦術ディエゴ」によってゴール前まで突っ込む。

 

おそらくこの展開を是とした東京はリスク覚悟でセカンドボールや相手カウンターの起点を潰すことにエネルギーを使っていた。そこで優位に立てばチャンスになるし、負ければピンチを招く。

東京の選手がときには無謀気味に突っ込んで中盤にスペースができる、というシーンが何度かあったが、このリスクを背負いながらプレーしをしていた結果だと思う。

 

70分頃になると松本3センターの疲労が目に見えてきて、東京が敵陣深い位置まで進入できる時間が増える。

東京は70分にナ・サンホ、75分に田川、85分にジャエルと攻撃的な選手を次々に投入したが、最後まで松本ゴールを割ることができなかった。

 

 

 

松本0-0東京 

 

感想・まとめ

長谷川健太監督率いるFC東京は元々ボール保持に力を入れたチーム作りではないので、徹底的に試合を殺しに来る松本相手に苦労することは予想できた。

もちろんボール保持でも力を見せつけて得点できれば最高だ。だが、勝つことができなかった要因として、そこの停滞感を嘆くよりも、ほかの部分に焦点を当てるべきではないかと個人的には思う。(もちろんボール保持も少しは修正してほしいが)

 

それがどこかというと、セットプレーとオープンな展開になった時間帯での攻撃の2つ。

別にボールを保持して相手の陣形を崩すことにこだわらなくても得点を取るチャンスはあった。永井謙佑が裏に抜け出してシュートを打ったシーン、ディエゴが独力で突破してチャンスメークしたシーン。確かに決定機は少なかったが、あれを決めきっていれば勝っていた可能性は高い。

今年、東京が勝てていたのはその少ないチャンスを決めきっていたからという部分が大きい。逆に言えば決めきれなければ勝ち切れない。

 

 

8節アウェイ広島戦のディエゴ、21節ホームセレッソ戦の永井、22節ホーム仙台戦の永井のPK獲得

 あえて久保建英がいなかった試合を挙げたが、これらの勝利を収めた試合の先制点はいずれも相手を崩して取ったわけではない。いずれも塩試合に持ち込まれたが、決めるべきところを決めたから勝てた試合だ。

 

 

現状、守備は安定しているので、勝点3を積むにはこの部分を突き詰めていくしかないと思う。

 いまの守備力を維持したまま、マリノスや神戸のようなボール保持をすることなど(少なくとも残りの試合で行うのは)不可能だからだ。

 

 

ここまで53の勝点をどうやって取ってきたのかを考え、それを信じて戦い続けてほしいと思う。

 

 

J1リーグ第27節 松本山雅FCvsFC東京 プレビュー

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第27節・松本山雅FC戦の予習を行っていく。

参考は25節・松本vs大分と26節・神戸vs松本の2試合。

 

 

前節スタメン

 

 

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松本

 スタメンはほぼ固定状態。主にシャドウに入るセルジーニョの相方が少し入れ替わる傾向。

神戸戦に限り、セルジーニョがトップ、阪野がシャドウという配置だったが、おそらく神戸対策だと思われる。

杉本と町田のボールを持てるタイプの選手2人が途中から出てくるパターンが定番化。

 

FC東京

 シーズン序盤からメンバーは固定気味。

直近数試合は右SHに大森が起用され続けているが、今節は相手が比較的守備的な松本ということもあり、三田やナ・サンホがスタートから出てくる可能性も。

 

 

松本の簡易分析

 

ボール保持

 

ビルドアップ

 前回対戦時よりも後方でつなぐ意識が強くなってきたように感じる。

WBも低い位置でビルドアップに参加させながら、まずはCHにフリーで持たせることを目指す。それに成功したら前線の選手(主に永井龍や阪野が多い?)を裏のスペースに走らせる。

 

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※イメージ

 

また、サイドで持ったWBからのクロスに突っ込んで行くパターンもやや減った印象。松本のイメージとしては意外と言えるかもしれないが、中央に入ってシュートを狙ってくるケースが増えた気がする。

特に左WBに入る高橋がカットインなどで内側に入ってきたところから、逆足のシュートを狙うシーンが多く見られるようになった。

 24節・浦和戦でその形からゴールを決めて、良い感触が残っているのか、右足シュート以外にもコンディションの良さはうかがえる。元々縦の突破にも強みがある選手で注意すべき存在になるかもしれない。

 

 

チャンスメイクパターン

最も注意すべきはセットプレー。

総得点の約半数はセットプレーから生まれている。

(※参考ーfootballlab https://www.football-lab.jp/mats/


前節・鹿島戦ではCKからの失点を喫しているだけにセットプレーには注意したい。


 

ほかはシンプルな裏抜け。夏に前田大然が移籍したことで、対面の相手をぶち抜くよりも裏に抜け出して相手DFを置き去りにする形を狙う。

 

松本の最多得点者はCB飯田とFW永井龍の2得点(前田とレアンドロペレイラは移籍したため除外)。

参考数が少ないものの、薄っすらと攻撃の傾向が見える。

 

 

ボール非保持

 

 基本セットは5-4-1(5-2-3)。

25節・大分戦と26節・神戸戦では守り方が異なっていた。両チームともにJ1の中では比較的個性的なボール保持を行うため、それぞれに対策をうっていた可能性は考えられる。

 

まず大分戦。

5-4-1ブロックをベースに中央を固めたところからサイドへアプローチ。CHが1枚下りて4バック化する大分に対して、CBの位置にいる2人はほぼ無視。SB化した三竿と岩田(現在は負傷離脱中)に出たらシャドウがチェックに出ていく。

最後方の小林と鈴木をフリーにさせる代わりに自分たちのゴール前では絶対に人を余らせるような守り方に見えた。

 

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※イメージ

 

 

続いて神戸戦。

大分とは異なり、後方では純粋に3バック(+GK)でパスを回す神戸に対しては5-2-3をベースとし、前3枚を神戸の3バックにそのままぶつけるイメージ。

ただし、アンカーに入っていたサンペールへのコースは消すことを意識しながらのプレスとなっていたため、前の3人で神戸の4人(GKは含めない)を見るような守り方。

 

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※イメージ

 

後ろの2人を放置していた大分戦と違って、前からがっちり人についていくので、後方がマンツーマン気味になる。

神戸戦ではその部分を狙われてビジャの先制点を許していた。

 

 

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※イメージ

 

この2つを踏まえた上で東京に対してはどうしてくるか、という予想をすると、おそらく大分対応型になることが考えられる。CBを放置して、後ろの厚みを確保するパターン。

とはいえ、配球センスも持ち合わせている森重を完全にフリーとするのは是としないはずなので、ここはなんらかの対応をする可能性はある。

相方の渡辺については完全に放置するかもしれない。それくらい割りきってくるのが松本である。

 

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※イメージ 

 

 

また、どちらの試合でもどう対応するのか困っている印象を受けた部分はシャドウとWBの間にマーカー以外の選手が潜り込んできたとき。

神戸戦では1試合を通じて(主にIH古橋に)そこを突かれて、プレスがかからない状態となっていた。

 

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※イメージ

 

東京と神戸はシステムが異なるため、同じ手段を使うには思い切った配置移動が必要になりそうだが、松本のプレスが強まったときには1つの手札として持っておきたいところ。

 

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※イメージ  

 

展望

 ボール非保持型である東京が珍しくボールを持ち、松本は相手に持たせておいて、奪ってから縦に速い攻撃を狙う。

そんなゲームが予想される。

 

これらの予想から、東京はボール保持で生き、セットプレーのキッカーにもなる三田を右SHに、松本はスピードがあって裏抜けができる永井龍をシャドウに起用するかもしれない。

 

 

前節・鹿島戦の後半では東京が相手DF陣を崩してゴールに迫る場面を何度も作り、どこか期待を感じさせる内容に映った。

しかし、松本相手に同じことができるかと言えばそうではないとも感じる。当たり前ではあるが、鹿島と松本ではシステムも守り方も違うからである。

鹿島は(おそらく色々な要素が重なって)CHが中央からいなくなる現象が続き、東京がそこを使えている展開だったが、松本戦で同じことが起こることは考えづらい。

ボールを持っても、得点の可能性のあるシュートまで持ち込むのが難しい状況になりそうだ。

 

 

こうなると、一番チャンスが作れそうなのは松本が全体のバランスを崩したとき。

ボールを奪ってカウンターを狙いにきたところだ。

カウンターではシャドウやWBが切り替えのスピードで相手を上回ることによってチャンスを作ろうとする。そうすると奪った瞬間は前に出る。

そこをすぐにこちらが奪い返してしまえば、切り替えの意識が高い選手ほど、後ろに戻るのが遅れる。松本の意識の高さを逆手に取ろうという狙い。

事実、前回対戦の先制点はこの流れから久保→永井と繋いだところから生まれた。

球際で紙一重の勝負になるかもしれないが、この部分で勝てなければ勝点3を得ることは難しくなる。失敗すれば失点の確率は非常に高まるが、展開次第では得点を奪うためにそういうリスクをかけることも必要になる。

 

 

ロースコアに持ち込んでくる傾向がある松本に対して、どこでリスクをかけるのか、もしくは取るべきところできっちり取り切るか。

首位をキープするためにも引き分けが許されない一戦をものにするためにどこで勝負を仕掛けるのかは見どころになる。

 

J1リーグ第26節 鹿島アントラーズvsFC東京 レビュー

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スタメン

 

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鹿島は前節・清水戦からメンバーを5人変更。

レオ・シルバはリーグ戦8試合ぶりの先発。

 

 

東京はおなじみのメンバー。橋本が日本代表への招集、そして2試合でフル出場をしていたが、そのままスタメン起用となった。

 

前半

入りの良さとスコア変動のギャップ

鹿島のキックオフでスタートした直後、東京は東が素早く圧力をかけてボールを奪取。そこから一気に敵陣まで押し込むという流れで、この大一番において素晴らしい入り方だった。

後半開始からスイッチを入れて強めの圧力をかけていくことはよくあった東京だが、この試合では前半からそれが見られた。というよりも、いつもとは明らかに様子が違うと感じた。この重要な試合において、「熱量を見せずして戦うことなど不可能」といった気概が最初のワンプレーに表れていたように思う。

 

 

しかし、そこから鹿島ボールになるとCKを与えて、ブエノにゴールを許す。開始2分でまさかのビハインドを背負う展開となった。

入りが良かったのは東京だったが、スコアを先に動かしたのは鹿島、というどこか納得できないモヤモヤ感の残る出だしに。


ブエノのヘディングは上手く行き過ぎた感はあったが、マーカーである渡辺がブエノを外してしまい、フリーに近い状態でヘディングを許したことは痛恨だった。これが大卒ルーキーの渡辺にとっては”高い授業料”というやつだろう。こういう試合でこういうことを経験して強くなっていくのである。

 

 

 

スペースへ急げ!

 勢いよく入った東京も失点後の様子を見ると、特別ハイプレスを仕掛けていくようなことはなかったが、ボール非保持において明らかな狙いがあったように思う。

いつものことと言えばそうだが、「スペースがあるうちに素早く戦術永井」だ。

永井は左にいることが多く、主に対峙するのはブエノ。ブエノも身体能力オバケ系の選手ではあるが、スペースを手にした永井に物理攻撃は効かない。種族値だか努力値だかなんだか知らないが、とにかく”すばやさ”で上回って先制攻撃するしかない。それができなければ永井による”はかいこうせん”の餌食となる。

 

話が少しそれたが、とにかく[4-4-2]同士のシステムで噛み合う中、各所のバトルで勝って回収したボールを素早く永井に届けるのが非保持における一番の狙いだった。

3:40あたりのシーンでは競り合いのこぼれを髙萩がすぐに永井へ送り、ブエノを交わすところまで行けていた。(小泉のカバーによりロスト)

 

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※イメージ

 

鹿島はビルドアップ時にSBが大外の幅取り役で比較的高い位置へ行くため、後方のスペースは生まれやすく、そこを狙おうということだろう。 

また、ボール保持においても東京のSHに鹿島のSBがついてきたら、すかさずその背後に永井orディエゴが入り込む徹底ぶりであった。

 

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※イメージ

 

鹿島の右サイドを狙え!

東京のボール保持は左の方がうまくパスが循環する。これはボールを持てる森重と間で顔を出すのが上手い東が左サイドにいることが影響しているだろう。

ということで攻略したいのは鹿島の右サイド。セルジーニョと小泉のところだ。

 

前半を見た感じだとセルジーニョは守備時の立ち位置取りがそこまで上手ではないかな?と感じた。東京左SBのジェソクに背中側を取られたり、プレスも強くかからなかったりと、ここから穴を広げられそうな雰囲気はかなりあったと思う。逆に左サイドはSHの白崎が深い位置まで戻ることもあり、崩せるシーンは少なかった。

攻撃面で優れるセルジーニョを前目に残したいというチームの考えがあった可能性もあるが、それによってCHの2枚(レオ・シルバと三竿)は右サイドのサポートでスライドを強いられてバイタルを空けてしまうシーンが多々あった。

 

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※23:30頃のシーン

 

23分頃と27分頃のシーンはまさに2CHがいなくなっていたことでチャンスになりかけた。

それでもなんとか中央を死守していたのはさすがだと思うが、明らかにCHの右サイド介護は鹿島の問題となっていた部分だろう。

 

 

右サイドの番犬

この試合では鹿島のビルドアップに対して髙萩が前に出て繋ぎをけん制しに行くことがよく見られた。

 

そうなると中盤の中央エリアが空いてしまうのだが、髙萩が出ていったときには大森が少し内に絞ってスペースを埋める役割を果たす。中央のパスコースは消して、外は許容する、くらいの感覚だったと思う。

 

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※イメージ

 

このように中央に穴をあけないように動く大森だが、彼には確実に遂行すべき仕事が与えられていた。試合を見ていた方なら、感じていたと思うが、「(鹿島左SBの)小池から時間を奪うこと」である。

逆サイドからの展開などで小池との距離がある場合でもちゃんと詰めに行く。小池を購入したらもれなく大森もついてくるサービス。

 

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※イメージ

 

鹿島の中盤にいる選手は東京のDF-MFライン間でプレーするのがうまいため、鹿島CHにプレッシャーがかかりずらい&外が空いてしまう状態になったが、東京右サイドに問題が発生しなかったのは大森の貢献のおかげとも言える。 

 

 

 前半まとめ

開始直後の失点が試合を難しくしたことは間違いないが、その後は落ち着いた試合運びができていたのではないかと思う。

ボール保持が悪くなかっただけにもう少し決定機らしいシーンを作りたいところではあったが、鹿島にボールを持たれる中でゲームのバランスを崩さずにチャンスを伺えたのは評価できる部分だろう。

 

 東京CBが伊藤に対して競り勝てず、こぼれを回収されるところは上手くいっていなかったが、逆にそこを上回ることができれば東京が支配するゲームにできそうな雰囲気もあった。

 

後半

 後半頭から鹿島が交代カードを切る。

 

白崎→名古

 

そのままSHの位置に入る。

詳細は不明だが、もしかすると白崎に軽い負傷があったのかもしれない。

 

 

 ずっと俺のターン

 後半開始後も東京がボールを持ち、攻め立てる。ボール保持はやや苦手な東京だが、ここでは相手の守備を崩してゴールに迫るシーンを何度も作ることができていた。

 前半と異なり、ハイボールの対応で鹿島を上回る回数が増えたことで回収率が上がったように見えた。

  

鹿島は元々うまい選手が揃うチームでシンプルに繋ぐことには長けているが、この日は疲労の影響もあってか、ボールを回収したあとに繋げずロストという展開が多かった。

それも影響してか、東京は「ずっと俺のターン!ドロー!」状態となり敵陣でプレーができた。決定機までいけなかった前半とは違い、シュートが枠内に行っていれば…、というシーンも多かったが、東京のダイレクトアタックは失敗に終わる。

 

東京のチャンスメイクパターンとしては永井がスペースで受けて対面の選手をぶち抜くことと、CHを右サイドにつり出して空いた中央を利用するパターンが多く、前半と特に変わっていなかったように思う。回収力が高まったことに比例してチャンスも増えたのかもしれない。

 

 手を打ち始める両軍

得点の雰囲気が出ていた東京は主に守備で奮闘していた大森を下げて韓国代表で得点を取って帰ってきたナ・サンホを投入。カットイン型のサンホを左へ置き、東を右へスライド。

鹿島は伊藤に代えて上田。前がかりになる東京の背後を不気味に狙い続ける。

 

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76分、投入後から裏を狙い続けていた上田に背後を取られるとCKを与える。

そのCKは跳ね返すが、その流れからゴラッソ製造マシーンのセルジーニョミドルシュートを決められて2点差に。

東京は2トップと両SHの計4人が守備に戻らず、6人で対応していた。鹿島は上手な立ち位置取りで東京DFが常に1人で2人を相手にしなければならないような状態になり、セルジーニョに時間を与えて詰みとなった。

点を取りに行っていたからこその前残りだったはずで、この選択を取った以上、この失点はミスというよりも受け入れなければならないものだったと思う。

 

 

この直後に失点前から準備していたジャエルと田川を投入。2トップをまるまる入れ替える。

鹿島は三竿が痛んで負傷交代。チョン・スンヒョンを入れて下図のように配置を変更。

 

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かゆいところに手が届かない

 

70分頃までは鹿島ゴールを脅かすことができていた東京だが、選手交代を行ったあたりからどこか閉塞感が出た。

これは鹿島がSBをステイさせることが多くなり、SBの背後を使いにくくなったこと、さらには身体能力オバケのブエノがSBに回ってきた影響もあるだろう。

 

また、サンホが内側に入っていくことでSBのジェソクは浮きやすくなってクロスをあげる回数が増えるが、彼はクロッサーではない。加えてジャエルがボールサイドに寄ってサポートに来るので、ターゲットは田川と東。全体的にかゆいところに手が届かない配置になっている気がした。

 

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※イメージ

 

完全に結果論だが、押し込んでセットプレーを取ることはできる展開だったので、東→三田という手もありだったのかなと思う。セットプレーでの東のキックはうまくいっていなかった。

あとは小川を入れてクロスの質で勝負出来たら…とも思った。いない人のことを言っても仕方ないのだが。

 

 

CKからジャエルが惜しいシーンを作ったが、ゴールをこじ開けることができず終了のホイッスル。

勝点を得るチャンスはありながらも完敗となった。

 

鹿島2-0東京

 

 

感想・まとめ

 

苦手を打ち破れず

鹿島が取った2得点はブエノのヘディングとセルジーニョの左足ミドルだった。これは彼らがそれぞれ最も得意とするプレーと言っていいだろう。

対して東京の決定機では東のGKとの1対1、そしてディエゴのヘディングが印象に残っている。これは彼らがそれぞれ苦手なプレーと言っていいだろう。

得意な形から2得点取れた鹿島。苦手という壁を打ち破れなかった東京。この大一番で鹿島をアウェイで叩くには、自分たちの課題と戦っているようではいけなかったということなのかもしれない。

 

 札幌戦では渡辺、名古屋戦では髙萩に今季リーグ戦初ゴールが生まれ、各個人で一つ成長した姿を見せたことで勝点を拾った。

この試合においても、勝点を持ち帰るには東とディエゴの成長が必要だったのだろう。

 その成長が見えれば間違いなくこの試合の勝者に、もっと言えば今季の首位に相応しいチームだったと思う。しかし、それが達成できなければ今回のような結果となる。まだまだ足りないチームだということを教えてもらったのだ。

 

 

J1リーグ第26節 鹿島アントラーズvsFC東京 プレビュー

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今回から諸事情によりスタメン予想及びメンバー情報(怪我人等)の項を無くし、前節までのスタメンをベースにした情報に変更します。

 

 

 

前節のスタメン

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※追記

町田→犬飼でした。失礼しました。 

 

 

鹿島は(おそらく)天皇杯の栃木戦から遠藤をトップ下(フリーマン)に置く4-4-1-1に近いシステムを試し始めている。ACLルヴァンカップで日程が詰まっているため、スンテと小池、ブエノ以外はメンバーを入れ替えて戦っている印象がある。

 

東京は右SHの人選が少し変わる程度で基本的には固定メンバー。

 

 

 

 

鹿島簡易分析

 

基本システムは伝統の4-4-2。最近はフリーマンの遠藤とFWタイプの選手(伊藤か上田)をセットにした4-4-1-1気味のシステムも使用しているが、2列目タイプの土居とセルジーニョのコンビで前線が流動的に動くシステムを多用していた。 

 

 

ボール保持

ビルドアップ

前節25節がFC東京と同じ4-4-2のシステムを用いる清水戦だったので、そこを参考に説明する。

 

2CBと2CHの4枚が軸となり、ほかの選手は適宜サポートを行う。

仮に三竿&名古コンビだと仮定すると三竿が相手2トップの間、もしくは最終ラインに下り、名古は中盤にとどまる。

三竿がCBのサポート、名古が前線との中継役といったイメージだろうか。

これは守備でバランスを取れる三竿を後ろ、より前線に絡んでいける名古を前目に置きたいという意図から、この前後配置になっていると考えられる。

 

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※イメージ①

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※イメージ②

 

 

両SBは大外のレーン担当でSHは内に絞ったポジションを取ることが多い。

 

2トップは土居・セルジーニョの場合、相手SB裏に走りこんで深さを作り、中にはSHが飛び込んできてフィニッシュ。

遠藤がフリーマンに入るパターンでは伊藤(上田)が中央で最終ラインと駆け引きしながら相手陣形全体を下げて、遠藤・両SHらがDF-MFライン間で受けることを狙う。

 

 

 

得意な攻撃

やはりポジトラ(守→攻の切り替え)での縦に速い攻撃は完成度が高い。

まず外に起点を作ってから、中に預けて逆サイドに展開、というカウンターの流れをスピードを落とさずに行うことができる。中盤より前にボールキープに長ける、推進力がある、展開力がある三拍子そろった選手が多く集まっていることでこれが可能になっているのだろう。

さらに前線の選手はアシスト役・フィニッシュ役どちらにもなれるタイプが多い。流れの中で一番スムーズにプレーが運ぶように、それぞれが役割を変えることができる。今の鹿島が強い理由の一つとして、この“誰でも点が取れる”ことは確実に挙げられる点だと思う。

 

カウンターを打たれそうになったら、まずサイドで起点を作らせないようにすることが重要になるだろう。とはいえ、起点になるのはキープ力がある選手。状況によってはカードも覚悟して潰す必要が出てくるはずだ。

 

 

 

ボール非保持

4-4-2セットがベース。

前線から噛み合っていればそのままプレスに出ていき、数的不利(対3バックなど)になっていれば一度構えたところからSHを押し出してスイッチを入れる。

 

 

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※守備基準イメージ

 

図が少しごちゃついたが、鹿島の守備基準は上図のようなイメージ。

2トップは背中のCHを意識しながらCBの前進を抑止、横に開いた相手CB(or下りたCH)へはSHが前に出て対応。この時にSBは自分のマークを捨てて、一つ前にいる選手を捕まえに行く。

 

この項の冒頭で“SHを押し出してスイッチを入れる”、と書いたが、鹿島の守備バランスでカギを握るのはおそらくSHだと思われる。

SHが前に出ていくタイミングを間違えると東京のSBは簡単に空いてしまいプレスは空転しやすく、そこから傷口は広がる。鹿島のSHが東京のSBを監視するのか、それともCB(or下りたCH)に出ていくのかという判断は鹿島の非保持における超重要ポイントとなるだろう。

 

(これは完全に個人的な感覚だが)この出ていく・出ていかないの判断が最も優れているのは白崎。単純に献身的なタイプということもあるが、周りの状況を確認して最適なポジションを選択するセンスが非常に優れているように感じた。CHのポジションにスペースができていると見たら、そこを埋めに行くような動きも見せており、気の利く選手なのだと思う。

SHのポジションに誰が入るかは試合前の注目ポイントになりそうだ。

 

 

前からプレスに行ったときはマークがずれるが、後方は基本的にマンマークの傾向が強い。 対面の選手には絶対負けないことが前提になっている守り方とも言えるかもしれない。

24節のガンバ戦の2失点なんかはすごくわかりやすく、スペースに蹴りだされたボールに対して、DFがマーカーを捕まえきれずにゴールまで行かれてしまったという2点だった。

東京も前線には強力なキャラクターを揃えているため、裏のスペースでバトルをガンガン仕掛けていく展開にするのがファーストプランになりそうだ。

そうなると東京のFWが勝つか、鹿島のCBが勝つか、というわかりやすい勝負になるだろう。

 

 

 

 

展望

順位を見たときにどう考えても普通とはテンションが異なる試合になることは間違いない。お互い[4-4-2]のシステムを使うチーム同士、マークもわかりやすく、各所で1対1が発生する中でどちらがそこの勝負、いわゆるデュエルを制するかが最も重要なポイントになるだろう。

しかしながら、8月はリーグ5連戦(+天皇杯)に加え、直近ではお互いにルヴァンカップを2試合消化しており、選手の疲労度は高いとみられる。

東京は日本代表の遠征に永井と橋本、韓国代表にナ・サンホを送っており、彼らのスタメン入りは不透明だ。

逆に鹿島は今節の直後にACLを控えているため、そこでの選手起用も考えながらの戦いとなる。

この天王山において、お互いに選手起用をよく考えなければならない難しい状況だ。

 

東京は交代カードの使い方、鹿島は最初のメンバー選考が重要になるはず。

 

 

あらためて状況を整理すると勝点で4ポイント上に立っているのは東京。是が非でも勝ちたいのは鹿島の方だろう。

もちろん東京も勝ちたい試合ではあるが、引き分けでも悪くない結果だと言える。

となると0-0をよしとしない鹿島がどこで仕掛けてくるのか、そして鹿島が前がかりになったときにそれをひっくり返してチャンスをものにできる力を東京が残せているのか、という攻防になることが予想される。

 

 

これまで戦術が云々とか言っておいてではあるが、この試合は単純に気持ちで上回れるか、という部分がかなり大きなウエイトを占めると思う。

この試合の勝敗で優勝が決まるわけではないが、両チームともにそのくらいの熱量を持ったぶつかり合いを見せてほしいところだ。

J1リーグ第25節 名古屋グランパスvsFC東京 レビュー

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プレビューはこちら。

 

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スタメン

 

 

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東京は予想通り。田川がベンチ入り。

 

名古屋は吉田が負傷、和泉が発熱ということで欠場。 代わりに藤井と成瀬がスタメン。成瀬に関してはリーグ戦初出場。

おそらく緊急の対応だと思うが3-4-2-1(5-4-1)のフォーメーションを組んだ。

 

 

 

前半

 

予想通り名古屋がボールを持って東京がカウンターを狙う展開。

東京は奪ったら1~2タッチ程度で素早く2トップに当ててそこから縦に速い攻撃でカウンターを仕掛ける。逆に名古屋はそのスイッチとなるパスや収める選手に強く出ていくことで「ずっと俺のターン!」の状態にすることを目指す。

序盤はこのトランジション時に発生するバトルでどちらが勝つかという勝負が肝となり、名古屋に軍配が上がる場面が多かった。これによって名古屋がボールを持つ時間が長くなるわけだが、東京もそこまで守備で苦労はしなかったように思う。

 

ここで名古屋のボール保持を簡単にまとめる。

 

まずビルドアップは3バック+2CHの5枚が基本となり、そこにWBやシャドウが下りてサポートするようなイメージ。

中央の4枚(2CHと2シャドウ)はかなり流動的なポジショニングで頻繁に下りてきていた。これによって前線から人がいなくなり、ビルドアップから縦に速い攻撃を仕掛けることは難しくなったが、ボール保持を安定させて敵陣までボールを運ぶことが優先だったのかもしれない。

 

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※名古屋ビルドアップ極端なイメージ

 

敵陣まで押し込むと2CHを軸にしてパスを回し、東京守備ブロックに穴ができるのを待つといったところ。押し込んでも大外を使う意識はあまりなく中央突破を目指した攻撃だった。

右WBに入る成瀬は度々中に入る動きを見せていたが、こうなると東京左サイドは大外を気にせずに守ることができる。これをあまり良くないと感じたのか、途中から中谷が右SBのような動きを見せるようになる。しかしながらあまり効果的にははたらかず、むしろ後方を手薄にしてカウンターを受けやすくなっているように感じた。

 

 

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※イメージ

 

太田は大外にいるものの、そこへ出されてもスライドが間に合うのでクロスは上がらない。以前太田を3バックの左CBで起用していたのは前で一人ピン止めした外を駆け上がってフリーでクロスを上げさせたかったからではないかと思う。

 

 

もちろんネットやシミッチという優れた配球役がいるため、中央を締めていても通されてしまうシーンはあったのだが、外を使う意識が薄かったのは楽に守れた一つの理由だろう。縦パスの警戒に意識を割けるためボールを前向きで奪いやすい。カウンターに出やすくなることにも繋がっていた。

とは言え名古屋も両SB&SHのレギュラーが不在(前田はベンチ)であり外を使える選手がいなかったことを考えると中央突破を狙うのも必然的ではあった。名古屋サイドも宮原、吉田、和泉の3人が抜けてしまうとさすがに難しいなと感じたのではないだろうか。

 

ジョーという圧倒的な選手が中央にいることで東京DF陣が集中して守っていても何か起こされてしまう可能性は十分にある。前節札幌戦は”何かを起こされる”のを嫌ってジェイをゴールから遠ざけていた。今節は守備ブロックを下げても外からのクロス等でジョーに”何かを起こされる”可能性は低く、ブロックの上から殴られなければ大丈夫な状況となっていたのは助かっていた部分だろう。

 

 

セカンドボールの回収に苦しんでいた東京だったが、トランジションからの縦パスで前を向ければカウンターを打てていた。

26分はCKの流れから永井と東の位置が入れ替わった状態の守備からカウンターを仕掛けてディエゴがPKを獲得。ランゲラックに一度は止められるもののこぼれを押し込んで先制に成功。

1回目のカウンターチャンスでは永井の判断が遅れて止められていたので、東がトップ下に入ってカウンターができたことは結果的に功を奏した。

 

 

 前半まとめ

 

 名古屋にボールを持たれながらカウンターを狙うという予想通りな展開の中、思った通りのカウンターからPKを獲得し先制に成功。欲を言えばもう1点取れていた気もするが、十分な内容。

 

一つ指摘するならばボール保持について。

おそらくボール保持にこだわりを持たないゲームプランではあったと思うが、簡単にボールを捨てる場面が目立った。

これは単純に「もっとボールを大事に」というよりも前線に可能性を持たせた状態で送り込んでほしかったという感想である。

相手の陣形が崩れていない、そこまで強めにプレスをかけられていない状況でのロングボールが多かった。こうなると名古屋のCBも跳ね返しやすい上に最終ラインが整っているのでスペースも少ないため楽に回収されてしまう。

確かに相手にボールを持たせることでカウンターは打ちやすくなるが、自分たちのボール保持で名古屋の得意なフェーズの時間を削りつつ、チャンスメイクの可能性も高められるのではないかと感じた前半だった。

 

 

 

後半

 

両チームともに選手交代。

名古屋 成瀬→前田

東京 大森→三田

 

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それぞれ同じポジションでの交代。

名古屋はリーグ戦初出場の成瀬の攻守におけるポジションがやや曖昧になっていたところの修正に加えて、単純に攻撃力の強化ということろでの前田だろうか。

 

(大森→三田の交代について)

 「前線に絡んでいく動きを期待していたこともあるが、前半は大森自身は、よく頑張ってくれたが、もう少しできたかなと。攻撃のところで慌てずにボールを回すなど、三田は配球役になれる。」(長谷川監督)

FC東京公式HPより引用

https://fctokyo.co.jp/game/2019083001

 

 

 東京のこの交代で変化したのはボール保持のところ。後半は明らかにボール保持が安定し、名古屋に守らせる時間を作らせることに成功していた。

単純に「後半からはボール保持を安定させよう」といった方針だったかは不明だが、大森→三田の交代が大きな理由になったことは間違いないと思う。東京が後方でボールを持った時に三田は名古屋中盤ラインの間でパスコースを作ってくれていた。これによって名古屋の陣形を中央に絞らせる→外が使えるという流れでスペースと時間を作ることを提供。

大森も足元の技術は優れているが、ビルドアップ時にはボールに近づく動きが多く、”いい場所”でパスコースを作ることはあまり得意でないように感じる。ただ、彼には守備の安定やフリーランなどの献身性があり、監督が選手のどの特性を選ぶかという話である。後半からは三田のボール保持スキルを優先したのかもしれない。

これを狙って行えていたのであれば、非常に効果的な交代だったと言えるだろう。

 

 

後半に入っても展開はおおよそ変わっていなかったと思うが、前半よりも東京がこぼれ球を拾える場面が増えていた。右WBに前田が入った影響もあってかボール回収後に3バック脇が空いており、永井がそこに走りこむ攻撃を徹底する東京。

48分(公式記録は49分)の追加点はまさに永井が3バック脇から抜け出してPA内を攻略できたことで生まれた狙い通りの形だったと言えるだろう。

 

 

54分、名古屋選手交代。

アーリア→赤﨑

フォーメーションをおそらく4-4-2に変更。藤井を右SBにスライド。

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この後も東京は名古屋右サイドにあるスペースを使い続け、藤井や中谷に東京2トップとのバトルを仕掛ける。

 

 

東京もボールを持てるようになったとはいえ、やはりボール保持で優れるのは名古屋で持たれる時間は多くなる。

システム変更後からは名古屋の左サイドが少し不気味だなという印象があった。

 

前半は前で太田が詰まってしまっていたのに対し、システム変更後辺りから丸山の攻撃参加によってどちらか一枚が浮きやすくなるシーンが何度か出てきた。

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※イメージ

 

シャビエルが中に入ることで東京の陣形を内に意識させて二人が外で活動できるスペースを作る。そのスペースに太田と丸山の二人が入ることで三田のアプローチが遅れたり、マークの受け渡しが混乱したりする。そしてご存知の通りこの元FC東京の二人は左足のキックが非常にうまい。中の配置が整っていてもいいボールが上がってきたらどうにもできないケースもある。そういった意味でこの二人からゴール前に配球されるのは少し嫌なプレーにはなっていた。

 

 

63分頃、三田のシュートを受けたランゲラックが負傷し、武田に交代。ただでさえ欠場者の多い名古屋は満身創痍であった。

 

名古屋に持たれながらもカウンターでチャンスを演出する東京という流れが続く。

ゴール前まで迫られながらも決定機は作らせず比較的落ち着いた試合運びができていたが、82分に失点。カウンターの起点づくり失敗から前田のカットインミドルという王道パターンでねじ込まれた。

正面のシュートだったので、林に止めてもらいたかったというのが正直な気持ちではあるが、仮に完璧なコースに打たれていたらどのみち失点はしていたと思う。それよりもディエゴの落としに失敗したところがまずかった。

この場面に限らず、終盤はディエゴの不用意なロストが目立っていた。コンディションというよりもメンタル的な要因が大きかったようにも思うので下げても良かった気もする。ただ、両SHの交代でカードを2枚使っていたので永井を下げる以外の選択肢は取りづらかったか。

 

失点直後に永井を下げてジャエルを投入。この交代は少し疑問だった。

1点を守り切らなければいけない状態で守備が浮きがちなジャエルの投入。ジャエルを最前線に置き、フル出場のディエゴを4-4ブロックの前で名古屋の配球役を見る役割に。

個人的な意見だが、走り回ってボールの出所を少しでも塞ぐ、奪ってからサイドの広大なスペースで受けて時間を作る、という攻守両面で効きそうな田川をトップ下付近に。ディエゴは最前線で休みながら捨て球をマイボールにする役割でも良かったのでは?と思った。実際にジャエルの役割は疲れているディエゴでも務まりそうだった。

 

最後はゴール前に突っ込まれて「危ない!」というシーンも作られたが、なんとか逃げ切って3ポイント獲得。

 

名古屋1-2東京

 

感想・まとめ

 

アウェイでの勝利。この結果以上に語ることはないのかもしれない。

 

 しかしながら、理想的な展開で試合が進んでいたのにうかつな失点によって「最後は気持ち!」という終盤になってしまったことは反省点だ。

”守備は悪くなかったけど相手が上だった”という失点が生まれることも時にはある。それでも勝ち切れるスコアにしておくということは東京のスタイル的にも重要なことだろう。

 

もちろんポジティブな要素もあった。

この試合で言えば右SHの起用を挙げたい。

ここ2試合は疲労・試合の流れを考えたときに大森の交代が少し遅いのではないかと感じていたが、この試合では後半開始からスパッと代えた。そしてこれが良い効果をもたらした。三田の投入が直接的に得点には繋がっていないが、チャンスメイクや試合の流れを渡さないという部分では大きな貢献があったように思う。

まだ暑さも残る季節での疲労や試合の中で何かうまくいかないと感じることもあるだろう。長谷川監督の決断力は今後も問われるかもしれない。 

 

 

欠場者多数で満身創痍の名古屋が相手だったとはいえ、アウェイ8連戦で早めに勝ちを手にできたことは非常に大きい。このまま良い流れを持って戦っていきたい。

 

J1リーグ第25節 名古屋グランパスvsFC東京 プレビュー

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スタメン予想

 

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メンバー情報

FC東京

◦前節欠場していた室屋が復帰し、メンバー入りの見込み

◦小川の負傷状態が不明だが、メンバー外が濃厚

 

前節から岡崎→室屋の変更を予想。

 

 

名古屋

◦米本が長期離脱中

◦前節退場の宮原が出場停止

◦前節から丸山がメンバーに復帰

  

 ここまで全試合スタメンだった宮原が欠場のため、吉田を右に回して左に太田を入れる布陣を予想。

 

 

 

※追記

吉田が怪我という情報もあり、和泉が右SBの可能性あり。

 

名古屋簡易分析

 

 

ボール保持(&ネガトラ)

 

ビルドアップ

2CBと2CHの4枚を軸に行い、SBは少し高めの位置でサポートするようなイメージ。

2CHのシミッチとネットはかなり流動的に動いてボールを引き出して捌いてを繰り返す。一人が下りて3-1のようになることが多い印象。

 

 基本的にはシミッチ&ネットのWメトロノームからの展開・縦パスなどで攻撃を作っていくが、状況に応じて丸山からのロングパスや中谷の運ぶドリブル等も駆使する。

 

両CBともに攻撃参加するケースがあるが、ドリブルで運んでくることのある中谷の方がより前方に突進してくる。

単純に前線の枚数が増えるという点では厄介な攻撃参加ではあるが、その分SBが戻ってリスク管理をすることがないのでカウンターは打ちやすくなる。

前節(24節)のマリノス戦ではカウンターを受けたとき、最後方に丸山1人しかいないという状況があったりした。ゴール前を守る守備に関してはCBの個人能力に依存する部分が非常に強い名古屋なので、単純に中谷と丸山のCB2人に勝負で勝つことが得点を奪うことに繋がるだろう。

 

 

敵陣でのボール保持

敵陣でボールが持てるとSBを高い位置に上げて前線の枚数を増やしつつCH2人で捌きながら隙を伺う。吉田&宮原のSBセットの場合、吉田は最前線まで攻め上がる、宮原は外のスペースで待ちながら、クロスが上がれば大外に突っ込むようなタスク分けだった。吉田&太田のセットになった場合はここのタスクが変わってくる可能性は高い。

 

名古屋側が一番狙いたいのはPA内のジョーへ預けることと右SHの前田に仕掛けさせること。

ジョーに入ってしまうともうどうにもできない状態になってしまうので、中央を締めてまず入れさせないこと。前田は東京SHのサポートによって、広いスペースで1対1を作らせないことが重要だろう。

 

この他によくある攻撃としては左サイドでの崩しだろうか。ただし、今節はSBの組み合わせが変わる可能性が濃厚であるため、いつもとは違うコンビでの連携が求められる。 

 吉田も太田も全体のバランスを見るというよりも積極的に攻撃参加してくるタイプなので両チームにとってトランジションが重要なフェーズになることは間違いなさそうだ。

 

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※イメージ

 

ボール非保持

SHはやや高めにポジションを取るが基本セットは4-4-2ブロック。

前回対戦時のようにSHを前に上げた4-2-4ではなくなっているのは米本不在の影響もあるかもしれない。

 

2トップで中央に規制をかけてから中盤4枚で追い返してボールを捨てさせる、もしくは奪ってカウンターが狙いだと思われる。

この時にパス回しで2トップとSHのプレスを掻い潜ると4-4-2の4-2間が空きやすくなる。2トップは最初は追いかけるものの、プレスバック意識は高くないので1回外すことができれば東京のCHがボールを持てるスペースができそうだ。

 

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※イメージ

このエリアで髙萩や橋本、東らがフリーで持つことができれば裏の永井に一発!という攻撃もいくらかできるだろう。

 

4-4ブロックはゾーン基調で守るが、上記の理由からブロックの前のボールホルダーにプレッシャーがかからないケースがよく見られる。 ボールにプレッシャーがかかっていないゾーンDFは脆さが出るので、間にパスを通されるのだが、カバーエリアの広い両CBを中心に個人の守備でなんとかしてしまうことで傷をえぐられないようにしていることが多い印象。あとは残念そこはランゲラック。

 

非保持には脆さが見える名古屋だが、そもそも東京がボールを持てる時間があまり作れないことが予想される。東京側が自分たちでボールを持つということに対してどのような意識で試合に入るかどうかは一つのポイントになるだろう。

 

 

展望

 おそらく全員がそう思っているだろうが、名古屋がボール保持で東京のブロックを壊すのが先か、東京がカウンターで刺すのが先かという試合になるだろう。

名古屋のストレートが東京のガードごとぶち破るか、東京のカウンターパンチが名古屋の顔面にヒットするか。それだけである。

 

 

 さすがにもう少し細かい話をしよう。

前節の札幌戦ではジェイを消すためにラインを高めに設定し、ボール保持の時間も多くした。今節もジョーという強烈なキャラクターがいるので、その部分を継続するのか元に戻すのかという判断がありそう。札幌には鈴木武蔵がいたのに対して名古屋の前線にはボールプレイヤーが多く、裏抜けを得意とする選手は少ない(赤﨑がスタメンで出てくると厄介だが)。そう考えるとラインを高くする選択肢も取りやすいのかもしれない。

 

 

また、ここではスタメン予想で右SHに大森を予想しているが、三田やサンホのスタメンも十分にアリだと考える。

太田との1対1を仕掛けたりカウンターで突進できるサンホ、浮き球で裏のスペースへパスを出せる三田というストロングが生かせる展開になりそうという理由。

名古屋のメンバー選考にも多少左右されるが、東京右SHの起用法も試合前の見どころになる。

 

 

 

 スタイルこそ違うものの「どっちのグーが強いか勝負だ!」という対決。

こうなると大事なのはゲームプランや戦術よりもメンタルなのかもしれない。

 

かつて東京に在籍していた選手が多くいる名古屋。 お互いに選手たちの心には燃えるものもあるだろう。

バッチバチの試合を期待したい。

 

J1リーグ第24節 北海道コンサドーレ札幌vsFC東京 レビュー

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 プレビューはこちら。

 

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スタメン

 

 

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札幌は予想通りの布陣。

東京は室屋がベンチ外となり(おそらく軽度の負傷)、代わりに岡崎が右SBに入る。岡崎は室屋のように上下動や突破はできないが、ボールが持てて守備に安定感がある。最近ではCBでの起用が多かったが、昨年は右SBとして数試合スタメンで出場している。

 

 

前半

 

いつもより高い最終ライン

開始早々東京はハイプレスを仕掛けた。

その後もガンガンハイプレス!とはいかなかったが、札幌ドームという快適な状況下も影響してか、ここ数試合よりもライン設定を高くする。

これは相手に空中戦が強いジェイがいるため、彼をゴールから遠ざけたいという狙いがあったと思う。ラインを高くすることで鈴木武蔵らの裏抜けの脅威は生まれてしまうが、ジェイがいるゴール前でクロスを跳ね返す守備よりも裏抜けの方が危険度が低いという判断だったのだろう。

 

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それに対して札幌はシンプルに東京DFライン背後へのパスやサイドチェンジからチャンスを伺う。

福森とチャナティップというキック精度が高く、一発でサイドチェンジできる選手が左に2人いたことから左→右の展開で大外を使う。4:30頃にはサイドチェンジから大外で受ける右WBの白井はワンタッチでDFラインーGK間に流し込んでチャンスを演出。味方同士の接触であわや失点というシーンだったが、GK林がなんとか足に当てて事なきを得る。

 

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これは前回対戦でもよく見られた形で、FC東京の守り方がシーズンを通してぶれていないことから、この試合においても狙っていたパターンだと思う。これに加えてプレビューでも触れた、1対1を作り出してから後ろのCB進藤にバックパス→ダイレクトでファーへのクロスという形も持っていた。

 

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※プレビュー時に挙げたイメージ図(実際は進藤→菅だった)

 

福森は大森が前に立つことができればある程度消せる雰囲気はあったが、チャナティップからの配球を制限することがなかなか難しかった。元々のポジションから下りて受けに来るため、マークにつきづらく、さらに寄せが少しでも甘ければ個人でマークを剥がすことも簡単にしてくる。速攻でも遅攻でも札幌の攻撃でチャナティップを経由させないということはこの試合における最重要テーマだったような気がする。

 

 

ボールを持てる東京

札幌がボールを奪いに来なかったことやカウンター狙いの意識が強かったことから東京はボールを持つ時間が長くなった。先ほど触れたようにここでもジェイを消したいという意図もあったと思う。

東京が狙いたかったのは札幌5-2-3の2のエリアとマンマーク基調からラインにギャップができやすいところ。東京のボール保持でキーマンだったのは髙萩・東・ディエゴの3人だったと私は考える。

 

東京が後ろで回していると札幌は少しずつ前に出てくる。そして5-2-3の2のエリア、つまり札幌ブロックの中盤のエリアには人が少なくなり、中盤の空洞化が起こっていた。

これによって札幌DFはここで受けようとする東京の選手について行き、DFラインにはギャップが生まれる。ということで中盤エリアより先に入れされたくない札幌は中央で選手間の距離を縮めることでパスコースを消そうとしていたが、髙萩がその間を通すことで空洞化した中盤を使うことができていた(パスカットされて被カウンターというシーンもあったが)。

そこのギャップを頻繁に狙っていたのが東。ベースポジションは左だが、頻繁に右に流れてきて裏抜けや間受けを狙い、ボールを引き出す。

 

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また、猛威を振るっていたのがディエゴ・オリヴェイラだ。どの試合でも彼が強烈なのは間違いないが、人についてくる札幌に対して後ろ向きで受けても絶対に対面の選手を剥がす兵器と化していた。しかしながら下りすぎてゴールから離れてしまい、剥がしてもまだDFがいる、という状況に陥りがちだったようにも見えた。

ただ、38分に先制点を生んだFKを獲得したのは彼の突破から。直接的に得点には絡めなかったが、珍しくボールを持てた東京にとって彼の存在は大きな意味があったと思う。

 

 

構えてカウンター機会を伺う札幌

 札幌は東京のボール保持に対して奪いに来ない。始めの方こそ福森やチャナティップの展開からチャンスをうかがっていたが、前半はカウンター主体の攻撃になっていた。

 

東京は敵陣まで押し込むとSBが高い位置まで上がっていることが多く、髙萩も頻繁に高い位置で攻撃参加する。そうすると奪われたときにカウンタープレスで奪いきれないと後方の枚数が少ないまま対応しなければならなくなっていた。

奪ったら縦に速く攻めたい札幌vs奪われたらすぐに取り返したい東京、という構図。東京が取り切れれば二次攻撃、札幌がプレスを交わせばカウンター発動となるため、前半であるにもかかわらずかなり速い展開になりやすかった。

 

 

 38分、東のFKから渡辺が合わせて先制し、東京が1点リードで折り返し。

 

 前半まとめ

 

東京の方がボール保持率が高く、敵陣でもプレーができてシュートも一定数打てていたことから一見東京ペースにも見えたが、決定機の数で言えばおそらく札幌の方が多かった。札幌もプラン通りにはいっていなかったのだとは思うが。

札幌はゴール前でパスやコントロールがずれたことで決定機を逸していた印象でその部分がフィットしていたらゴールを割られていた可能性が高かったように思う。

対して東京のシュートはPA外のミドルや相手DFにコースを制限されているケースが多く、ゴールを決めるには圧倒的な決定力を見せる必要があったように思う。

 

実際にいいプレーはたくさんあったのは事実だが、そういった面で一概に良い内容だったとも言い難い展開だったと感じた。

しかしながら、先制に成功してリードで折り返せたことは非常にポジティブに捉えるべきだろう。

 

 

後半

 

前半の貯金を無効化する同点弾

 後半も開始から東京がエネルギー高めで入るが、開始から1分(公式記録は47分)で同点弾を浴びる。

前に重心をかけたところで奪われてスペースで待っていたチャナティップへ。東京は2人がかりで対応するがチャナティップにとってはプレッシャーに含まれない程度の寄せにしかならなかった。人数自体は揃っていたが、スペースに入れられて鈴木武蔵にシュートを許す。シュートは林の目の前でジェイに当たってコースが変わりゴールへ。

確かに最後は事故要素が強かったかもしれないが、チャナティップに繋がれてからカウンターを決められたことを考えれば事故での失点だから仕方ないで済ますべきシーンではないように思う。最も警戒すべきチャナティップ起点のカウンターを許したことに対してはしっかりと向き合うべきだろう。

 

早くから殴り合いモードに

 

 後半は両者ともに速い攻撃を志向する。それもあって全体が間延びしやすくなっていた。

 60分近辺からボールが行ったり来たりすることが多くなる。

これは札幌の前に人数を割く攻撃に対して、東京も殴り合い上等の構えを取ったから。

 両者ともにオープンな展開を許容した上で、どちらが先に点を取れるかといった攻防が繰り広げられた。

それぞれチャンス自体は同等に作り出していたように思うが、ゴールゲッター(札幌ならジェイと武蔵、東京ならディエゴと永井)以外にボールを運べて時間の貯金を潰さない選手の有無によってカウンターの質に差が出ていたように思う。

札幌には前線の選手をうまく使いこなせるチャナティップという圧倒的な猛獣使いに加えて両WBにも推進力がある。

対して東京はカウンターでも前に出てこれる室屋が不在、大森はおそらく疲弊状態と2トップを生かせる”+1”になる選手がいなかった。それによって2トップが出し手に回るケースが増え、それぞれがストロングを生かす役割になりにくくなっていた。

 

流れと逆行してしまった選手交代

 

選手交代。

71分

札幌 白井→ルーカス・フェルナンデス

東京 大森→ナ・サンホ

 

さらに札幌は直後に宮澤→深井でCHを交代。

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意外にも最近はWBの交代がパターン化してなかった札幌だが、白井を早めに下げてルーカスを投入。フレッシュな選手を入れたかったというところか。

東京はおそらくオープンになったことと大森の疲労を考えてサンホを投入。サンホはラストパスを出すタイプではないものの、独力で長い距離を運べるのでそういった意味で+1を求めての投入だったと思われる。

 

しかし、サンホを入れた後はオープンな展開であったボーナスタイムは終了しており、サンホはその恩恵を受けることができなかった。

 

81分、東京が2枚目の交代。ディエゴ→ジャエル。

ある程度ボールを持った時間も作れそうな流れであったため、見かけによらず足元のテクニックがあるジャエルを入れて打開しようという狙いだったように思う。

ここで予想外だったのは交代が永井ではなくディエゴだったこと。交代前のプレーを見ると疲労が交代理由だったと思うが、ブラジル人同士のフィーリングからジャエルと連携度が高いディエゴを下げたことで攻撃を難しくしてしまった。

 

そしてこちらもジャエルを入れた後にボールを持つ時間が減った。ジャエルは札幌のジェイと似たようなイメージで守備で効く選手ではなく、そこまでカウンター向きでもない。そうなるとジャエルが生きる時間は少なくなった。

 

83分、札幌最後の選手交代。菅→中野。両WBをフレッシュな選手に。

 

88分東京最後のカード。東→三田。

 

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最終盤もオープン気味な展開になる。チャナティップと武蔵に加えて推進力があってフレッシュな両WBがいる札幌には勢いがある。東京はフレッシュなサンホが入っているもののディエゴが交代しており、カウンター型の陣容ではなかった。そうなると分が悪く最後はひたすら押し込まれたが、決定機は作らせず試合終了。

 

札幌1-1FC東京

 

感想・まとめ

 

東京からすると、前半は頻繁にカウンターを食らいながらも、やりたいことはある程度できていた感覚だろう。しかし、後半は早々の失点も影響してゲームのコントロールが上手くいかなかった。交代カードと試合の流れが逆行してしまったのも悔やまれる。

 

非常に難しい試合にはなってしまったが、なんだかんだ言って堅い守備陣の頑張りもあって追加点は許さず勝ち点1を取れたことはポジティブ要素だろう。

 

 これを言うと怒る人もいるかもしれないが、これまでのリーグ戦の中で最も久保建英を欲する試合だった。彼自身がスーパーであることは言うまでもないが、今回の試合にいれば圧倒的な存在感を放っていたことだろう。後半の殴り合った時間帯に得点を取れていたイメージもできる。

しかしながら、誰もがご存知の通り、彼はもういない。

彼がいない中でもこのような展開をものにできるチームにならなければならない。

 

 

首位に立ってはいるものの、まだまだ試練はここから。

多くの課題を乗り越えたときに頂は見えてくる。